最近の起業家に感じること | 経営に終わりはない

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藤田社長の最近の記事。

ベンチャーブームに浮かれる面々にモノ申す
サイバー藤田晋社長が警告する「緊張の緩み」
http://toyokeizai.net/articles/-/65030

2000年のネットバブル前から、変化の激しいIT業界、株式市場の数々の荒波に揉まれてきただけあって、大局観からの本質的な見解はさすがです。

私も2000年から12年程彼の傍らで仕事させて頂いたので、発言の一つ一つから、関連する記憶がよみがえり個人的に味わい深い記事になっています。


さて、私も最近の起業家に「ここは少し注意した方が良いかも」と感じることがあるので書いてみます。

1.燃費の悪さ

経験豊富なシリアルアントレプレナー(連続起業家)であれば、ある事業をやったり、サービスを構築するのに適切な①人材②コスト③時間がどのくらい必要かある程度予測できます。

しかし、経験が少ない起業家が初期段階で潤沢な資金調達をしてしまうと、①②を過剰につぎ込んで③を甘く見積もってしまうのをよく見かけます。

事業の立ち上げは、信頼できるなるべく少人数の優秀な人材でプロトタイプを作ったり、事業サイクルを回して小さな成功の検証をするのがおすすめです。

自分の経験が浅いとちょっとスペックが高い人材が皆優秀に見えて、資金があるのでうまく行く前提で将来を見据えて必要以上に人を採用してしまいがちです。例え優秀な人材でも採用しすぎると逆にマネジメントコストがかかってしまい、非効率になることがあります。

また資金があるからといって大きなシステム開発をいきなりやると、ローンチまでの時間がかかったあげくに、大幅な修正が必要な使い物にならないものになってしまったという事例をたくさん見てきました。

燃費が悪く(バーンレートが高く)、時間を読み違えると、調達した資金が思いのほか早く枯渇して、またすぐに次の資金調達、但し調達条件が悪化という悪循環に陥るので注意が必要です。


2.アドバイスに溺れる

優秀な経営者には人たらしというか可愛がられる人が多いのは事実です。しかし一方で経営経験が浅い時に周囲に優秀な先輩経営者に恵まれているからといって複数の人に頼りすぎると、アドバイスに溺れてしまいます。

結果として、言われるままに出資を受けて資本構成がグチャグチャになったり、アドバイスを受ける度に社内で言うことがコロコロ変わって経営の方向感が定まらない状態に陥っている経営者をたまに見かけます。

できればメンター的な先輩経営者は1-2名に絞って、基本は自分の頭で苦しみながらじっくり考えつつ、本当に悩んだ時に少し話を聞いてもらうくらいにした方が良いと思います。


3.勝負のバランス感覚

最初に事業のヒットやホームランが出た時に、これが自分や自社の実力だと過信してしまい、人材や資金を一気に増強&投入して勝負に出てしまうケースがあります。

潮目の良い時に勝負に出るのは良いことですが、万が一失敗した際に、もうひと勝負、ふた勝負できる余力を残しておく勝負のバランス感覚も重要です。

世の中に大胆な経営をして成果を残している起業家はたくさんいますが、一発屋でなく長く活躍している人は、実は警戒心が強くて慎重で、勝負の前に念入りにシミュレーションしてまさかの時に備えているタイプが多いのも事実です。

インターネット業界だと特にコンテンツやメディアビジネス等で、粗利の高いビジネスに慣れている経営者は特に注意が必要です。勝負して計画通り上手く行けば万々歳ですが、外すと予想収益へのマイナスインパクトも相当大きなものになります。


私は投資家と起業家の両面で仕事をしているので、いまのベンチャーブームの状況は両側面から常に考えています。藤田社長のエントリーからインスピレーションを得て、自戒の念も込めてのエントリーでした。