ケースワーカー資質どう確保 小田原の事例から考える(毎日新聞より) | 労働組合ってなにするところ?

労働組合ってなにするところ?

2008年3月から2011年3月まで、労働組合専従として活動しました。
現在は現場に戻って医療労働者の端くれとして働きつつ、労働組合の活動も行なっています。

あまり知られていない労働組合の真の姿(!?)を伝えていきたいと思います。

まず、沖縄の米軍新基地建設反対運動のリーダー、山城博治さんの釈放を求める署名へのご協力を呼び掛けます。

 

https://www.change.org/p/savehiroji

 

 

続いて、避難不可能な状況下での原発災害を防ぐために、川内原発の運転停止を求める署名への賛同を呼び掛けます。
 

https://www.change.org/p/%E5%B7%9D%E5%86%85%E5%8E%9F%E7%99%BA%E3%82%92%E6%AD%A2%E3%82%81%E3%81%A6%E3%81%8F%E3%81%A0%E3%81%95%E3%81%84?source_location=discover_feed
 

 

そして、戦争法を早急に廃止することを求め、沖縄をはじめとする全国での基地強化・日米軍事一体化の策動を許さず、医療と介護をはじめとする社会保障切り捨て政策に反対し、労働者をはじめとする99%の人たちのいのちと生活と働く権利を守るために行動し、政治をはじめとするあらゆる分野で憲法が活きる社会となることを目指し、声を上げ続けることを提起します。

 

 

毎日新聞の記事紹介、第2弾です。今回は「くらしナビ」から。小田原市の生活保護受給者威嚇ジャンパーから考えるケースワーカーの問題についての、西田真季子記者の記事です。この記事も会員限定有料記事ですが、有料部分も一部紙面から引用しています。引用部分は青で表記します。

 

 

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ケースワーカー資質 どう確保  小田原の事例から考える

毎日新聞  2017年2月4日  朝刊

http://mainichi.jp/articles/20170204/ddm/013/040/005000c

 

 神奈川県小田原市の職員が、生活保護の不正受給をする人を「我々はクズと言う」とプリントしたジャンパーを業務で着用していたことが今年1月、明らかになった。なぜ不適切だと気付かなかったのか、ケースワーカーの資質をどう確保するのか探った。
 

(中略)

 

 生活保護の不正受給は実際多くはない。全国で4万3938件(15年度)で、受給世帯数の約2.7%に限られる。逆に、生活保護を利用する資格のある人のうち受給者は約2割とされ、多くが貧困に耐えているのが現実だ。小田原市生活支援課の栢沼教勝課長は「実務的なものを教えられても、(最低限度の生活を営む権利を保障した)憲法25条の精神や、ケースワーカーとは何かといった研修が不足していた」と振り返る。英文にした理由も、隠す意図があったかも不明という。

 

●新卒が120世帯担当

 

 小田原市生活支援課のケースワーカーは25人。厚生労働省の定めた標準数を4人下回り、入庁1年目の経験の浅い職員が4人。貧困に苦しむ最前線で、希望者は少ない。

 事務を担う一般職として採用された男性(29)は、新卒で生活支援課に配属された。先生役の先輩職員はいたが、1人で約120世帯を担当。今でも約100世帯を受け持ち月に25~30軒を訪問する。自殺未遂の現場に急行したり、精神疾患をもつ人の過大な要求に対応したり、精神的に負担の大きい業務もある。

 生活保護受給者の約4割は高齢者のため、介護施設や病院との連絡が多く、6~7台ある課内の電話は鳴りっぱなしだ。「電話を一本でも早く取って残業を減らさないといけない。そのためには効率よく仕事をしなければ」。一分一秒に追われる日々だ。

 社会福祉の専門業務を担う福祉職として入庁した30代男性職員は、入庁してすぐに100世帯以上を受け持った。もともとケースワーカー志望で、積極的に路上生活者を訪ねることも。自立支援にやりがいを感じているものの、暴言を浴びせられるとつらいという。「思っていたより大変だった」と打ち明ける。

 「全国のケースワーカーの平均在籍年数は3年を切っており、新人が配属される場合が多い。仕事の9割は事務作業で、その作業も複雑だ」。全国のケースワーカーらが所属する「全国公的扶助研究会」副会長を務める渡辺潤さんは指摘する。

 渡辺さん自身も約30年間、ケースワーカーを務めてきた。「自治体で差があるが、生活保護利用者への偏見や差別が強い。利用者を呼び捨てにしたり、(貧困を住民のせいにする)自己責任論を強くもったりする職場もある。小田原市はジャンパーでたまたま可視化しただけ」とみる。

 過重な業務だが渡辺さんはやりがいも感じてきた。「自由裁量が大きく、大変だけど奥が深く自分が成長できる仕事。(生存権に関わる)生活保護は福祉の減点でもある」と説明する。

 

採用増やし組織で支える

 

 ケースワーカーの職務を重視し、組織的な対応をしている自治体もある。堺市は01年度から福祉職の採用を進め、ケースワーカーの約8割にあたる137人(16年4月現在)が福祉職だ。全国平均は1割未満で、群を抜いて高い。取りまとめ役である査察指導員と管理職は全てケースワーカー経験者を配置し、経験の浅い職員のフォローに回る。

 窓口でトラブルが起こった時は、課長ら管理職が対応する。警察官OBを窓口に配置する自治体も多いが、「受給者や相談者に圧迫感を与えるため」(堺市生活援護管理課)避けている。他にも、1人で家庭訪問をする場合は直通で管理職につながる携帯電話を持参させるなど、組織としてケースワーカーを支える。

 生活保護に関わる職場から差別や偏見をなくすためにはどうすればいいのか。渡辺さんは「経験者を含めた福祉職の採用を多くする」ことを挙げ、視野を広げるため、全国のケースワーカーや弁護士ら他職種と交流することを提案している。    【西田真季子】

 

 

今だから書きますが、年越し派遣村のボランティアをしていた時に、閉村後の一時的な宿泊所の自己負担分についての説明が間違っていて、訂正の説明をしたら怒鳴られたことがありました。その時はものすごいショックで泣きましたが、今になって思い返すと仕方がないことだったのだと思います。所持金が底をつきかけて野宿を経験して、支援につながったもののこれから自分の生活を立て直していかなければならないという大きな壁に直面している人にとって、私たちにとっては何でもないちょっとしたことがとても不安なことなのでしょう。そういうことに思い至らなかった自分は、支援者として相当未熟だったんだなと思いますが、成長することを待っていたら何も出来ませんからね……とにかく経験し、それを通して成長していくしかないのだと思います。

 

ボランティアと自治体職員では立場の違いはありますが、現状では経験を通して成長していくしかないということは同じなのではないかと思います。

しかし、スタートラインのところで自治体職員の方が問題があって、ボランティアが基本的に困っている人を助けたいという意欲的な姿勢で向き合うのに対して、自治体職員はやりたいと思っている訳でもないのに単に配属されたという理由で向き合わなければならないという問題があります。しかも、同じ部署にいる先輩職員も同様に配属されただけという理由で仕事をしている場合が多く、そのまた先輩も同様だとすると、福祉の視点で利用者に向き合う姿勢など引き継がれようがない訳で、どこかで別の方向からの働きかけをしなければ、小田原市のような問題はいつまでも起こり続けるでしょう。

効果的な改善方法は、記事中にもあるように、福祉職として専門的な教育を受けたか、経験がある職員を多く配属させることでしょう。専門職として、利用者の人権を尊重しながら制度を運用していくという姿勢を、一般の職員に見せてほしいと思います。そして、生活保護の窓口を訪れる人たちは、大部分がここで受け止めてもらえなければ生きるか死ぬかという切羽詰まった状態で、大きな不安を抱えているということを理解して、業務を行なってほしいと思います。