埼玉学校アスベスト被害対策弁護団声明 | 労働組合ってなにするところ?

労働組合ってなにするところ?

2008年3月から2011年3月まで、労働組合専従として活動しました。
現在は現場に戻って医療労働者の端くれとして働きつつ、労働組合の活動も行なっています。

あまり知られていない労働組合の真の姿(!?)を伝えていきたいと思います。

まず、熊本、大分を中心とした地震の被害に遭われた皆さまにお見舞い申し上げます。

合わせて、避難不可能な状況下での原発災害を防ぐために、川内原発の運転停止を求める署名への賛同を呼び掛けます。



https://www.change.org/p/%E5%B7%9D%E5%86%85%E5%8E%9F%E7%99%BA%E3%82%92%E6%AD%A2%E3%82%81%E3%81%A6%E3%81%8F%E3%81%A0%E3%81%95%E3%81%84?source_location=discover_feed



そして、戦争法廃止に向けてたゆまず行動し、憲法に違反する政治を推し進めようとする策動を許さず、医療・介護を国の責任で充実させることを求め、最低生活基準を切り下げようとする動きに抵抗し、労働者のいのちと健康と働く権利を守り、東日本大震災の被災地の復旧・復興が住民の立場に立った形で1日も早く実現することを目指して、声を上げていくことを提起します。



私は抜けられない会議があったので傍聴に行けなかったのですが、本日、7月20日、埼玉学校アスベスト裁判の判決が言い渡され、原告の公務外災害認定処分取消請求が認められました。つまり、死亡した教員の死因が、学校に存在したアスベストを吸引したことによる公務災害であることが認められたのです。

以下、弁護団の声明をご紹介します。一部固有名詞は省略致します。



                声  明


                         2016(平成28)年7月20日

                         埼玉学校アスベスト被害対策弁護団


1 さいたま地方裁判所第4民事部(省略)は、本日、故S氏の公務外災害認定処分取消請求訴訟において、原告勝訴の判決を言い渡した。

 埼玉県T市の公立小学校の教員であったS氏が2007(平成19)年5月1日にアスベスト粉じんへのばく露を原因とする中皮腫で亡くなったことに対し、遺族である妻(省略)は、S氏の死亡がT市立K小学校における公務の遂行に際してアスベスト粉じんにばく露したことに基づくものであるとして、公務災害申請を行った。しかし、K小学校にアスベストが存在したことを直接示す証拠はない、という理由で認められなかった。

 本訴訟は、地方公務員災害補償基金に対し、この公務外災害認定処分の取消しを求めたものである。

2 本訴訟の主な争点は、S氏の在職当時、K小学校の階段室天井に仕上げ材としてアスベストが存在したか、そして、S氏がそのアスベスト仕上げ材から飛散するアスベスト粉じんにばく露した結果として死亡したといえるかという点にあった。

 本判決は、階段室天井に仕上げ材としてアスベストが存在したことを直接示す証拠はないとしたものの、アスベスト仕上げ材が存在したことを推認させる複数の書証及び証言を採用し、これらの証拠により、K小学校にアスベストが存在したと認定し、これを前提として、S氏にはほかにアスベストにばく露する機会がなかったことなどから、S氏はK小学校の階段室天井のアスベスト仕上げ材から飛散したアスベスト粉じんにばく露した結果亡くなったと判断した。

3 本判決は、公立学校教員のアスベスト被害について、全国ではじめて、公務上の災害であると判決において認めたものであり、学校現場において広く施工されていた吹付けアスベスト等の飛散性の高いアスベスト建材に基づく被害の適切な共済に向け、大きな意義をもつといえる。

 特に、1987(昭和62)年のいわゆる「学校(アスベスト)パニック」に際して文部省(当時)が調査対象としたのが、5種類の吹き付けアスベストの内、「吹付石綿」等の3種類に限定され、石綿含有吹付けバーミュキュライト等の仕上げ材2種類が調査対象から除外されるという極めて不十分な調査に留まっており、その結果として吹付けアスベストが存在したにもかかわらず、その存在を直接的に示す証拠が残らない事態も相当制度あったものと推定されるところ、本件においても、文部省調査の結果においては、アスベストは存在しないものとされていたが、文部省調査以外のその他の証拠からアスベストの存在が認定されている点が特に重要である。

 さらに本判決は、このようなアスベストばく露の事実が認定され、相当期間日常的に石綿にばく露したことがあれば、必ずしも詳細なばく露態様・濃度の立証まで必要とせずに、公務災害であると認定している点においても、先例的な意義は大きいといえる。

4 本判決を受け、弁護団は、今後、教員のみならず当時の児童・生徒にも増え続けることが想定される学校アスベスト被害の救済の実現に向け、引き続き尽力する決意である。

                                           以上



本訴訟の原告、弁護団、支援者は、判決の報告集会を行なった後、直ちに控訴をしないことを求める書状を埼玉県の担当者に手渡しに行ったそうです。

この判決が確定すれば、他の学校アスベスト訴訟に大きな励みになると思われます。埼玉県はさいたま地裁の判断を真摯に受け止め、判決を受け入れてほしいと思います。


また、本日の判決の背景には、原告の強い信念に基づく行動と、弁護団の緻密な立証と、支援する会の多くの会員の皆さんの尽力があったことを申し添えたいと思います。