日本のゆくえ7 同一労働同一賃金 職安職員非正規6割(毎日新聞より) | 労働組合ってなにするところ?

労働組合ってなにするところ?

2008年3月から2011年3月まで、労働組合専従として活動しました。
現在は現場に戻って医療労働者の端くれとして働きつつ、労働組合の活動も行なっています。

あまり知られていない労働組合の真の姿(!?)を伝えていきたいと思います。

まず、熊本、大分を中心とした地震の被害に遭われた皆さまにお見舞い申し上げます。

合わせて、避難不可能な状況下での原発災害を防ぐために、川内原発の運転停止を求める署名への賛同を呼び掛けます。



https://www.change.org/p/%E5%B7%9D%E5%86%85%E5%8E%9F%E7%99%BA%E3%82%92%E6%AD%A2%E3%82%81%E3%81%A6%E3%81%8F%E3%81%A0%E3%81%95%E3%81%84?source_location=discover_feed



そして、戦争法廃止に向けてたゆまず行動し、憲法に違反する政治を推し進めようとする策動を許さず、医療・介護を国の責任で充実させることを求め、最低生活基準を切り下げようとする動きに抵抗し、労働者のいのちと健康と働く権利を守り、東日本大震災の被災地の復旧・復興が住民の立場に立った形で1日も早く実現することを目指して、声を上げていくことを提起します。



毎日新聞で、7月の参院選の争点となり得る問題について取り上げていく「日本のゆくえ・現場を歩く 」が連載されていました。

気が付くのが遅くてまだ全部は読んでいないのですが、その中で労働問題が取り上げられていたので読んでみました。2016年6月11日付の第7回「同一賃金同一労働」です。


日本のゆくえ・現場を歩く 2016参院選

7 同一労働同一賃金

職安職員 非正規6割 「まるでブラックジョーク」

http://mainichi.jp/senkyo/articles/20160611/ddm/001/010/128000c

http://mainichi.jp/senkyo/articles/20160611/ddm/041/010/094000c


この記事は、ハローワークで相談員が実は1年契約の非正規職員で、しかも3度目の契約満了時に雇い止めされ、働き続けるにはハローワークが出す求人に応募し、採用試験を受け直さなければならないという事実が軸となっています。より安定した職に就くためにアドバイスをしているハローワークの相談員が、実は非常に不安定な状況で働いているという、ブラックジョークのような話です。こうした公務の現場で働く、低賃金で不安定な非正規労働者は「官製ワーキングプア」を呼ばれています。

こうした状況にいる労働者にとって、安倍内閣が掲げる「同一労働同一賃金」は、「甘美に聞こえるが、現実味がない」ものだそうです。


この、「同一労働同一賃金」について、「識者に問う」で昭和女子大学特任教授の森ます美さんが解説しています。この部分は会員登録をしないと読めないので、紙面から一部引用します。引用部分は青で表記します。



日本のゆくえ・識者に問う 2016参院選

職務 適切に評価を

昭和女子大特任教授 森 ます美さん

毎日新聞 2016年6月11日 2面


(前略)


 1億総活躍プランによると、政府は、待遇差が合理的かどうかを事例で示すガイドラインを策定する。しかし、それを踏まえて法改正しても、最終的に判断するのは司法だ。訴訟を起こさない限り賃金は是正されない。

 雇い主は、非正規社員が正規社員と100のうち85同じ仕事をしていても、15の違いを理由に「これは同一労働ではない」と主張して、大きな賃金格差を合理化するだろう。

 私は「同一価値労働同一賃金」を提案している。①知識・技能②責任③仕事の負担・負荷④労働環境――という国際労働機関(ILO)の職務評価手法を用いて仕事の内容を点数化し、正規と非正規が100対90なら非正規に正規の90%の賃金を支払う仕組みだ。

 日本の雇用慣行を考慮し、「労働環境」に「転居を伴う転勤可能性」を含めてもいいが、転勤の有無だけで正規と非正規に大きな差をつけてはならない。知識・技能と責任だけを重視するのもだめだ。各要素は適切なウエートで評価する必要がある。労働人口が減少する中、海外から労働者を受け入れるためにも国際標準で職務を評価すべきだ。


(後略)


パートタイマー法には既に均等待遇についての定めがあり、労働時間だけが短いというだけで、他の労働条件が全て正規職員と同じであるパート労働者を差別してはならないということになっています。しかし、実際はささいな労働条件の違い、たとえば「転居を伴う転勤可能性」の有無のみを理由に大幅な賃金格差が認められてしまっています。これは、労働時間が正規職員と全く同じであっても同様で、雇用形態の違いが賃金格差に直結しています。

この状況を改善するには、記事中で指摘されているような「同一価値労働同一賃金」を法制化する必要があるでしょう。

また、「訴訟を起こさない限り賃金は是正されない」とされていますが、法律ができれば、労働組合の団体交渉によって経営者に差別を是正させるということも可能になります。もちろんそのためには、非正規労働者も労働組合に加入できるような条件づくりと働きかけが必要ですが。


とは言え、安倍首相が「同一労働同一賃金」と言っても、「同一価値労働同一賃金」にまで踏み込むとは思えませんし、「同一労働同一賃金」も正規労働者の賃金や労働条件を引き下げる方向での実現を図りかねません。本当に非正規労働者の処遇を引き上げるものとなるかどうか、しっかりと見極めることが必要でしょう。