2013国際女性デー埼玉集会 前半 | 労働組合ってなにするところ?

労働組合ってなにするところ?

2008年3月から2011年3月まで、労働組合専従として活動しました。
現在は現場に戻って医療労働者の端くれとして働きつつ、労働組合の活動も行なっています。

あまり知られていない労働組合の真の姿(!?)を伝えていきたいと思います。

まず、最低生活基準を切り下げようとする動きに抵抗し、労働者のいのちと健康と働く権利を守り、東日本大震災の被災地の復旧・復興が住民の立場に立った形で1日も早く実現することを目指して、声を上げていくことを提起します。



本日は、「2013国際女性デー埼玉集会」に参加してきました。

国際女性デーとは、1910年に始まった世界の女性が「パンと権利と平和」のために行動する日で、3月8日が世界共通の行動日ですが、埼玉県では毎年3月8日前後の土曜日か日曜日に集会を行なっています。

今年は、オープニング企画として埼玉東部合唱団レインボーのみなさんの歌唱指導で震災被災者応援ソング「花は咲く」を歌った後、弁護士の岸松江さんの講演を聴きました。以下、講演の概要をご紹介します。


岸松江先生の講演は、「決めるのは私たち、憲法を活かす女性のちから~命・暮らしが守られる社会を求めて~」というテーマで行なわれました。

岸先生は労働事件を多く引き受け、セクハラ、パワハラ、いじめ、解雇など、女性からの相談も多く受けているそうです。そうした相談を受ける中で、自分の経験を振り返り、「自分もそちら側にいたかもしれない」と思うことがあるそうです。

というのも、岸先生は弁護士になる前には編集関係の仕事をしていましたが、子供が小さくて残業ができないことを理由に解雇された経験があるのだそうです。当時は労働法の知識がなく、残業ができないことが解雇の理由にはならないことも、解雇予告手当のことも知らず、泣き寝入りするしかなかったそうです。その後、公務員ならそうしたことはないだろうと考えて公務員試験を受け、筆記試験を突破して面接まで進みますが、その面接で夫に転勤の可能性があることや、子供が小さいことなどを問題にされ、不合格となったそうです。面接で自分の能力のことではなく、夫や子供の存在で切られたことに悔しさを感じたそうです。それから正社員の職を得ることができましたが、家事や育児の負担は自分に偏ることに不満を感じていたところ、憲法と女性差別撤廃条約について学ぶ機会があり、自分が感じた悔しさが正当なものであったことに気付かされ、法律への興味がわいて弁護士を目指したとのことです。

憲法には、第13条の幸福追求権、第14条の個人の尊重などから、憲法は”自分は自分の人生の主人公として生きていい”と言っていると気付かされ、女性差別撤廃条約には「女性差別は人間の尊厳の尊重原則に反する」ということに気付かされたそうです。


しかし、その憲法が大変なことになっているということが指摘されました。

第1次安倍内閣は、憲法を変えることを明言して始まりましたが、それがきっかけに9条の会が燎原の火のように広がりました。しかし、2012年の総選挙の前後に、再び憲法を変えようという動きが活発になっています。2012年3月には大阪維新の会が政権公約のたたき台として憲法改正を掲げ、4月にはたちあがれ日本、みんなの党、自民党が改憲案を発表しました。総選挙は憲法が争点になってはいませんでしたが、自民党294議席、日本維新の会54議席、みんなの党18議席、計366議席と、改憲をしようとする勢力が衆院の約4分の3となりました。憲法審査会では、自民党議員が党の改憲草案を説明し、「今後この審査会における議論のベースにしてまいりたい」と述べました。まずは憲法改正について定めた96条を改定し、改憲のハードルを低くしようとする動きもあります。中国との関係の悪化などから、改憲して国防軍を持とうという意見もあり、かつてないほど改憲が現実的になっています。

婦団連は、7月の参院選が重要だと考え、選挙前に憲法を守る活動を立ち上げようと呼びかけているそうです。

自由法曹団では、8月に自民党改憲草案に反対する意見書を出したそうです。

改憲を阻止するには、彼らのやろうとしていることを知る必要があります。そこで、自民党の改憲草案の内容についてポイントが説明されました。

まず第一に、改憲によって目指されているのは「戦争ができる国つくり」です。戦争放棄を定めた9条2項を削除し、国防軍を創設しようとしています。

第二に、「基本的人権の制限」が目指されています。人権条項に「公益・公の秩序」を優先することを付け加え、人権を制限しようとしています。これは大日本帝国憲法と同じであり、特に表現の自由が大きく制限されようとしています。

第三に、「天皇制復活」が目指され、ジェンダー平等が否定されようとしています。天皇を君主化し、日の丸君が代を国旗国家とする条文を加え、婚姻の自由と家族の中の平等について定めた第24条に「家族は互いに助け合わなければならない」という一文を加え、自民党が目指す家族像、社会像を実現しようとしています。


日本国憲法は、戸主権、家督相続権、妻の法的な無能力を定めた明治民法の全面改正であると言えます。戸主には妻や子供を支配する大幅な権限が与えられ、女性は法的行為をすることが許されず、家を買ったり財産を持ったりすることができず、一人の人間として認められていませんでした。そして、天皇制を支えることが家父長制の役割でした。その下で、男性は兵士として、女性は沢山の子供を産む母としての役割を課され、女性の自己決定権は家父長に制限され、国の政策に利用されてきました。そのように従属させられてきた女性を解放したのが日本国憲法第24条です。第24条のキーワードは、「個人の尊厳」と「両性の本質的平等」です。”家”ではなく”個人”が重視され、家も国も私たち一人一人が構成するものであり、構成員一人一人が個人として尊重されることが国をよくしていくことにもつながるという考え方です。

そして、女性差別撤廃条約は、「伝統的役割分担」の考え方がある中では女性の権利は守られないという考え方を示し、実質的平等を目指しています。日本は1985年にこの条約を批准しました。

また、家庭内の平等だけでは不十分であり、社会的な平等を実現するために、社会福祉、個人の負担を社会的に支援していく制度が必要であり、それを実現するために福祉国家を目指すことが必要だということが指摘されました。

憲法9条との関連では、DVなどの私的暴力と戦争などの公的暴力の否定は、社会全体を非暴力化することだということが指摘されました。日本国憲法の出発点は戦争への反省であり、それは憲法の前文に表されています。そして、戦力を持たないというだけでなく、戦争に利用される諸制度を改変するという決意もそこには含まれています。その諸制度の一つが家制度であると言えます。

憲法25条との関連では、女性が担ってきた介護・保育などを社会的サービスで支援しなければ、夫婦で安心して働き続けることはできないということが指摘されました。自民党の改憲草案では、第24条に「家族は互いに助け合わなければならない」と付け加えることで、女性に社会的責任を押し付け、社会保障を削減しようとしています。

日本国憲法は、学べば学ぶほどよくできていることがわかり、それを変えられてしまうと大変なことになります。それを防ぐためには学習が必要だということが提起されました。


日本の女性の現状は、ジェンダー・ギャップ指数で134位中101位という低さです。女性の賃金の低さ、女性管理職の少なさ、女性議員の少なさなどが順位が低い原因だそうです。弁護士会もまだまだ男性社会なのだそうです。

しかし、女性は日本の人口の51.3%であり、男性よりも300万人多い多数派であるということが指摘されました。65歳以上では女性は57.3%、75歳以上では女性は62%です。そして、世界全体でも女性は51%で多数派なのだそうです。それだけでなく、家事、育児、介護などを担っている女性は、子供や高齢者や障害者など、声を上げにくい人たちの代弁者となることができ、プラスアルファの役割があるということも指摘されました。

また、今回の選挙で自民党は294議席を得ましたが、比例代表選での得票数は1662万票、敗北した前回の2009年の総選挙よりも219万票少なく、小泉自民党が大勝した2005年総選挙と比べると926万票も減少していることが指摘されました。つまり、自民党の大勝は選挙制度の歪みの表れであり、本当に国民の支持を得たとは言えないと見ることができます。

そして、歴史認識の歪みは世界からの孤立を招くということも指摘されました。安倍政権は戦争への反省とお詫びを示した村山談話、従軍慰安婦の過ちを反省した河野談話を否定しようとしていることは、諸外国からの批判を受けています。

最後に、多数派である女性の役割として、女性の声が届かない国会は多数の国民を幸せにする国会にはならず、多数派である女性が黙っていては憲法や民主主義などの大切なものが守られないということを認識し、先輩の女性たちが憲法を活かして切り開いてきた成果を学び、前に進む激動期をもう一度切り開いていくことが提起されました。


以上で講演の概要の報告を終わります。

集会の後半については後日改めて報告します。