原発は不良債権である 金子勝・慶應義塾大学教授に聞く(週刊金曜日より) | 労働組合ってなにするところ?

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2008年3月から2011年3月まで、労働組合専従として活動しました。
現在は現場に戻って医療労働者の端くれとして働きつつ、労働組合の活動も行なっています。

あまり知られていない労働組合の真の姿(!?)を伝えていきたいと思います。

まず、東日本大震災の被災地の復旧・復興が、住民の立場に立った形で、1日も早く実現することを祈念致します。



大飯原発再稼働を目指す動きが急速に進められようとしていますが、その際、原発再稼働が必要な理由として出されるのが、電力の不足と電気料金の値上げを防がなければならないということです。確かに、原発が稼働していないと夏の電力が足りなくなるし電気料金も上がるという”予想”に基づいて、企業活動に影響が出るということはあるでしょうが、実際のところ、電気料金が上がるのは原発を稼働しないせいなのでしょうか?

この疑問に答えを出すことに役立つと思われるインタビュー記事が「週刊金曜日」に掲載されていましたので、一部引用してご紹介します。引用部分は青で表記します。



発は不良債権である

金子勝・慶應義塾大学教授に聞く

週刊金曜日  2012年6月1日  867号  p16~17


放射能汚染が続く原発事故から一年以上経過してもいまだ誰も責任を取らず、国民負担で加害企業・東京電力を救済し続ける事業計画だけが進む

「原子力政策大綱」策定会議メンバーでもある金子勝・慶應義塾大学教授に聞いた


(中略)


「燃料費上昇」は嘘


―― 一方で、「電力足りないキャンペーン」的な報道が続いています。


 原発を稼働しないと電気が足りなくなり、その分、火力発電などの燃料費がかさみ電気料金の値上げをせざるを得ないなどという話はまったくの嘘です。実際、原発依存度の低い中国電力と原発なしの沖縄電力は黒字。東電の場合、昨年の燃料費値上がり分はほとんど家庭用の電気料金値上げですでに吸収してしまっています。「燃料費上昇」は口実にすぎません。なぜ電気料金の値上げをもくろむかと言えば、原発が不良債権化してしまっているためです。

 原発はそもそも一機数千億円という膨大な建設費がかかり、それを借金で建設しているので多額の返済コストがかかっています。停止していても危険なので多額のメンテナンス費用がかかる。事故の収束もできないので民間の損害保険会社から損保加入を拒絶されている代物です。しかし電力会社が潰れないためには、安全性が担保できないその不良債権を無理やりでも動かさなければならない。昨年は大企業を中心に自家発電施設を整えた企業も多く、電気が足りないなどというのは嘘なのです。不良債権化した原発を抱える電力会社の経営が成り立たなくなるので再稼働しようとしているのです。実際、電力各社の決算を見ると、原発依存度によって違いますが、すべての原発が止まった場合、各社少なくとも毎年一〇〇〇億から二〇〇〇億円くらいの赤字が見込まれ、依存度四八%の関西電力にいたっては今年二五〇〇億円の赤字、来年は四〇〇〇億円の赤字が見込まれ、数年すると九州電力も自己資本を食い尽くして債務超過になりますね。


原子力予算組み替えを


――不良債権である原発の維持と再稼働のための電気料金値上げというのが実態なのですね。六割から八割いると言われる反・脱原発の人も毎月せっせと払わされる。


 そういうことです。こんな事業計画と電気料金値上げを許してはいけません。明らかに危険な原発を止めることから始めるのが筋でしょう。事業計画にある「社内カンパニー制」などではなく、東電を国有化した上で、将来に向けて発電と送配電の所有権を分離して売却・買いたいしていくことが必要です。それでも賠償費用と除染、廃炉費用にはまだ足りません。その分は、原子力予算を組み替えればいいのです。

 一五年も動かず一兆円も費やしている高速増殖炉もんじゅ。計画から二〇年経っても稼働できない六カ所村の再処理施設には建設費と運転費用合わせて三兆円以上がつぎ込まれています。みんな私たちの税金や電気料金です。莫大なカネが湯水のように投じられても失敗続き。核燃料サイクル事業もまた不良債権化しているのです。しかしこの責任すら誰も取っていません。停止中のもんじゅは冷却費用だけで一日五○○万円もかかっているのです。福島県民がこれだけ苦しんでいるというのに、どう見てもこの事態は異常です。

 こうした原子力予算を組み替え、原発事故の賠償や避難や除染などの費用に充てていくことが最低限必要な措置なのです。




東京電力の事業計画については、記事の前段で語られていますが、事実上破たんしている東電を公的資金や電気料金値上げという国民の負担で救い続けるというものであることが指摘されています。と言うことは、東電そのものが”不良債権化している”と見なすことができるかもしれません。

原発を推進してきた電力会社は、原発が稼働できなければ”原発の不良債権化”が確定的になってしまうので、電気料金値上げで危機感を与え、無理矢理原発を動かして原発が不良債権であることを糊塗しようとしているというでしょう。しかし、安全性が確保されておらず、莫大な費用を消費し続ける原発は、使い続ければ使い続けるほど国民生活に与える悪影響が大きくなっていくと思われます。使用済み核燃料の処理問題を考え合わせても、原発に見切りをつけることに早ければ早いに越したことはないのです。


金子教授は、原子力に費やしている国の予算を組み替え、原発事故の賠償や避難や除染などの費用、つまり、東電福島第一原発で被害を受けた人たちにために使うことを提案しています。未来のない原発を動かし続けるよりも、原発事故の賠償などが優先されるのは当然だと思います。

傷を広げるだけの原発再稼働は止め、国の原子力政策を原発ゼロの方向に転換することを求めたいと思います。