横浜地裁、旧グッドウィル子会社の解雇は「無効」と判決(連合通信・隔日版より) | 労働組合ってなにするところ?

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整理解雇についての判断で、また一つ同様のたたかいをしている人たちを励ます判決が出ました。旧グッドウィル子会社の人材派遣会社による常用型派遣労働者の解雇についての判決です。詳しくは、「連合通信・隔日版」の記事を引用してご紹介します。引用部分は青で表記します。



横浜地裁  元派遣社員の解雇は「無効」

旧GW子会社の常用型労働者  整理解雇4要件で判断

連合通信・隔日版  2011年1月27日付  No.8418  p7~8


 旧グッドウィル系の人材派遣会社、テクノプロ・エンジニアリング(東京都港区)で常用型派遣として働いていた男性(40)が、不当に整理解雇されたとして地位確認を求めていた裁判で、横浜地裁(深見敏正裁判長)は1月25日、男性の訴えを認め、解雇無効の判決を言い渡した。旧グッドウィル関連の解雇裁判は複数あるが、勝訴は今回が初めて。

 JMIU神奈川地本などによると、男性は1996年5月、テクノ社に正社員として入社。テレビなど機械設計の技術者派遣で働いていた。

 同社は2005年、グッドウィル・グループ(現アドバンテージ・リソーシング・ジャパン)の子会社となったが、中核会社グッドウィルが違法な派遣業務を繰り返し、08年7月に廃業した。その後の信用低下と経済危機により、親会社は09年3月、テクノ社やシーテックなど関連会社の待機社員4000人を整理解雇すると発表。男性は同年4月末付で解雇された。

 これに対し男性は、整理解雇の4要件を満たしておらず、解雇は無効と主張。会社は「親会社の赤字」などの理由で、解雇は正当だと争っていた。労働審判と仮処分申請では、男性の言い分が認められていた。


  合理的理由なく、無効


 判決は、整理解雇について①人員削減の合理性②解雇回避努力義務③人選の合理性④手続きの相当性――を考慮すべきだとした。

 会社は、解雇直前まで過去数年は黒字で、解雇の10カ月後には求人も再開している。判決は「経営状態は好ましくない方向に推移していたものの、切迫した人員削減の必要性があったとまでは認める足りない」と指摘。派遣切りの時期であっても人員削減に合理性はないとした。

 希望退職の募集をしないなど、回避努力が不十分で、人選にも合理性がないことから、今回の整理解雇は「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であるとは認められない」として、解雇無効と賃金(基本給)の支払いを命じた。

 原告弁護団の三島健弁護士は、多くの元派遣労働者が生活困窮で和解に至るなか、「貴重な判決だ」と評価した。原告の男性は「解雇無効はうれしい」と率直に喜ぶ一方、賃金が基本給しか認められなかった点は不満としている。


(後略)



この事件は、実際の裁判において整理解雇4要件がどのように使われているのかを知る意味でも貴重な資料だと思います。

2009年3月といえば、経済危機の只中で派遣切りや雇止めが盛んに行なわれいた頃だと思いますが、そうした時季であっても、解雇直前から過去数年の収支が黒字であることなどから、「切迫した人員削減の必要があったとまで認めるに足りない」という判断は横浜地裁は下しています。経済状態がいかに悪化していようと、当該の会社の経営状態が切迫したものでないならば、整理解雇は行なってはならないということになります。

また、解雇の10カ月後に求人を再開した点も指摘されています。ということは、社保庁職員の分限免職後に年金機構で求人を行なった国も、当然不当な解雇を行なったということになるのではないかと思います。

回避努力も不十分さも指摘されています。希望退職の募集をしなかったということが例に挙げられてますが、日本航空のように希望退職の募集を行ない、しかも応募者の数が募集人数を超えたにも関わらず整理解雇を行なった会社も、当然不当な解雇を行なったということになるでしょう。希望退職に年齢制限を設けたことや、休職日数を基準としたことなども、社会通念上、合理的な基準ではないということを指摘することができます。


整理解雇4要件は法律上明文化されている訳ではありませんが、裁判の判例を積み重ねることによって具体化され、現在では法理として定着しています。

解雇無効の法律上の根拠は労働契約法16条であり、使用者の解雇権の行使には合理的な理由が必要であり、合理的な理由がなく解雇した場合は権利の濫用として解雇が無効となるということが定められています。

つまり、整理解雇を行なうことそのものは使用者の解雇権の行使として認められているものですが、整理解雇が合理的理由なく行なわれた場合は無効であり、その整理解雇に合理的理由があるかどうかを判断する基準が整理解雇4要件であるということです。

ちなみに、一般的な権利濫用に関する裁判では主として原告に主張立証責任がありますが、解雇の抗力に関する裁判では、労使間の情報量の差を考慮して、被告である使用者側に主張立証責任が重く分配されているそうです。


こうした判例が積み重なっていくことにより、不当な解雇を是正させる力は強まることになります。更にこうした判例が広く知られ、使用者が事前に不当な解雇を思いとどまるような影響力が発揮されることにも期待したいと思います。