「消費税のカラクリ」、読みきりました! | 労働組合ってなにするところ?

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2008年3月から2011年3月まで、労働組合専従として活動しました。
現在は現場に戻って医療労働者の端くれとして働きつつ、労働組合の活動も行なっています。

あまり知られていない労働組合の真の姿(!?)を伝えていきたいと思います。

消費税を考えるうえで必読の書として話題の『消費税のカラクリ』(斎藤貴男著・講談社現代新書・2010年7月20日発行)をようやく読了しました!


消費税増税については、国民の生活を圧迫し、消費を冷え込ませて景気をさらに悪くしてしまうとか、いや、持続的な社会保障のためには必要だとか、いや、財政を健全化するために必要なのだとか、いろいろと主張されています。

しかし、本書で強調されているのは、消費税が中小・零細業者や自営業者にどのような影響を与えているかということについてです。消費者への影響についてはあまり語られていません。ですが、実は中小・零細業者や自営業者と消費者は同じく消費税の被害者であるということが、本書を読むことによってよくわかると思います。


基本的なことをまとめてみましょう。

まず、中小・零細業者の場合です。下請けの仕事をしている彼らは、発注元の企業との力関係で弱い立場にあるため、下請け単価に消費税分を上乗せすることができません。それどころか、更なる値下げを要求されることもあります。それでも、自分達の事業の売上げに掛かる消費税は納税しなければなりませんので、その分が持ち出しとなってしまいます。よって、資金繰りが苦しくなり、消費税が納税できなくなる業者も出てきます。

次に、自営業者の場合です。商品を販売する場合、その価格に消費税分を上乗せするということが一般的な消費税についての理解ですが、実は法律では必ず価格に消費税を上乗せするということが定められている訳ではないそうです。あくまで、売上げに対して消費税がかかるということで、価格設定はそれぞれの業者に委ねられています。ところが、自営業者は大規模店との価格競争に負けないため、消費税分を価格に上乗せすることができません。ですが、売上げに対する消費税は納税しなければなりませんので、やはりその分が持ち出しになります。中小・零細業者と同じく、消費税が納税できなくなる業者も出てきます。

しかし、国税庁は人気タレントを起用して”消費者から預かった消費税を納めていない業者がある”という宣伝を行ない、消費者VS業者という対立構造をつくり出しました。そして、業者に対する消費税の取りたてを厳しく行なっているそうです。

これは、まさに分断統治ではないでしょうか。為政者が”悪者”を指摘してそれを宣伝するときは、私たちは冷静に慎重にそれが本当に正しいのかということを考えなければならないと思います。

本書には、自営業者の自殺がその人口比に対して異常に高いということも指摘されています。もちろんそれが唯一の原因ではなく、自殺の原因は複合的なものだということも書かれていますが、政治的になくせる原因はなくした方がいいということも言えると思います。


上記のようなことは、本書に書かれている消費税の問題のほんの一部です。

その他の多くの問題については、ぜひ実際に本書を読んで確かめ、考えてください。


なお、消費税と「納税者番号制度」については、本書でほとんど述べられていませんでした。「納税者番号制度」の果てにある「国民葬背番号体制」については、著者の別の著作、『プライバシー・クライシス』(文春新書、1999年)、『小泉改革と監視社会』(岩波ブックレット、2002年)、『住基ネットと監視社会』(日本評論社、2003年)などに書かれているそうです。

単に「納税者番号制度」が監視社会の終点ではなく、さらに様々な方法による国民監視体制が計画されているようです。


それから、あとがきの最後の方にですが、医療や社会福祉事業は原則非課税であるが、必要経費には消費税がかかっているのに仕入れ税額控除は受けられない不公正について盛り込むことができなかったことについて言及がありました。

この分野についてはほとんど知られていないと思いますので、あとがきで取り上げてくださっただけでもうれしいです。この分野で働くものが実際のところは発言していかなければなりませんね。


そんな訳で、ぜひお読みください!