生活労働相談活動交流集会での問題提起 | 労働組合ってなにするところ?

労働組合ってなにするところ?

2008年3月から2011年3月まで、労働組合専従として活動しました。
現在は現場に戻って医療労働者の端くれとして働きつつ、労働組合の活動も行なっています。

あまり知られていない労働組合の真の姿(!?)を伝えていきたいと思います。

11月17日行なわれた全労連の「生活労働相談活動交流集会」において、下記の問題提起がされたそうです。

本日は時間ないため、取り急ぎご紹介のみ致します。



問題提起
2010年11月17日 
全国労働組合総連合 

はじめに
 本日の交流集会は、以下の3つの目的のもとに開催する。
① 秋闘方針に基づき、全国の「生活労働相談」などのとりくみ、各自治体の失業・生活困窮者対策等の実態を交流する。
② 政府の雇用対策など、新たな救済制度などの情報提供と、政府・自治体に対するさらなる雇用対策要求を取りまとめ、要請行動等を具体化する。
③ 新卒者の就職浪人を出さない等、来年度末までの雇用情勢を踏まえ、年末年始及び年度末での「生活労働相談」活動等について必要な対策をおこなう。


 雇用情勢は依然として深刻であり、厳しい生活実態におかれた失業者や非正規労働者をはじめとした多様な相談を受けとめ、解決を援助する「生活労働相談」活動のいっそうの強化が求められている。
 同時に、政府・自治体に対する制度・政策要求と、大企業に対する社会的包囲を強め、失業・生活困窮者対策の抜本的な強化、安定した良質な雇用を求めるとりくみを国民的な運動として強めていく必要がある。


1.雇用をめぐる情勢と私たちのとりくみ
(1) 完全失業率は依然として5%強で高止まりしており、失業期間が1年以上に及ぶ人が前年比23万人増の114万人に達するなど、失業期間の長期化が顕著になっている。有効求人倍率は0.5%台に低迷したままで、いくら探しても仕事がみつからず、ココロを病む人があとを絶たない。新規学卒予定者の求人・求職状況も深刻で、「就職超氷河期」状態となっている。政府調査でも非正規切りがこの2年間に30万人を超えるなど、解雇・雇止めが今も続いており、大企業は労働者を雇用の調整弁として、経常利益をリーマン・ショック以前の水準に回復させている。
  一方で、正社員等の長時間・過密労働も大変な状況になっており、成果主義賃金等のもとで、職場のパワハラやメンタル問題が深刻化するなど、職場の荒廃、人間関係の破たんにまで及ぶ状況となっている。


(2) 賃金破壊攻撃も深刻で、日本の労働者の賃金は、2009年の1年間で23万円(5.5%)も減少した。先進国の中で唯一日本だけがそうで、経済のグローバル化のもとで国際競争が激化した90年代後半以降でも、賃金が伸びていないのは日本だけだということがOECD調査でも明らかになっている。その結果、年収200万円以下の労働者が1099万人に達し、15歳から34歳の青年で自立して生活できるのは、正規労働者でも51.6%、非正規労働者では30.3%にすぎない状況である。


(3) 政府は緊急雇用対策を打ってきたが、民主党政権のそれも自公政権時代の延長線上に止まっており、例えば、本来のセーフティネットであるはずの雇用保険制度は数次の改正にも関わらず、失業給付の受給者は依然として2割強という低水準に止まっている。鳴り物入りで導入された「第2のセーフティネット」も、失業中の生活困窮者を対象としているにもかかわらず、貸付中心の制度となっており、使い勝手の悪さが大きな問題になっている。菅政権は国際競争力強化の「新成長戦略」への傾斜を強めており、失業対策は次第に後景に押しやられている。


(4) セーフティネットが機能せず、景気悪化が長期化するもとで、失業・生活困窮問題はいっそう深刻になっており、各地の「生活労働相談」には多くの相談が寄せられている。失業者は劣悪な仕事でも飛びつかざるを得ない状況であり、それが雇用破壊、賃金破壊を招くという悪循環が続いている。


(5) 「生活労働相談」活動の重要性がいっそう増しており、「労働相談ホットライン」などを通じた日常的な相談体制のさらなる強化とネットワーク化、“派遣村”的な「街頭相談活動」の積極的な開催など、全国の先進例に学んだとりくみ強化が求められている。
 “年越し派遣村”は派遣切りを可視化し、雇用問題を政治の中心課題に押しあげ、自公政権を退場に追いこむ一つの突破口になった。「生活労働相談」活動の強化は、困難な状況に追いこまれた失業者・労働者に支援の手を差し伸べるということに止まらず、それを通して雇用破壊の実相を世間に問い、安定した良質な雇用をめざす労働組合の本来的活動であり、それは組合のある職場を含めた雇用全体の底上げをはかる活動である。


2.政府などの雇用対策の現状
(1) 政府は昨年のワンストップ・サービスの経験をもとに「一時的な対応では限界」があるとして、通年的な支援体制の構築をめざすとしている。そして、住居・生活支援アドバイザーの配置や福祉事務所等への相談員の増員などをすすめ、パーソナル・サポート体制を確立しようとしている。しかし、それにかかる増員は微々たる数で、一方では総定員法による定員削減が続けられており、全国のハローワークや福祉事務所は急増する相談をこなしきれず、本来必要な個別援助を十分になしえない状況に陥っている。
  また、菅政権は現在、恒久的な求職者支援制度の具体化論議をすすめているが、現在の「第2のセーフティネット」の恒久化という域に止まっており、不十分な内容に止まっているといわざるをえない。地域主権改革や事業仕分けなどでハローワークの地方移管など、雇用対策に逆行する動きも強まっており、整合性のない場当たり的な対応となっている。


(2) 一方、ワンストップ・サービスなどについては、地方自治体の通年的とりくみを支援するという姿勢だが、地方自治体は生活保護世帯の急増などから、財政難を理由に消極的な姿勢といわざるをえない。また、政令指定都市市長会や東京特別区長会長などが、「生活保護制度は制度疲労に陥っている」として、有期化や医療費の一部自己負担化(医療扶助の改悪)などの主張を強めている。つまり、政府と地方自治体の責任の押しつけあいのもとで、セーフティネットの構築が実態としてもすすまない状況である。


(3) こうした状況のもとで、年末年始をひかえ、菅政権は11~12月に「住居・生活応援プロジェクト」の実施を打ちだし、全国140か所でワンストップ・サービス・デーの実施、172か所で就職面接会・就職支援セミナーなどの開催が順次はじまっている。特に首都圏では、「首都圏年内就職応援キャンペーン」がとりくまれる。
  「年末に向け、住居・生活支援と就労支援を特別に強化」し、住居喪失者等の救済をできるだけすすめるとしている。しかし、この間の状況からいえば、ⅰ)広報が当事者に十分いきわたるのか、ⅱ)住宅手当を中心とした「第2のセーフティネット」では十分に機能しえないなかで、確実な救済につながるのか、ⅲ)本来は生活保護での対応が必要な人が新たな借金を負わされる制度に誘導されないのかなど、いくつもの懸念がぬぐえない。
  年末に向けて「生活労働相談」活動を全国各地で集中的に実施し、政府・自治体に対して、かけ声倒れに終わらず、実効ある対応をせまるとりくみが強く求められている。


3.今後のとりくみ強化の基本
(1) 「年越し派遣村が必要ない社会の実現」をスローガンに、政府に対して総合的な失業・生活困窮者対策の実現をせまる。その第一弾として、別紙の要求書に基づいて政府交渉を強める。各都道府県でも、全労連の要求書を参考に、公的就労の確保を含めた自治体要請行動を強めていく。
  また、政策論議を深め、来春に予定される求職者支援法案に対置する政策要求・提言を具体化し、諸団体とも共同して実現求めるとりくみを強化していく。
  同時に、安定した良質な雇用を求めるたたかいの強化が重要であり、労働者派遣法の抜本改正、有期労働法制の実効ある改正(含むパート労働法改正、均等待遇原則の法制化)をめざしてとりくみを強化する。


(2) 「何でも相談体制」の確立・強化を全国ですすめていく。そのため、退職した組合幹部などにもひろく呼びかけ、相談員体制の質量ともの拡充をすすめていく。
  また、生活・労働相談にとりくむ広範な団体との協力・共同を日常的に強め、相互支援体制、ネットワークの構築をめざす。


(3) 特に日常的に協力関係にある生健会やいの健センター、自由法曹団、社保協、民医連、民商、農民連などとの共同を強め、相談活動の交流と相互支援体制の構築を検討する。
  そのため、全労連としても、それらの団体との協議のもとに、相談事例の共有化やデータベース化の協議の早期開始をめざす。


(4) 県都や中核都市での街頭相談活動をすすめる体制確立が重要であり、諸団体との共同のもとに当該地域での実行委員会等の組織化をすすめていく。また、北海道や埼玉、長野、岡山、愛媛、福岡などの先進的なとりくみにも学びつつ、社会福祉振興助成事業の補助金活用(ただし、10年度分は終了しており、今後は来春の11年度分の募集となる)も含めて、行政への働きかけ強化によるシェルター確保や基金等の創設についても積極的に検討していく。


4.年末へ向けた当面する運動
(1) 失業状況が深刻の度を増し、各地の主要駅が今年も“派遣村状態”になりつつあるもとで、年末に向けてとりくみを集中的に強化する。
  政府や地方自治体が「住居・生活応援プロジェクト」を実施し、各地でワンストップ・サービス・デーなどが計画されているもとで、それに呼応したとりくみを積極的に具体化する。
  具体的には、ワンストップの会が昨年おこなった「つなぐ・つながる総行動」の経験に学んだ行動を全国で積極的に展開する。つまり、各地のワンストップ・サービス・デー等の企画の広報を強めるとともに、それが実施される日には、当該施設の前での宣伝行動やアンケート活動などを実施し、相談者が生活保護をはじめとした適切な制度につながっていくよう、援助をおこなう。


(2) そのため、「ハローワーク前アンケート2010」については、12月末までとりくみ期間を延長し、全県での集約、1万人を超える回答をめざす。
  また、全労連として東京地評などと共同で、第2次調査(第1次調査の連絡判明者等への郵送アンケート)、第3次調査(聞き取り調査)を実施し、失業者等の置かれた実態を明らかにする。
  アンケート活動でつかんだ生の声は特別に重要であり、雇用破壊の実相を明らかにする武器として積極的な活用をすすめる。また、アンケートに連絡先を記入した失業者・生活困窮者に行動参加を呼びかけるなど、当事者との共同を追求・強化していく。


(3) 政府に対して失業・生活困窮者対策の緊急強化を求めるとりくみを強力に展開する。各都道府県でも全労連の要求書を基本にしつつ、地域での具体化を加えて、県や政令市等への要請行動を強める。


(4) 11月29~30日に予定している全国一斉「労働相談ホットライン」のとりくみを重視し、全県で広報の強化などの準備を強め、深刻な雇用実態を明らかにする場としていく。


(5) 12月のディーセントワークデー(12月17日)の中心課題を「失業・雇用問題」として、全国で多様な行動の具体化をはかる。
  また、この週(12月12日~18日)を「失業・雇用問題行動強化週間」として、全国で多様な行動、この週を基本とした「街頭なんでも相談」の実施をめざす。街頭相談の実施に際しては、地方自治体・福祉事務所との事前協議などを通じて、必要な対応や生活保護のスムーズな受入などを担保する。また、必要なシェルター等を確保する。
  なお、強化週間待ちにならず、早め早めに行動を具体化していくこととする。


(6) こうした活動を通じて、年末までに一人でも多くの住居喪失者・生活困窮者の救済の実現をめざす。
  ただし、現状にかんがみ、年末年始の特別体制の確立について、都道府県などへの申し入れや折衝を並行して開始することとする。


以 上