生活費、地域差なし 全労連調査「最低賃金も全国一律に」(毎日新聞より) | 労働組合ってなにするところ?

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2008年3月から2011年3月まで、労働組合専従として活動しました。
現在は現場に戻って医療労働者の端くれとして働きつつ、労働組合の活動も行なっています。

あまり知られていない労働組合の真の姿(!?)を伝えていきたいと思います。

何度も取り上げておりますが、7、8月は最低賃金引き上げのための行動を展開すべき時期です。中央最低賃金審議会の審議も始まり、その答申を受けて各地方での審議会も行われます。

そんな中、全労連が3つの地域で行った最低生計費調査の結果を発表しました。この調査には、当組合も埼玉県での調査の際に参加しています。

詳細は、毎日新聞の記事を引用してご紹介します。引用部分は青で表記します。



働くナビ:最低限の生活に必要な費用は都市の規模によって違うの

毎日新聞  2010年7月5日

http://mainichi.jp/life/today/news/20100705ddm013100054000c.html

◇生活費、地域差なし 全労連調査「最低賃金も全国一律に」


◇住居費高い首都圏/自家用車欠かせぬ地方


 生活するのに最低限必要なお金は首都圏も地方都市も大差はない--。労働組合の全国組織の全労連が3年がかりで行った最低生計費の試算結果から、そんな実態が浮かんだ。10年度の最低賃金を検討する中央最低賃金審議会の審議も始まっているが、地域によって大きな差のある最低賃金のあり方に一石を投じる調査結果となりそうだ。

 最低賃金は、地域の経済状況や物価などを参考に地域ごとに決められ、09年度は全国平均713円で、最も高い東京都(791円)と最も低い沖縄、宮崎、長崎、佐賀県(629円)では162円の差がある。しかし、「生計費はそんなに違いはない」と全国一律の最低賃金を求める声もある。地方の経営者らは「東京と同額は払えない」と否定的だが、民主党も全国一律で最低賃金の下限を800円とし、全国平均1000円にすることを政策に掲げている。

 こうした状況を受け、全労連は最低限の生活に必要な費用を調査することにした。08年に東京や埼玉など首都圏で、09年に岩手や山形など東北6県で、今年は静岡県で調査を実施。大都市圏、中堅都市、地方都市のデータがそろった。

 全労連参加の組合員などを対象に調査し、家具や家電、衣服などの持ち物を尋ねた。7割の人が保有しているものを必需品とし、量販店などでの調査から最低価格で計算した。娯楽費や理容代なども調査から実態を把握し、月額に割り戻して積み上げた。例えば、静岡の教養・娯楽費用では、携帯ゲーム機の所有率が高く、新聞・雑誌の購読者が少ないことから、ゲーム機代(月額280円)が計上され、新聞・雑誌代は入っていない。

 調査の結果、中堅都市の静岡市在住の25歳独身男性の最低生計費は月額23万5757円(税、社会保険料込み)となった。1DKのアパートで通勤用の中古車を所有。冷蔵庫やエアコン、テレビ、携帯ゲーム機などを持ち、主に自炊して食費は月3万8695円、小遣いは月6000円。生計費を時給に換算すると1356円で、同県の最低賃金713円と大きな隔たりがあった。

 この数字を首都圏(さいたま市)や地方都市(岩手県北上市)と同じモデルで比較すると、税抜きで中堅都市が真ん中になり首都圏と地方都市の開きも月2588円しかない。首都圏の住居費は高いが、地方は移動に自家用車が欠かせず、交通・通信費が首都圏より高くなっている。食費や光熱費は各地域で一長一短があり、総合すると最低生計費に大きな差は出なかった。

 静岡県のケースでは、最低賃金を1356円に上げた場合の経済波及効果を総務省の調査などを使い試算。需要増加は約3960億円で3万5767人の雇用誘発につながるとした。

 全労連の伊藤圭一幹事は「三つの違う規模の都市間で最低生計費がほぼ同じことが分かり、全国一律の最低賃金が必要であることが明確になった」と分析。最賃について「地方で大幅な引き上げは厳しいかもしれないが、最初に引き上げる時に中小などへ厚い支援をすれば、その後は経済波及効果の影響で経済は活性化される」との見方を示した。【東海林智】


 ■3都市の最低生計費比較(単位・円、全労連調べ)


               静岡市  岩手県北上市   さいたま市

消費支出        173549    171738    174406

食費            38695     40822     39564

住居費           42000    30000    54167

光熱・水道          6993     9017     6552

家具・家事用品       2686     3410     3881

被服・履物          5838     5385     7548

保健医療          2420     2465     2465

交通・通信         40082    41683    18214

教育                0        0        0

教養娯楽          15417    18145    18273

その他           19418    20811    23742

非消費支出        44853    42603    42395

予備費           17355    17000    17000

最低生計費(税抜き)  190904   188818   191406

月額(税込み)      235757   231421   233801

年額(税込み)     2829084  2777052  2805612


 ※静岡市は10年、北上市は09年、さいたま市は08年調査



この調査方法はマーケットバスケット方式と言いまして、アンケート調査によって現在の生活に最低限必要な持ち物、その他の生活費を割り出し、項目ごとの費用を積み上げて合計額を出すという計算方法です。最低限必要なものとは、「人前に出て恥をかかないでいられる」という程度のものを想定し、最低価格ではなく、標準的な価格を採用しています。食事については、必要なカロリーと栄養を満たすように試算されているそうです。

ちなみに、「その他」には親戚の冠婚葬祭などの費用やお見舞いやお年玉などの交際費、自治会費、賃貸住宅の共益費、同窓会などの会費が入り、「非消費支出」は所得税、住民税、社会保険料が入るそうです。「予備費」は個人差や健康状態の変化などによる支出を考慮し、消費支出の1割を予備費として設けたそうです。

なお、上記の比較表は25歳独身男性を想定しているので、教育費は0円になっています。

こうした説明は、首都圏最低生計費調査作業チームが2008年8月に発行した報告書「最低生計費試質調査の中間報告―若年単身者世帯「最低生計費」―」に書かれていました。その後、夫婦のみの世帯や子どものいる世帯、母子世帯、老人単身世帯など、様々な世帯モデルの最低生計費を試算した結果も公表しています。

興味のある方は、労働運動総合研究所のホームページで資料を閲覧してみてください。


労働運動総合研究所(労働総研)

http://www.yuiyuidori.net/soken/




こうして最低生計費の試算過程を明らかにしますと、「娯楽費まで含めたら最低生計費とは言えない」とか、「予備費を1万7000円以上も設けたら最低生計費とは言えない」などといった批判が聞こえてきそうです。

しかしそれも、生活保護水準と同じく、私たちが「健康で文化的な最低限度の生活」をどのようなものと捉えるかということに関わってきます。生活に必要なあらゆるものを最低価格でそろえることを前提として試算された生計費が「健康で文化的な最低限度の生活」を保障する最低生計費なのか。それとも、生活に必要なあらゆるものをその地域の標準的な価格でそろえることを前提として、それに加えてせめて親戚の冠婚葬祭に参加することができ、友人との付き合いが保て、病気になったときに医療機関を受診することが可能な状態にあるものとして試算された生計費が「健康で文化的な最低限度の生活」を保障する最低生計費なのか。


最低賃金は、2008年施行の改正最低賃金法により、憲法25条に基いてすべての国民に「健康で文化的な最低限度の生活」を保障することが可能な水準に達するものとすることが定められました。よって、最低賃金の問題もまた、憲法25条の実現の問題なのです。

そして、憲法とは国民が目指すべき理想を掲げたものではなく、国民が国家に実現すべきことを約束させたものです。よって、憲法に書かれているということは国民が国家にそれを実現することを求める根拠にこそなりますが、それが理想に過ぎないという根拠にはなりません。だからこそ、憲法に基いて多くの法律が制定されているのです。

そうしたことをしっかり認識して、最低賃金の引き上げに取り組んでいく必要があると思います。




2010年9月16日予定の判決日まで、こちらもご支援よろしくお願いします。


緊急報告「爪ケアを考える北九州の会」からのアピール

http://ameblo.jp/sai-mido/entry-10310539150.html



2009年12月18日、第2回公判が行なわれました。「ユニオン」と「労働ニュース」アーカイブ様から新聞記事をご紹介していただきました。



毎日新聞の記事

http://fukuokaunion.blog7.fc2.com/blog-entry-5054.html



朝日新聞の記事

http://fukuokaunion.blog7.fc2.com/blog-entry-5058.html



当ブログでは、2010年6月24日に結審した際のasahi.comの記事をご紹介しています。


福岡爪ケア事件控訴審、6月24日結審(asahi.comより)

http://ameblo.jp/sai-mido/entry-10572938282.html