爪ケア事件、看護管理学会が意見書提出(CBニュースより) | 労働組合ってなにするところ?

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当ブログでもご支援を呼びかけている爪ケア事件に対して、看護管理学会が「傷害事件ではない」という見解を示す意見書を提出したことが医療情報キャリアブレインニュースでわかりました。記事を引用してご紹介します。引用部分は青で表記します。



爪切りで有罪判決、「傷害事件ではない」 ―看護管理学会が意見書
医療情報キャリアブレイン 2010/1/29 15:30

http://www.cabrain.net/news/article/newsId/26111.html



 北九州市の北九州八幡東病院の元看護課長(控訴審で公判中)が、入院中の認知症患者の爪を切って出血させたとして傷害罪に問われ、昨年3月の一審判決で懲役6月、執行猶予3年を言い渡された裁判をめぐり、日本看護管理学会(理事長=鶴田惠子・日本赤十字看護大教授)はこのほど、意見書を取りまとめた。基本的看護としての爪切りの妥当性や看護管理者によるケアの質の保証などから、「傷害事件ではないことを確信する」と主張している。


(中略)


 意見書では、患者の爪床が露出するほど深く切り取られたことについて、デブリードマン(創傷治癒を促進するために壊死組織を除去する外科処置)の観点から、「創傷治療の原則に則ったものと考えることができる」と指摘。それを放置した場合、爪がシーツや衣類に引っ掛かり、予期せずはがれることが予測されるとし、「専門職である看護師がアセスメントしケアに至ったのは当然」としている。

 一方、元看護課長が働いていた職場環境に関しては、「創傷治癒に関する理解が遅れている」「ケアに対する方針が理解されない人間関係など職場環境の問題が容易に推測される」などの見方を示し、「被告人はむしろ看護の質の保証を実践しようとした」としている。

 同学会は昨年末の理事会で意見書の作成を決め、年明けに学術活動推進委員会(委員長=井部俊子・聖路加看護大学長)が取りまとめた。鶴田理事長は裁判の行方を「今後も引き続き注視していく」と話している。



日本看護管理学会というものには馴染みがなかったので、公式ホームページを探してみました。


日本看護管理学会
http://janap.umin.ac.jp/



上記のホームページから、意見書の全文も読めるようになっていました。


「傷害被告事件に対する意見書」
http://janap.umin.ac.jp/new_HP/jimukyoku/2010.01.25.pdf



意見書を読んでみたところ大体理解できましたが、ケアについての哲学的考察の部分はちょっと一般的な書き方ではないのでわかりにくいと思います。

要は、爪切り行為は単純に「自らが楽しみとする」という利己的な目的で行なわれたのではなく、爪切りによって清潔が向上することに患者が感じる喜びを自らも感じ取って喜ぶ行為なのだということを言いたいのだと思います。
そもそも単純に考えれば、身体的不自由を抱えて自ら爪を切ることができない患者さんに対して看護師が爪を切ることを代行することができないのだとしたら、家族の看護を受けられない患者さんは爪が伸び放題になってしまいます。看護師が患者さんの爪をケアするのは当然の行為であり、看護師として当然の行為をすることに喜びや遣り甲斐を感じ、それを「楽しい」と感じるのは当然だろうという話ですよね。


また、肥厚などのために処置をしなければならない爪というのは、つまりは病的な状態である爪であって、病的な状態に何らかの対処を行なう過程では出血を伴う場合もあることは、容易に予想できることだと思います。(たとえば、傷の手当をする時には出血が起こる場合もあります) 病的な状態の回復のために処置をする過程で起こる出血はある程度許容しなければ、一切の処置ができなくなってしまいます。痛みについても同様でしょう。(たとえば、消毒をすれば痛みを感じるのは当然のことです)
ですから、出血や痛みがあったことを理由に直ちにそれが傷害行為であると判断することはできません。その行為が処置の過程として妥当なものであったと立証されれば、出血や痛みがあっても傷害行為には当たらないということになります。
そして意見書では、本件の爪切り行為は創傷治癒の原則にのっとったもの、つまり傷の治癒を促すために妥当な行為であるという考えを示しています。


日本看護管理学会は看護管理者、つまり職場のマネジメントを行なう立場にある看護師に焦点を当てている学会なので、意見書では新任看護管理者としての控訴人の立場についても考察しています。

本件は控訴人が病棟を異動した直後に発生しており、新任の看護管理者のケアに対する方針が理解されない人間関係などの職場の問題があったことを推測しています。
つまり、爪ケアについての認識が薄い職場において、自らが実践して手本を示すことでケアの質の向上を図ろうとした控訴人の思いが理解されず、かえって職場の反発を招いたということではないかと思います。


こうした看護管理者の立場からの意見書が出されたということは、控訴審において新たな展開を起こすことになるのではないかと思います。看護関係者がそれぞれの専門の立場から、多くの意見書を寄せてくださることを期待したいと思います。



合わせてこちらもお読みください。


緊急報告「爪ケアを考える北九州の会」からのアピール

http://ameblo.jp/sai-mido/entry-10310539150.html



12月18日、第2回公判が行なわれました。「ユニオン」と「労働ニュース」アーカイブ様から新聞記事をご紹介していただきました。


毎日新聞の記事

http://fukuokaunion.blog7.fc2.com/blog-entry-5054.html


朝日新聞の記事

http://fukuokaunion.blog7.fc2.com/blog-entry-5058.html



第3回公判の記事もご紹介いただきました。


毎日新聞の記事

http://fukuokaunion.blog7.fc2.com/blog-entry-5422.html


以下、「ユニオン」と「労働ニュース」アーカイブ様からの情報提供です。


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