ストライキについて勉強しました1 | 労働組合ってなにするところ?

労働組合ってなにするところ?

2008年3月から2011年3月まで、労働組合専従として活動しました。
現在は現場に戻って医療労働者の端くれとして働きつつ、労働組合の活動も行なっています。

あまり知られていない労働組合の真の姿(!?)を伝えていきたいと思います。

いよいよ春闘も始まりましたし、資料もいくつかいただきましたので、ストライキについてまとめてみたいと思います。


まず、ストライキとは何かということを考えてみます。

一人一人では弱い立場にある労働者は、労働組合としてまとまることで経営者に対抗できる力を持ち、賃金の引き上げや過重労働の解消などの要求を実現するために交渉を行ないますが、その際に交渉を前進させるための手段の一つとして行なわれるのがストライキです。

労働者が様々な要求を主張することは、人件費をできるだけ低く抑えたいと考える経営者にとっては不都合なので、経営者が労働組合の活動を押さえ込もうとすることが度々行なわれてきました。それでも諦めずに活動してきた労働組合員たちの努力により、現在では労働者の団結権、交渉権、争議権は社会的な権利として認められるようになっています。

日本においては、戦後、日本国憲法第28条によって「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する」と定められ、それに基いて具体的に労働者の権利を保障する法律がつくられています。

ストライキを行なう権利は、憲法28条で定められている「団体行動をする権利」であり、専門的な言葉では「争議権」と言われています。


では次に、具体的な労働者の権利を定めた法律において、ストライキを行なう権利がどのように保障されているかを見ていきます。

まず、労働組合法によって、ストライキなどの争議権を行使する際に労働組合員が不利な扱いをされないように保護することが定められています。

具体的には次のようなものです。


 ①刑事罰を受けない(ただし、暴力の行使は除く 第1条2項)

 ②解雇、その他の不利益な扱いをすることの禁止(第7条1号)

 ③使用者に対する損害賠償義務の免除(第8条)


①は、たとえばストライキを行なうことを営業妨害だとして罪に問うことはできないということ、②は、たとえばストライキを行なったことを理由に解雇したり、降格したりすることはできないということ、③は、たとえばストライキによって事業収益が下がったとしても、その分を労働者に請求することはできないということを指します。



また、ストライキを行なうための準備については、次のように定められています。


労働組合法第5条8項

 同盟罷業は、組合員又は組合員の直接無記名投票により選挙された代議員の直接無記名投票の過半数による決定を経なければ開始しないこと。  


ここでいう「同盟罷業」とはストライキのことです。つまり、労働組合員の過半数の賛成か、あるいは組合員の代表の過半数による賛成がなければストライキは行なえないということです。もちろん、なるべく多くの組合員がストライキに賛成し、参加することが望ましく、全ての組合員が参加することが最大の効果につながります。ですから、ただストライキの是非を問うだけでなく、事前に要求実現の必要性やストライキの意義を伝えることが重要です。

そして、ストライキを行なうことについて過半数の賛成を得ることを、「ストライキ権を確立する」と言います。

なお、病院や診療所などの医療機関は、「労働関係調整法」第8条で「公益事業」として指定されており、ストライキ実行するにあたっては実行日の少なくとも10日前までに各都道府県知事(実際には労働関係所管の課)と労働委員会にストライキの予告を文書で提出することが義務付けられています(労働関係調整法第37条)。しかし、これは予告する義務があるということであって、ストライキ権を行使することを知事や労働委員会が左右できるということではありません。

「公益事業」には、医療の他に運輸業、郵便、信書便又は電気通信の事業、水道、電気又はガスの供給の事業、公衆衛生の事業があります。


第1回はこの辺で。

次回は法律からは離れて、実際にストライキをどのように行なうかをまとめてみたいと思います。



参照:労働組合法

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S24/S24HO174.html


労働関係調整法

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S21/S21HO025.html