本日は、矢田部過労死事件行政訴訟の第1回口頭弁論を傍聴してきました。
この後は日比谷野音の派遣法抜本的改正を求める集会に参加するので、銀座のネットカフェでこれを書いています。
矢田部過労死事件は、現在さいたま地裁で会社を相手取った損害賠償訴訟を行っていますが、今回は過労死認定をめぐる行政訴訟です。こちらは足立労働基準監督署が被告となりますので、東京地裁での裁判となります。
第1回口頭弁論は本日午後1時30分より、東京地裁の第528号法廷で行われました。
まずは、原告からの訴状の陳述で、既に文書として提出されていますが、原告の代理人が請求の主旨として、足立労働基準監督署が矢田部さんの労災給付を不支給としたが、被災者のクモ膜下出血は業務起因性があることは明確であり、処分は無効として取り消しを求めると述べました。
続けて内容の補足を述べる前に、裁判官が被告側の答弁書の確認を行いましたが、被告側は口頭では何も述べませんでした。
補足陳述では、原告代理人が足立労働基準監督署の対応について、株式会社クオークにおける被災者の労働とクモ膜下出血の因果関係について全く検討しておらず、検討することすら無意味であるという立場をとっており、労働実態の調査・把握も不十分であり、疲労の蓄積についての検討も行なっていないということを指摘しました。また、認定基準の機械的な適用によって棄却の判断を下しており、労働実態を調査した上での誠実な対応を行なってほしいと述べました。
次に、原告による意見陳述が行なわれました。原告の一人である矢田部さんのお母様が、健康だった息子さんが株式会社クオークでの異常で過酷な労働によって健康を害し、体中の痛みを訴えてまともに歩けない状態になってついに退職に至り、その約6ヶ月後にクモ膜下出血でなくなったことは過重な労働が原因であると確信していると述べました。息子さんの友人や同僚からどのような働かせ方をさせられていたのかの情報を集め、労災申請手続きをしてタイムカード等の資料も得ましたが、足立労働基準監督署は遺族補償給付も葬祭料も棄却するという処分を決定しました。これに納得いかず、東京労働者災害補償保険審査官に審査請求し、労働保険審査会に再審査請求しましたが、いずれも棄却されました。矢田部さんのご両親は、労働保険審査会の棄却決定処分理由は、被告会社での異常で過酷な働かせ方という重要な部分を無視した表面的なものであったことに納得できず、足立労働基準監督署の処分取り消しを求めて東京地裁に提訴しました。お母様は、裁判所には労働実態について十分な検討をしていただき、正しい判断を下されることをお願いしたいと述べて、陳述を締めくくられました。
被告側は、株式会社クオークについては民事訴訟中なので資料が十分出されておれず、まずは矢田部さんが株式会社クオーク退職後に勤務したトミナガ(漢字表記はわかりません)での勤務について陳述すると述べ、それについての書面は1月下旬に提出するとしました。
それを受けて、次回の口頭弁論は2月5日午前11時30分から行なうことを確認し、第1回口頭弁論は終了しました。
その後、控え室において支援者集会が行なわれました。
まずは働くもののいのちと健康を守る東京センターの方が挨拶し、多くの傍聴と原告の訴えによって、認定基準のハードルを越えて認定を勝ち取ろうということと、この裁判の勝利は多くの同じような境遇にいる青年労働者にとって励みになると述べました。(今回の裁判の裁判官は、最近薬剤師の過労死事件を敗訴にした裁判官だという情報もおっしゃっていました)
松下プラズマディスプレイ裁判原告の吉岡さんも傍聴され、非正規労働者にも過労死が発生しており、多くの青年労働者のために負けられない闘いだと述べました。
弁護団からは、東京地裁での訴訟は国を相手取っての裁判となり、認定基準について争うことになるが、労働基準監督署も審査会も「検討する必要なし」という立場をとって実態を見ていないこと、被告答弁書によるとすべてについて争う立場であること、しかし、裁判になった以上は株式会社クオークのことも調べざるを得なくなることが説明されました。
矢田部さんのお母様は傍聴支援のお礼を述べ、これからは認定基準の実態との乖離と運用の問題について争っていくことになり、これ以上の犠牲を出さないためにも引き続き支援をお願いしたいとおっしゃっていました。
他にも何人か支援者の方の発言がありましたが、十分にメモが取れなかったので今回は割愛させていただきます。
民事訴訟についての報告はこちらを参照してください。
「矢田部過労死裁判・さいたま地裁第1回口頭弁論」
http://ameblo.jp/sai-mido/entry-10135436302.html
「矢田部過労死裁判・さいたま地裁第2回口頭弁論」
http://ameblo.jp/sai-mido/entry-10164584891.html
では、後1時間ほどここで時間をつぶしてから、日比谷野音の集会に向かいます。