コカ・コーラがノウハウ流出を嫌ってコーラの作り方を特許出願せず秘密にしていることは比較的よく知られています。
そのコーラと伊右衛門を対比させて書名にもってきた、知財業界の裏話的な書籍です。
レシピ公開「伊右衛門」と絶対秘密「コカ・コーラ」、どっちが賢い?:特許・知財の最新常識
ISBN 978-4-10-350611-9
iPS細胞でノーベル賞を受賞した山中教授の知財戦略、最近話題のミドリムシや「おじいちゃんのノート」、サトウの切り餅、どん兵衛vs.サッポロ一番、アイフォン、ポッキー etc...。
身近な題材を集め、特許出願のメリット・デメリットから訴訟まで、専門用語をほとんど使うことなくわかりやすく説明されています。
「パナソニックも陥ったノルマ出願の愚」という章では、大手企業に多いノルマ出願の問題点をあげ、「知財としての東京五輪エンブレム問題」では、著作権や商標権にも言及。
ほとんどは翻訳に直結する話ではないとはいえ、訴訟の事例などは、仮に英訳するとしたらどうなるか?とシミュレーション的に考える題材としても、利用できると思います。
サトウの切り餅の例でいうと、「切り餅小片の上面とつながる側面」を、どう訳すか、とか。
なお、著者は、「知財コミュニケーター」という自ら考えた肩書きを名乗る弁理士です。
タクシー運転手から39歳で弁理士になり、52歳で大学院に入学。博士号まで取得しています。
やりたいことがあったら、何歳になっても、どういう肩書きでもチャレンジできるものですね。
キャリア同様、書籍の中身も、他の知財本とはひと味違ったユニークさがありました。