ユラり
新宿駅は 疲れた大人達の墓場
疲れを酔いでごまかした大人達
ある者は更に酒を煽りに
ある者は客引きに王の様に話しかけ
人生の楽しみの半分も知らない少女が
荒み切った街角で
小金持ちを探してる
今日はメジャーな小田急線
始発駅ともあって座れた俺
座席の一番はじっこに座る
目の前に立つ
リーマン風
メタボ
グレイのブレザー
NOタイ
五十歳位
のおじさん
大分泥酔してるようで 立っているのがやっとだ
一本の吊革に全てを預けて
体を電車の揺れに合わせて 左右に振る
時折
ふーって溜め息ついては 口をムニャムニャする
と
天から俺の膝に何か降ってきた
吊革おじさん グレイの汗だ
おじさんの1日の疲れを濃縮還元した
ダメな汗が
おじさんの頭皮
もみ上げをへて
鍾乳洞のように垂れてきた
おじさんはフラフラ
辛いの解るが
この汗は基本的に他人がさわれる代物ではない
ユラユラ揺れるグレイ
汗が一滴 俺の買ったばかりのスニーカーへ
二滴目
グレイ ユラユラ
タイミングみて足をどかすも また膝へ
ユラユラ
足へ
なんて射程圏してやがる
股の間のカバンをどかし内股になるも
一滴 また膝へ
他人の汁はかなり嬉しくない
と
今度は俺のほっぺたに
感じたことのない
常温の雫石が
グレイから俺に飛んだ際に若干エアコンで冷えた 冷え汁
野郎 顔射までしてきやがった
グレイは疲れているのが
前につんのめり 奴の顔は俺の真上
グラグラしてきやがった
そして 頭を手グシで
しゃっしゃっ
霧吹きが俺の顔へ
さっきまでいた新宿のかほりが返ってきた
これは
いかん
シルクドソレイユみたいに吊革で遊ぶおじさん
クルクル
滑らかな曲線 で
ハイカラさんばりに何かを振りまく
クルクルクル
たまに膝がガクッとして
私はいずこにいるみたいな王の顔して
口を意地悪そうに グチャグチャやって
やっぱり クルクル
倒すなら
今しかないな