「そこで服を脱いで!」 粉吹きイモみたいな女の看守が無表情で言う。

私は丁度アレの日だった。


パンツ1枚をはいて黙ってると、「早くそれも全部脱いで!」

(テメエー!出たらそのツラ蹴飛ばすぞ)

仕方が無い・・・・脱ぐか・・・

両足を広げて立つと、薄い手袋をした看守がアソコに指を入れた。

「隠してないね!!」

「バカじゃないの!!誰がそんなとこに隠すんだよ!!」

開き直りとはこう言うことだ。


「あんた、初めてじゃないね!」

「はあっ!?」

「脱ぎっぷりがいいよ」

そんな短い会話の中で狭い座敷の部屋にいた。


これから、身体的特徴の検査だ。

体のキズの場所、そのキズの長さ。アザやホクロ・・・・・

私には背中と腿に彫り物がある。

それを見た看守が

「どこで彫ったの?あんたキズだらけだね~、指もないじゃない・・・・」

確かに面倒な身体的特徴の検査だ。

私の体のキズはかなりあった。

200針以上は縫合しているだろう。

それを、こと細かくノートに記録していく。


看守も「あんたね~、手間がかかるわ。看守泣かせだね」

(そうか~、こっちもいい加減に終わって欲しいよ)


「彫り物は誰の?」

いちいちうるせえーババアだなー

「みりゃあ~わかるだろうが!!」少し爆発した。

看守も強い!

「分からないから聞いてるんだ!」


これだけ体を見られ、指名手配されたら特徴が賑やかになるだろうな。

しかし、パクられるとデーターが無ければ裸にされる。

仕方がないだろう。私は特徴が増えていたのだから・・・・

そんな事をしてると夕飯の時間だ。


房に連れていかれる。


ここは普通ではない・・・

上座が出入り口で,下座が奥だ。新入りの私は下座へ座る。

寝るのも下座だ。

何が下座だ!奥には便所があって、それを抱きながら寝ろって事だ。


夜中には人の頭の上をまたいで、露骨に用を足す。

寝ていられない。

しかし、慣れてくれば気にもならないのが人間だ。

みんなその環境に慣れるのだ。


朝起きて毛布をそれなりに畳むと看守が叫ぶ

「畳み方が違う!!やり直し!」

ババアー!!文句ばかり言いやがって!

警察によって畳み方が違うのだ。こんなもの全国共通にして欲しい。


朝になってマジマジと古株の顔を見た。

大したのはいない。

大人しいもんだ。

麦こそ入ってないが白米、薄い味噌汁にタクワン2切れ。

これが朝の献立だ。

古株の女も、私も食べるのは早い。

時間は10分ぐらいだろうか。

白米に味噌汁をかけ、それを噛まずに呑み込む様だ。

男が見たら100年の恋も冷めるだろう。


ゲップ、オナラは素知らぬ顔でする。

化粧を許されない場所での女はこんなものだ。


初めて入ってきた人間は最初はご飯を見て喉を通らない。

それを横から盗み食いするのは何処でも必ずいる。

禁止されているが、看守も人の子だ、見過ごしている。


雑談に花が咲く。

男の看守が新聞を持って、房のカギを開けドアも開け、体を半分入れて世間話をする。

見つかれば減俸か・・・

テレビなどでやってるのとは訳が違う。

あんなにガチガチではない。大袈裟だ。


皇居のお堀の下で、若い男とHをした年増のババアが、はとバスのガイドに通報されて連行されてきた。

慌てていたのだろう。

男のトランクスをはいている。

男は未成年だ。

色んなのが入ってくるのがこの代用監獄だ。


私は長期滞在になるな~


明日から取調べが待っている。

どんな担当刑事だ・・・・


やがてこの担当刑事が後々に、指名手配の私を追う派目になる。


そんなことも知らずに硬い毛布で眠りについた。