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2012-01-25 19:11:20

【連載開始】 流対協紹介●一般社団法人化に向けて

テーマ:『出版ニュース』コラム
出版流通対策協議会、流対協の方がなじみ深い(本誌ではこの間、流対協の発表した文書をほぼすべて、掲載していただいています)と思いますが、会ができたのが一九七九年一月、再販制度の堅持を中心に、様々な活動をしてきました。異議申し立てする団体として、この業界での存在感は日増しに大きくなっていると思います。現在、会員社数は九七社、一般社団法人化に向けて準備中ですが、これを機に、さらに飛躍していきたいものです。

ボクと流対協との歴史は、当時勤めていた会社(営業と編集を両方経験)が流対協へ入会、翌九一年幹事になって、密接にかかわるようになり、九八年にその会社が不幸な事態に陥ってしまったのを契機に退職、事務局長を引き受けて一三年、現在に至ります。

三二年間の主な活動を振り返ってみると、再販制度の堅持、ISBN導入反対(詳細は『出版流通合理化構想の検証-ISBN導入の歴史的意義』湯浅俊彦・ポット出版刊・二〇〇五年)、消費税定価訴訟(消費税導入時、公取委を訴えた裁判。一〇年近くに及び、最高裁まで争った)、個人情報保護法反対(「共同アピールの会」に参加)、オリコン訴訟支援(一三〇社を超える出版社が賛同)、グーグルブック検索和解(出版業界団体として孤軍奮闘、会員社、業界へオプトアウトを提案、会員外も含め九八社がオプトアウト。著作権者──『本の定価を考える-再販制はなぜ必要か』(流対協・新泉社発売・一九九二年)──としてもオプトアウト通達。詳細は『再販/グーグル問題と流対協』『グーグル日本上陸撃退記/出版社の権利と流対協』いずれも高須次郎・論創社刊・二〇一一年)……、最近では、東日本大震災返品処理交渉(取次に応分の負担を求める)。

また、日常的な活動として、取次との取引条件交渉(取次にとっては煙たい存在、会員社の利益をサポート。理不尽な条件改悪を阻む活動)、出版の自由を堅持する活動(連続セミナーなどの実施)、会員社への情報提供(デジタル対応、著作権、経理などのセミナー)、公正取引委員会、各省庁、各取次、各メディア、JPO、書協、日書連、出版労連、ペンクラブなどとのコンタクト。

月刊で「FAX新刊選」(巻頭で業界に発言。ブログ「こんな本があるんです、いま」にもアップ)を発行するとともに、書店、図書館のデータを独自に整備、会員社の営業をサポートする「FAX新刊選号外」「図書館共同DM」「図書館FAX」、新規店・閉店情報の共有化を実践してきました。

現在の課題は、電子書籍の再販適用(定価設定権を放棄することになるアマゾンとの取引に警鐘)、出版社の権利確立(「電子書籍の流通と利用の円滑化に関する検討会議」に意見提出)、出版の自由を脅かす相次ぐ児童ポルノ規制への対抗、再開されるグーグルブック検索裁判対応……、といったところでしょうか。

今年、世界を変えてしまった東日本大震災に伴う福島原発事故。それまで、反原発の本の多くは流対協の会員社が手がけてきました。事故後、書店に向けて原発・震災・災害本のリストを発信したのですが、いちばん出版点数の多い七つ森書館が在庫を出荷してしまって三点しか乗せられなかったにもかかわらず、なんと二〇社七〇点ありました。原発問題ではその後も、数多くの新刊が会員社から出されています。

「○○○」というコラムを連載することになって、まずは事務局長からの挨拶でした。次回以降、幹事会のメンバーが、時々のテーマで「毒舌」(最近、もてはやされているようですが)をはかせていただきます。

●木下郁・事務局長

『出版ニュース』(2012年1月上中旬号)より転載

2011-12-28 16:48:34

出版界の浮沈をかけた年に

テーマ:ほんのひとこと
昨年は悲劇の年だった。そしてその悲劇に人災そのものである福島第一原発事故が加わり、最悪の事態になれば日本が壊滅しかねない瀬戸際まで行った。しかも事故は収束せず放射能は依然として放出を続け、放射能汚染による健康被害はこれから長期にわたって列島住民を苦しめるだろう。政府は事態を糊塗し、相も変わらず弥縫策と安心・安全の大本営発表を繰り返すばかりだ。官僚の自己保身の政策と、それを支持する政治家と提灯持ちのマスコミによって、われわれは孫子を含め遠からず健康を蝕まれてしまう。水俣病の全国化のようなものである。気がついたときはもう遅いのだ。原発は即時無条件に廃止すべきである。

震災では、出版物の震災返品が問題になった。出版社に被災書店の流失汚損書籍を全額卸値で引き取るようにとの取次協会の要請に、書協などは抵抗しなかったが、書協会員出版社でも不満がくすぶり、流対協にも相談がきた。流対協は、取次店も応分の負担すべきと反論していたからだ。公取委も乗り出し、取次店の身勝手なやり方を優越的地位の濫用として待ったをかけた。すったもんだのあげく、取次店が書店卸値で全額入帳することを決め、応分の負担をすることが明らかになったので、定価の半額で入帳することにした。流対協としても被災書店支援に依存はなく、公取委のガイドラインよりは緩和した条件とした。顛末は朝日新聞でも大きく報じられた。

今年も問題山積である。まず国立国会図書館によるオンライン資料収集制度化が今国会で関係法の改正を経て始まろうとしている。昨11年12月7日にオンライン収集制度化に関する説明会が国立国会図書館で開かれた。流対協は12月19日付けでこれへの意見募集に「オンライン資料収集制度化についての意見」(ブログに掲載)を提出しているので、詳しくはそちらを見てほしいが、問題は次の点にある。インターネット等により送受信されるネットワーク系電子出版物が無料での納本を義務づけられる。現行納本制度における代償金(定価の5掛け)制度を適用できないし、「生産費用」がタダ同然だからただで納品しなさいという。しかもコピーガードに相当するデジタル著作権管理(DRM:Digital Rights Management)を解除して納品しろという。「それらは解除しない限り利用に支障を来すため、館が収集するためには、情報の発信主体が送信に当たってDRMを解除して納入するように依頼することが必要」との理由だ。デジタル著作権管理が電子機器上のコンテンツ(映画や音楽、小説など)の無制限な利用を防ぐための技術である以上、DRMを解除して納入すれば、国会図書館による無制限な利用が技術的には可能となる。他の製造業で言えば金型そのもの、開発したソフトそのもの寄こせといわれているに等しい。馬鹿も休み休み言えとはこのことか?

電子納本が実現すれば紙の書籍のデジタル化と相まって、長尾構想にあるように国会図書館から公立図書館などだけでなく、各家庭へのオンラインサービスも可能となろう。次に触れる「電子書籍の流通と利用の円滑化に関する検討会議」では、各家庭までの送信を目標に「第一段階として」国会図書館のデジタル資料を公立図書館等でプリントアウトできることが認められ、法改正が行われることになった。検討会議の取りまとめ案ではそうなっていなかったのが政治家の関与でひっくり返ったという話だ。「意見の一致が見られた」とあるのは、出版社側委員も同意したということか? とんでもない話だ。

第二に、出版者の権利の問題である。昨年12月21日に、文化庁の前記「検討会議」(第14回)で最終報告案が提出され、了承された。それによると、「出版者への権利付与」は、検討が不十分とされ、権利付与のための法改正を具体的に審議する文化審議会へは直接送られず、改めて文化庁の下で、「新たに専門的な検討を行うための場を設置するなど、文化庁が主体的に取組を実施する」ことになった。

この間、最悪でも出版者への権利付与が必要論、不要論の両論併記で文化審議会に送られると踏んでいた書協の自信は、13回検討会議で覆された。「『出版者への権利付与に関する事項』に関する議論の整理(案)」は「本検討事項については、前述のように、権利付与を積極的に肯定する意見とともに、一定の検証や代替え措置の可能性などについて十分に検討を行うべきであるといった種々の意見が示されており、当該権利付与をめぐる状況等の整理においては一定程度の進捗が見られたものの、権利付与の可否について一定の方向性が明確に示されるまでには至っていないものと考えられる」と権利付与の見送りで結論をまとめた。これに驚いた書協首脳が文化庁の吉田次官らに面会、要望したことで、かろうじて延長戦に持ち込んだが、確固とした見通しがあるわけではない。

流対協は昨年8月22日付けで検討会議宛に著作隣接権の付与を内容とする要望書(本誌11年10月号に掲載)を提出した。書協も同年7月の検討会議に「出版者への権利付与に関して」という資料を提出していたが、設定出版権には触れず著作隣接権も明確にしていない点、必要性の論拠など不十分と見なされたようだ。法律論を述べる場ではないとして法律論を意識的に避け、関係業界との議論を避けたことも、法改正の必要性の理由に乏しいとみなされたようだ。吉田次官が『出版ニュース』の連載で、議論の方向性を提起していたのに、これへの吟味もなかった。出版者への権利付与の是非が出版界の浮沈のかかった問題であることを認識して、一丸となって早急に対策をとる必要がある。これらの点は、暮れに会員社の論創社から刊行してもらった『グーグル日本上陸撃退記-出版社の権利と流対協』を参照していただければと思う。

紙幅が尽きた。秘密保全法の国会上程も今年はある。尖閣・公安テロ情報・原発問題などへの対策で、国民に知らせたくない情報を「漏洩」した者は厳罰に処するという。これでは国民の知る権利はどうなるのだ。これは廃案にさせるしかない。何とも出版界には厳しい年となりそうだ。

●高須次郎緑風出版/流対協会長)

『FAX新刊選』 2012年1月・215号より
2011-12-20 17:49:34

国立国会図書館●オンライン収集制度化についての意見

テーマ:流対協から
12月19日、下記の意見書を国会図書館に送信しました。

────────────────────────────

オンライン収集制度化については、納本制度審議会答申(平成22年6月)そのものに反対であるので、改めて反対するとともに、答申に基づく法改正等を中止するよう求める。
 
答申ならびにオンライン収集制度化に反対する理

1 無料での納本は、「生産費用」を無視した暴論である

答申はオンライン資料の収集に当たって、無料での納本を義務づけている。現在の納本制度では、代償金が支払われるが、答申では「オンライン資料にはそもそも『印刷・製本』の工程、『作成部数』の概念が存在しない。また、『小売価格』に相当する額であるが、インターネット等において公衆に提示されている『価格』は当該資料の利用料としての『価格』であることを考慮すると、代償金の考え方を準用することは困難であると考える。また、オンライン資料の納入のための複製はデジタル複製であり、納入のための複製の費用も補償を要するほどの額にはならず、この点でも代償金の考え方を準用することは困難であると考える」とした。

納入のための送信費用等は払うが、代償金の主たる構成要素である「生産費用」はおしはかれないからタダで納入しろといっているのである。電子出版物を編集・制作するのがタダと考えるのは、単にその編集・制作工程を知らないからであろう。

一般の出版物は、出版者(社)の発意と決断、リスクに基づいて、編集者が原稿を依頼し、入稿した原稿を精読・整理し、推敲や書き直しを求めた上で、割り付けし、数回の校閲・校正を経て校了して、印刷・製本するものである。電子書籍は、この一般的な書籍の印刷・製本の工程に入る前の段階から分岐し、別の制作工程にはいるのである。原稿依頼から校了までに編集費や電子書籍化の制作費など多くの費用が投じられている。電子書籍製作用のソフトやシステムの導入・整備、そのための人員の配置、あるいは外注などの経費がかかるのは当然である。印刷製本費がかかっていないから、原稿があれば即タダで電子書籍ができると思っているような審議会答申は、不勉強としかいえまい。

2 オンライン出版物の代償金の制度の検討が必要である

答申は「インターネット等において公衆に提示されている『価格』は当該資料の利用料としての『価格』であることを考慮すると代償金の考え方を準用することは困難であると考える。」という。現在、出版社は定価の5掛けで新刊を国会図書館に納本している。代償金の考え方から国会図書館側は厳密にそうした掛け率を算出しているのであろうか。電子書籍についてもその定価の5掛けで代償金を払う程度の答申もできるはずだ。代償金の考え方を準用できないというのなら、オンライン出版物の代償金の制度を整備すればすむことであろう。

紙の書籍についても国によっては、反復利用を前提にする図書館は、定価以上の価格で購入している例もある。電子納本は、1冊の紙の本を昔なら紙型ごと、今ならデータ付きで納品するような内容となっている。そんなことをタダで納品する出版社があるとは思えない。データ付きの本を売るとすれば何百倍、何千倍と高くなる。

3「収集」が目的であれば、DRMの解除は不要である

答申によると、オンライン出版物の収集については「情報の発信主体による送信」(オンライン資料収集運用想定資料によると、サーバーへの送信と指定する記録媒体(DVD)での郵送がある)と「収集主体による自動収集」があり、前者を主として行うことになっている。「情報の発信主体による送信」による場合、「出版物の同一性を保持するためは、出版時のフォーマットで、「情報の発信主体から送信してもらうことが重要と考えられる」。この場合、「デジタル著作権管理(DRM:Digital Rights Management)がフォーマットに組み込まれていることが多い。それらは解除しない限り利用に支障を来すため、館が収集するためには、情報の発信主体が送信に当たってDRMを解除して納入するように依頼することが必要である」という。デジタル著作権管理が電子機器上のコンテンツ(映画や音楽、小説など)の無制限な利用を防ぐための技術である以上、DRMを解除して納入すれば、国会図書館による無制限な利用が技術的には可能となる。これはオンライン出版物の「利用」に重きを置いた文言であって、「収集」が第一の目的であれば、DRMの解除は不要であろう。他の製造業で言えば金型そのもの、開発したソフトそのもの無料で提供せよといわれているに等しい。タダで「ハイ、分かりました」と納品する馬鹿はいまい。利用を限定するの、セキュリティには万全を期するといわれても、長尾構想による利用の拡大や公安テロ情報等の漏洩問題をもちだすまでもなく、漏洩による損害補償の考慮を前提にしておらず、およそ信用できない。「収集主体による自動収集」にも、これでは同意できない。

4 現行制度でも不満が残っている利用による損失補償を要しないという結論に反対である

国会図書館の「利用による経済的損失についてであるが、有体物の図書館資料の利用形態である閲覧、複写、図書館間貸出においては経済的損失の補償は不要とされており、収集したオンライン資料の利用にあたって、第7章で想定する利用形態(紙の出版物と同様の利用形態)である限りにおいては、有体物の場合と同様に、補償を要しないと考えられる」としている。(4)は、館内提供で、館内閲覧、プリントアウトが想定されている。

答申は、館内閲覧、プリントアウトに限定して、利用による出版社の経済損失の有無を科学的に算出したわけではない。これまで、図書館における紙の出版物の利用や貸し出しが無料であることについては法律で許されてきたが、著作権者や出版社側から強い不満があり、貸与料などを支払うべきとの要求がある。こうした観点から、紙の出版物と同様の利用であるから、補償を要しないという結論に反対である。

5 図書館資料としての利用形態を超える利用が想定されている答申にもとづくオンライン資 料収集制度化に反対である

答申では「通常の図書館資料としての利用形態を超える利用は、図書館資料に係る著作権の権利制限を超える利用形態が考えられる。資料の全体の複写、オンライン形態での都道府県立図書館等での利用、インターネット配信、館と協力を行う非営利法人等の団体での利用等が想定されるところである。これらいずれの利用にあっても著作権法上の権利制限を超えるため、実施に当たっては契約に基づいて実施することになる。併せて、契約相手たる権利者が不明な場合(いわゆる孤児作品)の処理の仕組みも検討されるべきである」。これは長尾真館長のいわゆる「長尾構想」をそのものといえるもので、さまざまな利用の拡大が考えられている。出版社にデジタルネットワーク社会に応じた出版者の権利が与えられていない現状で、このような想定に基づくオンライン資料収集制度化に反対する。
2011-12-20 17:47:05

「秘密保全法案」に反対する

テーマ:流対協から
本日、下記の声明を発表しました。

──────────────────────

政府は10月6日に、外交・治安などに関する国家機密を公務員が漏洩した場合の罰則強化を柱とする「秘密保全法案」を、来年1月の通常国会に提出する方針を決めた。これについて日本新聞協会は11月29日、国民の知る権利や取材・報道の自由を阻害する恐れがあるとして、法制化に反対する意見書を藤村官房長官に提出した。さらに日本雑誌協会も12月12日、法案に反対する声明を藤村官房長官に提出した。

この法案は、これまで何度も立案されては国民が何とか廃案に持ち込んできた「国家機密法」と呼ばれたものと、同じものである。ここ数年だけでも政府が情報を隠してきた中国漁船衝突ビデオや、公安警察のイスラム教徒敵視政策などが社会の明るみに出てきている。政府がこうした情報を隠し、報道することを処罰する意図が明白である。国防・外交・治安における「国家特別機密」を設けて、これを漏洩した公務員は、5年から10年の懲役刑に処するという危険な法律である。さらに情報を得ようと相手をそそのかす「教唆」も処罰対象にあげていて、通常の取材活動も罪に問われかねない。

現在でも国家公務員法の機密漏洩罪など国家機密を守る刑事規定は存在している。この上にさらに、機密規定の範囲や処罰対象を政府は広げようとしている。公務員が処罰を恐れ、メディアの取材に応じにくくしているのである。「秘密保全法案」は、報道・出版の自由を制約し、国民の知る権利を侵害する危険な法律であり、断固反対するものである。

2011年12月20日
2011-12-02 13:22:17

電子書籍にも再販適用を──アマゾンには主導権、渡さない

テーマ:ほんのひとこと
紙の本は再販制で全国一律の定価販売が維持されているが、電子書籍には再販制は適用されない……という考え方が一般的に広まっている。同時に電子書籍は紙の本より安くて当然だ、という考え方も広まっている。出版関係者の間でも、である。私たちはこのどちらにも与する考えはない。

電子書籍と再販制については、公正取引委員会がホームページの「よくある質問コーナー〈独占禁止法関係〉」に、次の項目があり、それが電子書籍は再販制の対象とならない根拠とされている。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――
Q14 電子書籍は、著作物再販適用除外制度の対象となりますか。

A.著作物再販適用除外制度は、昭和28年の独占禁止法改正により導入された制度ですが、制度導入当時の書籍、雑誌、新聞及びレコード盤の定価販売の慣行を追認する趣旨で導入されたものです。そして、その後、音楽用テープ及び音楽用CDについては、レコード盤とその機能・効用が同一であることからレコード盤に準ずるものとして取り扱い、これら6品目に限定して著作物再販適用除外制度の対象とすることとしているところです。

また、著作物再販適用除外制度は、独占禁止法の規定上、「物」を対象としています。一方、ネットワークを通じて配信される電子書籍は、「物」ではなく、情報として流通します。

したがって、電子書籍は、著作物再販適用除外制度の対象とはなりません。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

前段では従来の「レコード盤」と「機能・効用が同じ」という根拠で「音楽用テープ・音楽用CD」も再販制の対象だとしながら、電子書籍については紙の書籍と「機能・効用が同じ」という点は無視して、「物」でなく情報だから「再販」対象外という根拠だ。「物」がメーカーから販売業者にそして消費者に「再販売」されないから対象外、というわけだ。

公取はそう言うが、これは論議の余地がある。果たして「ネットワークを通じて配信される電子書籍」は情報であって「物」ではない、と言い切れるのか。この点はさらに法的にも検討したい。

また「機能・効用が同じ」という点を無視していることにも、異議を唱えたい。テープであれ、CDであれ「機能・効用が同じ」と言ったって、従来のレコードプレーヤーで聞けるわけではない。テープレコーダーでありCDプレーヤーであり、とメディアは変わる。それでも音楽の場合は「機能・効用が同じ」というのに、なぜ紙で読むか画面で読むかが異なるだけの書籍の場合は「機能・効用が同じ」が考慮されないのか。おおいに不満だ。

結局、書籍の再販制が、独占禁止法の適用除外として成り立っており、公取はそれを“自由競争による消費者利益の保護”に対する“邪魔者”としてしか見ていない。前掲のQ&Aにあるように再販制は「定価販売の慣行を追認」しただけで、文化の観点からの積極的な視点はない。再販制の根拠を独禁法でなく、“多様な出版文化を提供することで国民の利益を守る”ことに置く文化系の法律によるものに変える運動を、本気で考える必要があるのではないかと思う。

ともあれ、電子書籍の価格は、公取の「再販制の対象外」という見解はあっても、現在は委託販売の形で、実質的に版元が価格を決定している。ところがここに来て、それを揺るがす事態が現実の問題になってきた。アマゾンのキンドル日本進出だ。

10月下旬、そのための、出版社との契約交渉の報道が相次いだ。

アマゾンが示した「KINDLE電子書籍配信契約」の骨子は、以下のようなものだという(「BLOGOS」10月29日●http://blogos.com/article/23880/)。
 
1 すべての新刊を電子化してアマゾンに提供すること。
2 出版社がそうしないときはアマゾンが電子化することを許諾すること。
3 アマゾンの推奨フォーマットでは、売り上げの55%、それ以外のフォーマットは売り上げの60%をアマゾンに。
4 既刊書籍についても、商業的合理的努力を尽くすこと。
5 書籍より価格を低くすること。
6 出版社が著作権を保有すること。

いったん契約を結べば、全書籍についてアマゾンが電子化することを許諾することになることや、売上の55%以上をアマゾンがとること、さらに、著作者との権利関係は出版社サイドで解決されていることを前提とすることなど、どう見ても問題満載で、国内130社にこの条件を提示したというが、当然のことながら、交渉は難航しているようだ。

アマゾンの電子書籍配信では、版元が価格を決定するというこれまでの原則は通用しない。改めて、電子書籍も再販制が適用されるべきだという主張を掲げていきたい。

価格決定の問題だけでなく、電子書籍の流通にともなう、出版社側が未整理の問題を、アマゾンの契約は(アマゾンに圧倒的に有利な条件で)突きつけている。

 ・電子書籍化するかしないかは出版社が決める。
 ・電子書籍も再販商品であるべきだし、いずれにしても価格は出版社が決める。
 ・電子データは出版社が保持する。
 ・電子書籍化に関する権利関係を著者との出版契約で明確にする。

ということを念頭に、電子書籍の配信には慎重にあたるべきだと思っている。そして、著作権については、出版についても「著作隣接権」を獲得し、出版社の権利を明確にする方向で論議を進めるべきだ。

現在まで、アマゾンと交渉があったとされる、大手・中堅出版社がよもや上記のようなアマゾンの提示条件を鵜のみにするとは思えないが、今後の電子書籍配信全体に、そして出版社の存在そのものに大きな影響を与える問題として、慎重な対応を望みたい。

●水野久(晩成書房 /流対協副会長)

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