ryuutai
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2009-12-28 21:38:18

今年はたいへんな年になる予感

テーマ:ほんのひとこと

新年くらい楽しい話しがいいに決まっているのに、出版業界はあまりいい話がない。昨年はGoogle・ショックにはじまり、グーグルに暮れた1年だった。今年もますます危機は進行し、混迷の度を深めるだろう。

まず、流通面での予測しがたい変化の可能性がある。その渦の中心にいるのが大日本印刷(DNP)である。最近のニュースにTRCが帳合をトーハンから日販に切り替えたというのがある。DNPは、TRC、丸善、ジュンク堂、文教堂、ブックオフを子会社化ないし系列に組み込んでいる。このDNPグループの売り上げは丸善(2位、969億=09年)、ジュンク堂(5位、422億=09年1月)、ブックオフ(5位、406億)、TRC(324億=09年3月)、これに文教堂(4位、463億=09年8月)を加えると2584億円に達する。新古書のブックオフを外して計算しても出版物売り上げの10%以上となる。

このグループの対取次、対図書館などを含めた営業政策が、流通に強いインパクトを与えていくことは必至である。トーハン、紀伊國屋書店、凸版などがこれにどう対応していくのか。業界地図がドラスチックに変化する可能性がある。ICタグ問題の行方もここの動向に影響されよう。気がついたら他業界の影響下に入っていたなどとならないように望みたい。

Googleブック検索和解問題は、和解対象が英語圏4カ国に絞られ、日本も対象外になったことで、出版社はほっとしているようだ。しかし、これは和解案が決まりやすくなったということで、今年前半には和解案は承認されよう。米国内でも孤児作品の扱いに依然反発があるし、スニペット表示もそのままで、問題は振り出しに戻っただけだ。和解案が成立すると、これをモデルとして、日本での運用を迫る動きが強まろう。Googleはじめアマゾンその他による電子書籍ビジネスの対日攻勢が本格化するわけだ。

アマゾンのなか見検索やGoogleのパートナーズプログラムに参加している出版社は、出版コンテンツをすでにほとんどかれらにコピーされ抜き取られている。しかも無料でだ。電子書籍配信を迫られた拒否しにくい環境がすでに出来ている。そこでどのような価格設定がされるのか。はたして出版社の販売価格と卸価格の支配力を貫徹できるのか。これはきわめて危うい。全文検索は読者のために必要だ、電子書籍ビジネスの時代だ、などと舞い上がっていると、気がつけばしっかり絡めとられている。もうこれは、大阪城攻防戦でいえば内堀を埋め立てられたようなものだが、面白いのは当の出版社がそうした自覚もないということだ。落城は必至とみた方がいい。

Googleブック検索和解問題では、無断スキャニングによるデジタルデータの削除要請と無断スキャニングに対する損害賠償などの問題が依然残っている。流対協はGoogleに削除要請を行っているが、対応次第では損害賠償などを請求することになろう。先日、フランスで、出版社団体と著作権者団体がGoogleを訴えていた裁判で、原告が勝訴した。裁判も脅しも戦争もビジネスの内と考えるアメリカ企業と付き合うには、それなりの対応が必要なのだろう。

そして、Googleに対抗してということで構想されたらしい、国立国会図書館の長尾館長による電子図書館構想。これを実現するための日本書籍検索制度(ジャパン・ブック・サーチ)提言協議会が、松田正行弁護士を座長に文藝家協会と書協とでスタートした。4月頃に結論をだすという。流対協にも声をかけるといいながら、結局、4者だけで協議していくという閉鎖性も問題だ。入れてくれなければ問題点をはっきりさせておこう。

構想では、第三者機関の「電子出版物流通センター」(仮称)が国立国会図書館で電子化した書籍を無償でもらい、図書館への往復運賃数百円程度の利用料で利用者に配信し、著作権者や出版社に利益を分配していくものらしい。ここにはもう取次店も書店もない。しかも納本制度で安く入手した本を、著作権法の改正で著作権者の許諾なく電子化できることになった国会図書館が税金で電子化し、「電子出版物流通センター」はそれをタダで仕入れ、本の原価とは関係ない根付けで売るという話だ。これでは紙の本は大打撃だし、他のデジタル書籍も対抗できまい。出版社も立ち行かなくなる危険がある。官による民業圧迫の典型だ。Googleよりひどいのではないか。

もともと電子図書館構想の本来の目的である本のデジタル・アーカイブは、出版社や書店の商売を阻害しないように、調整しながら進められるべきである。それは、後世への文書の保存と利用という公共目的で行われるもので、とくにその利用は現存する出版活動を阻害したりすべきではない。出版社が絶版書や著作権保護期間が消滅している書籍を、復刊した場合は、アーカイブ利用は自粛されるべきである。

フランス前国立図書館長ジャン・ノエル・ジャンヌネー氏は、著作権保護期間中の書籍については、アーカイブの対象とすべきではなく、オンラインで提供するか伝統的な形で販売するかは「出版社が唯一の判断者」であり、デジタル化の中で「文化的な役割を担う伝統的な書店を守り後押しすることも、重要な要素となる」と指摘している(『Googleとの闘い』岩波書店)。

また、そもそもデジタル・アーカイブは、長期的な保存に有効かという議論もある。デジタル媒体の寿命は数十年と短いという。出版界は、紙を酸性紙から中性紙にかえることで、数百年の保存に耐えられるようにした。国会図書館は、分館をもっと建てて1点1冊ではなく10冊くらい新刊を購入したらどうなのか。年間10億もかかるまい。

ともあれ否が応でもデジタル化の波は急速に広がる。紙なのか電子化するのかは、出版社側で価格を含め判断していくべきだ。流対協としても出版社主導のデジタル化を今年は進めるつもりだ。それにしても、Google対応といい、ジャパン・ブック・サーチといい最近の書協さんは何をお考えなのだろうか?

高須次郎緑風出版 /流対協会長 )


『FAX新刊選』 2010年1月・191号より

2009-12-15 19:21:10

グーグル問題の1年の中で

テーマ:ほんのひとこと

2009年は、今後、書籍のデジタル化問題を語る上で「グーグル和解問題の、あの年」として、忘れられない年になるんだろう。本当に、この1年はグーグル和解問題に振り回され続けた。

世界中を巻き込んだグーグル和解は、11月13日、修正案がニューヨーク連邦地裁に提出された。修正された和解案では適用範囲が限定され、米著作権局に登録された絶版書籍 、または英国、オーストラリア、カナダで出版された絶版書籍にのみ適用されることとされたため、これで日本の書籍については適用範囲外になったため、今回のグーグル和解案に拘束されることはなくなった。

11月16日の流対協声明のように、これはフランス・ドイツ政府の反対や、我々流対協を含めた反対運動の成果と言えよう。ただし、この「成果」は、話を振りだしに戻しただけで、何かよい方向へ進んだということではない。

適用範囲は限定されたが、和解案がグーグルが違法に行った無断スキャニングを免罪するものであることに変わりはなく、グーグルの関係者は、「最初の和解案の中核をなす恩恵を維持している」し「世界中の書籍へのアクセスを増やしていくという当社の積年の使命を実現するため、各国の著作権者とともに取り組みを続ける」としている(「Google Books」担当エンジニアリングディレクターのDan Clancy氏)。

和解の適用範囲に関わらず、グーグルは違法な無断スキャニングを行いデータベース化してきたし、これからもし続けるだろう。それを合法と認めさせられることはとりあえず避けられたが、あくまで「何も取り決めがない放置状態のまま」でしかない。11月16日の声明の通り、我々は、グーグルに(1)違法にスキャニングされた日本の書籍について、すべてのデータベースからの速やかな削除、(2)修正案適用範囲外書籍の作業の即刻中止と、これまで違法行為を行った書籍についての報告、そして被害の原状回復を求めていきたい。

この1年のグーグル和解問題への対応の中で、我々が取り組んでいかなくてはならないことが2つ、はっきりした。

ひとつは出版者の権利の問題。音楽や映像の分野と違って、出版には著作隣接権が認められていない。出版者の権利が定かでない現状は、今回のグーグル和解問題への対応でも、出版者が権利者としてしっかり判断し行動することを妨げた。著作権に対する意識・関心の高まりに呼応して、フェアユースの問題にもますます関心が高まるだろう。デジタル化の流れは、これまで考えられなかったような書籍の利用法を生んでいくだろう。そんな中で、我々出版者の権利を確立していくことは急務だ。

もうひとつが、書籍のデジタル化の流れに主体的に対応できる態勢をとることだ。この40年ほどの中で、書籍の編集・製作現場は目まぐるしく変わってきた。40年前は主流だったグーテンベルグ以来の活版印刷は今や伝統工芸だし、その後の電動タイプ、写真植字による組版も1990年代にはコンピュータに主役の座を奪われた。パソコンの普及は著作者に入力技術者を兼務させ、編集者に組版技術者を兼務させた。そして21世紀に入ってのインターネットの広がりは、著作者が(書籍という印刷物にこだわらなければ)出版者を通さずに発信者となれる環境を作りだした。我々出版者の企画・編集力が落ちれば存在は難しいことは明らかだ。そして紙媒体の書籍というパッケージとともに、データのデジタル化と流通について主導できる力を出版社が持たなくてはやっていけなくなることも。

近く始まる流対協の、電子出版についての連続セミナーでよく学ぼうと思っている。



水野久晩成書房 /流対協副会長 )


『FAX新刊選』 2009年12月・190号より

2009-11-25 18:43:57

ネット書店等の価格表記を「定価」へ●要望書提出

テーマ:流対協から

本日、下記の要望書をトーハン、日販、大阪屋に手渡しました。

ここにはトーハン版をアップしてあります。

それぞれの違いは、代表者名と、トーハンでは「e-hon」としてあるところが、
日販では「本やタウン」、大阪屋では「本の問屋さん」となっています。


●要望書●


ネット書店等の価格表記を「定価」へ

                 
株式会社トーハン
代表取締役社長 山﨑厚男 殿

2009年11月25日


出版流通対策協議会
会長・高須次郎


謹啓 

日頃は、会員各社の出版物の販売にご尽力いただき、誠にありがとうございます。

貴社のサイト「e-hon」におきまして、再販商品が「税込価格」と表示されている件について、下記のとおり要望いたします。


○再販商品については「定価」と表記すること


再販制度を堅持していくためには、価格表記を業界で統一する必要があると思います。「出版物の価格表示等に関する自主基準」「同実施要項」には、「出版社が再販出版物に付する小売価格には『定価』を用いる」と明記されており、再販商品には「定価」表記がされています。

しかし、ネット書店(書店のサイトも同様)では現在、価格表記が「税込価格」「価格」「オンライン価格」「参考税込価格」「販売価格」「税込」などまちまちで、「定価」となっているところはほんの一部しかありません。

利用者(読者)は、書店店頭では該当商品が「定価」であることを確認できますが、ネット書店では該当商品が再販商品であるかどうか確認するすべがありません。現状のままでは、利用者(読者)に再販制度=定価販売について誤解を与えかねません。今後とも再販制度を堅持していくために、ネット書店、書店のサイトにおける価格表記を「定価」に統一すべきだと思います。

そこで、貴社のサイトでの表記を速やかに「定価」へ変更していただくとともに、貴社と取引のあるネット書店、書店のサイトへの適切なご指導を早急にお願いいたします。

ご指導の内容・結果につきましては、誠に勝手ながら、1か月以内に文書にて当会までご提出いただきたくお願い申し上げます。

謹白

2009-11-16 16:07:46

グーグルブック検索和解、修正案への見解(11月16日)

テーマ:Google和解

2009年11月16日


中小出版社99社で組織する出版流通対策協議会(略称・流対協)は、グーグルブック検索和解修正案について、現時点での見解を明らかにする。


1 グーグルブック検索和解修正案が米国ほか英語圏4か国に限定され、日本も和解対象から除 外され、当面影響を受けなくなったことは、われわれ流対協を含めた反対運動の成果といえ る。


2 しかし、本修正案が、そもそも違法なスキャニングを認めた上で成り立っており、一国の 国内法をもって、国際的に著作権者、出版者(社)の不利益を強制しようとするものに変わ りはなく、とうてい容認できない。


以下の項目について、グーグルは、真摯に対応することを求める。


1 これまで違法にスキャニングした日本の書籍については、そのすべてをデータベースから 速やかに削除すること


2 修正案適用範囲外書籍のスキャニング作業を即刻中止し、これまでの違法行為を行った書 籍についての報告を行うこと。


改めて、強調するが、著作権利用の原則は、形態・方式(アナログ・デジタル)を問わず、事前許諾が前提であり、著作権者・製作者・使用者の関係が対等・互助の関係でなければならない。
そのためにも、被害の原状回復を、われわれは、グーグルに強く要求する。


※14日午後(日本時間)に公表されたグーグルブック検索和解の修正案(「改定和解契約書」本文だけで173頁、補足がA~Nまで。そのNが6頁の「補足通知書」となっている)は、ニューヨーク連邦地裁で承認されたあと、正式な和解案となり、12月上旬に「発送される」とのこと。


2009-11-10 19:30:58

Googleブック検索和解、修正案

テーマ:事務局のつぶやき

Googleブック検索和解は修正を余儀なくされ、11月9日、修正和解案がNY連邦地裁に提出されることになった。世界から400を越す異議申し立てが殺到、独仏は政府が反対の意見書、米司法省が介入する事態となった。延期された公正公聴会が開催されたあと、裁判所の裁定が下ることになる

どういう修正がなされるか興味深いが、よりタチの悪いものになるのではという憶測しきり。米国が一丸となり、独仏には多少配慮しながらも、彼らの利害を押しつけてくるものになりはしないかと。となれば、日本政府はもう腰砕け状態になること必至

流対協は10月28日、「和解案修正に関する要請書」(ブログに掲載)を米国の和解当事者に送付、30日に記者会見。同時に、日本政府への働きかけを呼びかけるとともに、著作権・デジタル化をめぐって立ち上げられようとしている二つの協議会への参加意志を表明した

Googleの煽りを受けてデジタル化が急加速、図書館の蔵書をめぐって大日本印刷と凸版印刷、それぞれの両陣営の動きが活発になってきている。構想だけが一人歩きして、禍根を残さなければいいが。コンテンツを創り出せるのは出版社であり、Googleや印刷会社ではないということを声高に言い続けていかないと、出版社はただ振り回されるだけの存在になってしまう

この先、Kindle、iPhoneなどで本が読まれるようになり、紙の書籍は淘汰されていく、という見方については議論が分かれるだろう。とはいえ、コンテンツさえしっかりしていれば、形態は二の次、どうなろうとも生き残っていけるのではないか



木下 郁(流対協・事務局)

『FAX新刊選』 2009年11月・189号より

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