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アマゾンの「e託販売」のこと

アマゾンが最近、「e託販売」というものを各出版社にもちかけているらしい。小社にはないが、流対協関係の複数の出版社にアマゾンからの働きかけがあったようだ。

アマゾンの提案する「e託販売」というのは、アマゾン自身の説明によれば、「出版社様の書籍をAmazon FC(倉庫)に最低一冊から委託在庫し、出版社様の販売チャンスを広げるサービス」ということのようである。このサービスを利用すると、アマゾンの「取り寄せ注文」が取次店からアマゾンに「入荷するまでのリードタイム」(現在は全出版社の平均で十一日ほどらしい)が多くの書籍で必要なくなり、ないしは短くなり──出版社との直接取引である以上、当然のことだが──、結果として「在庫なし」率が改善される、ということが強調されている。「委託在庫」という表現があるから、「常備寄託」に近いものなのかもしれない。具体的には、次のような条件が呈示されている──

一、アマゾンと各出版社は直接取引をする(取次店は通さない)。二、正味は六〇%。三、支払いは、月末締め翌々月末払い。四、納品運賃は出版社負担(「段ボール三〇箱分=一〇、五〇〇円」とあるがよくわからない)。五、返品運賃はアマゾン負担(これもよくわからない)。六、年会費が九、〇〇〇円。

以前から、アマゾンは一部の出版社と直接取引をしているらしいという噂がささやかれてはいたわけだが、今回、この「e託販売」が表面化したことで、アマゾンの狙いがよりはっきりしたといえるだろう。つまり、出版社との直接取引によって、四〇%のマージンを確保する。(再販制もあるわけなので)が、公取の反応をみつつ、いずれは様々な理由をつけて四〇%の範囲内で大小様々な値引を行い、日本の書籍販売業界内でのシェアの拡大にこれ努める、といったところではないだろうか。

再販制のもとであっても、出版社と書店が直接の取引をしてはならない、ということはないし、再販制に違反するというわけでもない。だから今後、アマゾンとのあいだで、この「e託販売」の契約を結ぶところがでてきてもおかしくはない。というよりもすでに一部の出版社とのあいだでは、この契約による取引がはじまっているらしい。

小社は再販制を堅持すべきだと考えているが、その場合の「再販制」というのは、法律の条文だけの問題ではなく、定価販売はもちろん、取次店制度、委託販売制、常備寄託等々といった戦後の数十年をかけて形成されてきた業界の制度・慣行の根幹部分の総体のことだと考えている(もちろん、この制度・慣行にもそれなりの問題は当然あり、それをただしてゆく努力は今後とも必要だが)。しかし今や、定価販売は各種のポイントカードに脅かされ、取次店制度はアマゾンによって「公然と」否定され、また、某取次店のトップは「新刊委託は制度疲労をおこしている」と発言している。公取による、「公式」の再販制見直しの危機は当面のところ去ったとはいえ、再販制がいわば「内側から」つきくずされつつあるように思うのは小生ひとりだけだろうか。

ところで、上記のような、アマゾンの「e託販売」の条件は、従来の取次店の条件に比して御世辞にもいいものとは言えない。だから、この契約が出版界にひろく普及するとはとても思えない。しかしかりに、アマゾンが(現状の六〇%ではなく)六五~七〇%程度の正味を打ち出してきた場合、いったいどうなるのだろうか。考えるだに恐ろしい。

●鈴木宏・出版流通対策協議会/経営委員会委員長水声社

出版ニュース』(2012年9月中旬号)より転載

日本出版者協議会(出版協)、誕生!

「流対協」が生まれ変わりました!
──新たな歴史を築きあげていくために──

言論、出版及び表現の自由の擁護
出版者の権利を確立
出版物の再販制度を堅持
出版物の公平・公正な流通確保

この4つの目的を掲げ、
一般社団法人日本出版者協議会
が10月1日に誕生しました!!

1979年に設立された流対協
2012年に一般社団法人として生まれ変わりました
30余年の歴史を継承
既存の出版社団体とはひと味違う活動を展開していきます

会員にはなれないが、出版協を応援したいという人たち、出版社、団体
これからの出版業界を担っていく人たち、
多くの声を集めるために、
賛助会員(詳細は近日中、出版協ブログで発表)を募ることにしました


●一般社団法人・日本出版者協議会(略称・出版協)
<旧・流対協>

〒113-0033
東京都文京区本郷3-31-1 盛和ビル40B
TEL:03-6279-7103/FAX:03-6279-7104
shuppankyo@neo.nifty.jp
http://shuppankyo.cocolog-nifty.com/

出版界を混乱させる怖れのある「『出版物に関する権利(著作隣接権)』について」

去る9月19日に書協などで構成する出版広報センターによる「『出版物に関する権利(著作隣接権)』について」の出版社向け説明会があった。これは、「印刷文化・電子文化の基盤整備に関する勉強会」(座長中川正春、以下中川勉強会と略す)が6月25日に公表した「中間まとめ」を踏まえ、9月4日に出した「出版物に係る権利(仮称)の法制化について」という文書に基づき、この間の経緯と「出版物に関する権利」について中川勉強会が考えている基本見解を説明したものといえる。

流対協はこの勉強会に参加したいと申し入れたが、断られたので内部での議論がどのようになっているかは知らない。したがって、結論について責任はとれない。しかも「出版物に係る権利(仮称)の法制化について」という文書(以下、勉強会案)は問題があるらしく、本日時点まで公表されていないので、原文を見ていない。

今回の説明会でのポイントは、出版物原版、出版者の規定である。

まず出版物原版を「原稿その他の原品又はこれに相当する物若しくは電磁的記録を文書若しくは図画又はこれらに相当する電磁的記録として出版するために必要な形態に編集したもの」と定義している。そして出版者とは「出版物等原版を作成した者」となっている。

4月25日に勉強会が公表した「『(仮)出版物に係る権利』試案」では、出版物原版を「出版物を、複製又は送信可能な情報として固定したものをいう」、中間まとめの「固定により生じた版またはデータファイルを『出版物原版』とする」となっていたのに比べると、「情報として固定」がとれて「必要な形態に編集したもの」となって、なにか曖昧な規定となった。また出版者とは「出版物の製作に発意と責任を有し、出版物原版を最初に固定した者をいう」と規定していたものから「発意と責任」「最初に固定した者」が取れてしまった。

流対協は、昨年8月の文科省の「『電子書籍の流通と利用の円滑化に関する検討会議』への要望」で明らかにしたとおり、「出版物は、頒布の目的を持って出版者の発意と責任において、編集、校正、制作し、文書又は図画としての著作物を最初に版に固定し(いわゆる原版)、発行(発売)されたもので、媒体を問われない。」

「出版者とは頒布の目的を持って発意と責任において、文書又は図画としての著作物を最初に版(いわゆる原版)に固定し、発行(発売)した者」と定義した。

中川勉強会案と違うところは、著作物を印刷媒体ならびに電子媒体を問わず最初に原版に固定したものを「出版物原版」とし、その行為をした者を出版者としたことである。これは現在のDTPを軸にした出版実務に即したものであり、デジタル時代に対応するものである。それはまた、発意と責任において最初に出版した出版者を保護すべきという、現行著作権法の出版権の趣旨に添うものであった。

ところが勉強会案は、単に「文書若しくは図画又はこれらに相当する電磁的記録として出版するために必要な形態に編集したもの」と定義するだけで、出版者が他に先駆けて経済的リスクを引き受けることを含め「出版者の発意と責任」で「最初に固定」することの出版者としての根源的重要性を無視している。しかも、印刷媒体での出版と電子媒体でのオンライン配信を別個のものとしてバラバラにしている。これらはいったい何を意味するのか?

当日配布資料の「『出版物に関する権利』についての基本的Q&A」の8は次のようになっている。

「ある出版物の版面を新たに組み直した場合、元の出版物に関する本権利は新版面に及ぶのでしょうか?」という設問に対するAは「及びません」。理由は「本権利は著作隣接権であり、著作権ではありません。レコードについて、既存のレコードの音と同じ音を作り固定した場合と同様、本権利の効力は当該原版についてのみ、及ぶものと想定されています」となっている。

著作権法で複製の定義は「印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的に再製すること」(著作権法第2条第1項第15号)となっていて、最高裁判例では「著作物の複製とは既存の著作物に依拠し、その内容及び形式を覚知させるに足りるものを再製することをいう」(作花文雄『詳解著作権法第4版』260頁)とある。「結果として同様の表現物を作成したとしても、既存の著作物に『依拠』していなければ、独自の著作物を創作したことになり、『複製』ではなく、また、『複製権』が及ばない」(同)という。

著作物を最初に固定して出版された出版物の版面を新たに組み直した場合、当該版面に依拠して再製したことになり、つまり複製に当たり、当該出版者の著作隣接権の複製権の侵害に当たると考えられる。この点を説明会で質問すると、このQ&Aの表現が微妙なことを認めつつ、著作権者からの許諾を下に当該著作物を新たに組み直せば、複製権の侵害にはならないとの趣旨の答があった。

新たに組み直したといっても、現実的には版面をスキャン(これは複製権侵害)し、校正して出版するわけだ。依拠して再製しているにすぎない。

この解釈は、文庫出版社が、われわれのような中小出版社の単行本を文庫化するのに都合の良い。しかし、新たに組み直せばいいということになると、四六版であろうがA5版であろうが、字詰め行数、書体を変えれば、否、全く同じでも良いということになる。著作権者が許諾すれば講談社版、小学館版、新潮社版、筑摩書房版などなど、同じ本が乱売されることも可能になる。著作権者は歓迎するとの解説だが、何のための出版者の権利なのだろうか? 出版契約書で独占契約にすればそのようなことは起きないとのことだが、それなら敢えて出版者の権利を法制化するまでもない。著作権法は、発意と責任において経済的リスクを負って最初に出版した出版者の権利を、海賊出版ばかりではなく競合出版から守るために制定されたのではないのか。

『出版ニュース』10月上旬号に、前文化庁次長の吉田大輔氏の「電子出版に対応した出版権の見直し案について」が掲載されている。 吉田氏は、中川勉強会案を批判的に検討し、出版権の電子出版への拡大の方が合理的と結論している。氏によれば、現行とほぼ同じ出版権制度は1934年に法制化されたが、「立法当時、無断出版や競合出版に対して先行出版者の利益をどのように確保するかという議論が高まっており、制度導入時の立法作業担当者も、その趣旨をどのような方法で実現するかについて様々な案を検討したようである」と指摘し、この観点から勉強会案を見ると「『出版物等原版』の同一性判断に関わるが、何をもって『独自の版やデータファイル』と解するかの判断は困難な場合がある。例えば、マンガ、イラスト、写真、美術などは、その性質上版面からは峻別が難しいと予想される」、「無断出版を行おうとする者が『独自の版やデータファイル』を作成した場合には著作隣接権は及ばず、主目的である海賊版対策の実行性が確保できないなどの反論が考えられる」という。勉強会案は、競合出版を促進し、海賊出版対策にもならないという結論である。吉田氏の拡大出版権の立場はとらないが、同感である。何でこんなことになってしまったのか?

勉強会案の問題点は、出版物として最初に固定した出版者の権利を守ろうというのではなく、出版者の権利を出版物に係る権利に置き換え、新たに組み直せば別の出版物原版となり、先行する出版物原版の権利が及ばないという理論構成をとったところにある。そこには電子出版の流通促進という名分を借りて、文庫化・電子化が簡単にできるという大手文庫出版社のエゴが垣間見える。しかしこれでは競合出版と海賊出版を野放しにして、出版物原版の真偽をめぐる裁判沙汰を蔓延させる可能性さえある。出版者の権利を著作隣接権として獲得する場合も、流対協案のように、最初に固定した出版者=原出版者(先行出版者)の利益を守り、有効な海賊版対策をすることは可能だ。ともあれ勉強会案では先行きが限りなく危うく怪しい。

           *  *  *

流対協の副会長などを歴任し、再販問題やISBN問題で活躍された高橋曻氏が去る8月9日に亡くなられた。月刊誌『技術と人間』で7年間お世話になり、いろいろと思い出がある。いま私が出版社をやっていられるのも高橋さんのおかげだ。ご冥福を祈りたい。

●高須次郎(緑風出版/流対協会長)

※『FAX新刊選』2012年10月・224号より

つながる力

出版業界には、志を同じくする出版社や出版傾向が似た出版社が集まって組織する団体がいくつかある。コモンズが参加しているのは、流対協に加えて、「アジアの本の会」と「平和の棚の会」だ。この二つは、基本的には営業担当者の集まりで、いかに本を売るかがおもな目的である。だが、それだけにはとどまらない特徴をもつ。

アジアの本の会(1994年結成、当初10社、現在16社)は、文字どおりアジアに関する本を発行している出版社で構成されている。毎年、全点リスト(今年は約2000点)、中規模書店を中心とした長期セット、大型書店でのフェアを行う。ただし、加入しているのは、単にアジアの本を発行するだけではなく、会の理念に共感する出版社だ。「アジアと日本の架け橋をめざして」という副題がついた全店リストの「はじめに」が、その精神を表している。

「わたしたちは『成長のアジア』だけではなく、『人びとのアジア』や『知られざるアジア』も積極的に紹介したいと考えて、多様なジャンルの書籍を創ってきました。それらをとおして、アジア各国と日本が本当の意味でゆたかに発展していけるような姿を提示し、民衆レベルでの交流を進めたいと願っています」

平和の棚の会(2008年結成、当初20社、現在18社)は、いまはなきジュンク堂書店新宿店に2007年に生まれた「反戦平和棚」がきっかけである。こうした棚を常設し、各書店に広げていきたいという考えから、スタートした。選書の基準は、ノルウェーの国際政治学者ヨハン・ガルトゥングの「積極的平和」という概念だ。平和とは、戦争や紛争がない状態だけを指すのではない。衣食住に不安がなく、人種や性別で差別されず、一人ひとりのいのちが脅かされない社会を意味している。

今年、書店に案内した「そうした平和の実現に向けた提案型フェア」は、次の5つのジャンルで、18社よりすぐりの90点を選んだ。①平和の哲学と歴史認識を問う本、②武力衝突と平和を考える本、③人間の尊厳を見つめる本、④差別と格差に向き合う本、⑤持続可能な環境と暮らし方を提案する本。

一方、流対協は①出版の自由の擁護、②出版者の権利確立、③再販制度の擁護、④公平・公正な流通の確保を目的とする組織である。一見すると、アジアの本の会や平和の棚の会とは、めざすところが違うと思われるかもしれない。しかし、自社の利害だけにとどまらず、社会的存在としての出版社のあり方を常に見つめ、少数派の意見も世に広く伝えようとする点では、共通していると言ってよい。

実はコモンズは、アジアの本の会と平和の棚の会には積極的に入ったが、流対協からは何度も入会を勧誘されたにもかかわらず、断っていた。それは、活動に共感しつつも、なんとなく狭さを感じていたからだ。しかし、いざ入ってみるとそれは大きな誤解であることがわかった。とくに、幹事会で交わされる議論は勉強になるし、さまざまな情報はとりわけ後発出版社にとって有益である。実際、コモンズは流対協の活動をとおして、きわめて不公正な取次との取引条件を一部ではあるが改善するという成果を上げた。

流対協、アジアの本の会、平和の棚の会の3つに加盟しているのは3社だけだ。コモンズ以外は、われわれの仲間では大きな出版社で、担当者が異なる。ぼくだけが長く、すべてに出席してきた。どれも手を抜けないので、なかなかに忙しい。校了間際のときなど正直に言ってつらい。だが、しんどさを上回る意義と効果がある。小さな出版社がつながっていけば、そこそこの力をもっていけるのだ。

大江正章・出版流通対策協議会/取引委員会委員長コモンズ

出版ニュース(2012年7月中旬号)より転載

一般社団法人日本出版者協議会(略称/出版協)●設立記念セミナー

一般社団法人日本出版者協議会(略称/出版協)●設立記念セミナー

▼デジタル対応セミナー

Amazon、Google、Apple、楽天Kobo、緊デジ、国会図書館……
Kindle上陸を控え、電子書籍の動きが賑やかになってきていますが、
あくまでも、出版社自らの手で、コントロールしていきたいデジタル化

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          「電子書籍の出版契約」を考える
      
      ──アマゾン契約を素材とした批判と創造──

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電子書籍を販売するサイトが出揃ってきました。
取引を開始するときには当然、契約書を交わすことになるのですが、
出版社主導ではなく、販売サイトのペースで進められているのが現状です。
価格決定権を出版社が握り、紙の本に悪影響を与えないようにするには?

日本ユニ著作権センター相談室長で弁護士の北村行夫氏を再度招いて、
Amazonなどの電子書店との契約について、出版社に必要不可欠なことは何か、
各社が独自の契約書を準備できるよう、さらに掘り下げて勉強したいと思います。

「日本の出版はいま大きな分岐点に立っている。
電子書籍販売をめぐってアマゾンが提示した契約案は、
日本の出版社の存在意義を揺るがす重要な視点を浮かび上がらせた。
"出版とは何か? 出版「者」であることの要件とは!?"
長年にわたり日本の著作権と出版を見続けてきた著者が、
無自覚な出版界に警鐘を鳴らす!
アマゾン契約の検討を通し、
日本の出版者と電子書店との契約のあり方を今一度考えるための基礎文献。
対電子書籍販売サイト契約書雛型付き」
『アマゾン契約と電子書籍の課題』(北村行夫・著/太田出版)

●日時10月5日(金)18時30分から
●場所/文京シビックセンター 5F・会議室C(定員70人)
●講師/北村行夫氏
(弁護士/虎ノ門総合法律事務所所長/日本ユニ著作権センター著作権相談室長)

●参加費/1,000円
(会員外2,000円)


●申込先/出版協事務局
shuppankyo@neo.nifty.jp
(出版社名、連絡先、出席者名をご連絡ください)

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