2012-10-24 18:39:35

アマゾンの「e託販売」のこと

テーマ:『出版ニュース』コラム
アマゾンが最近、「e託販売」というものを各出版社にもちかけているらしい。小社にはないが、流対協関係の複数の出版社にアマゾンからの働きかけがあったようだ。

アマゾンの提案する「e託販売」というのは、アマゾン自身の説明によれば、「出版社様の書籍をAmazon FC(倉庫)に最低一冊から委託在庫し、出版社様の販売チャンスを広げるサービス」ということのようである。このサービスを利用すると、アマゾンの「取り寄せ注文」が取次店からアマゾンに「入荷するまでのリードタイム」(現在は全出版社の平均で十一日ほどらしい)が多くの書籍で必要なくなり、ないしは短くなり──出版社との直接取引である以上、当然のことだが──、結果として「在庫なし」率が改善される、ということが強調されている。「委託在庫」という表現があるから、「常備寄託」に近いものなのかもしれない。具体的には、次のような条件が呈示されている──

一、アマゾンと各出版社は直接取引をする(取次店は通さない)。二、正味は六〇%。三、支払いは、月末締め翌々月末払い。四、納品運賃は出版社負担(「段ボール三〇箱分=一〇、五〇〇円」とあるがよくわからない)。五、返品運賃はアマゾン負担(これもよくわからない)。六、年会費が九、〇〇〇円。

以前から、アマゾンは一部の出版社と直接取引をしているらしいという噂がささやかれてはいたわけだが、今回、この「e託販売」が表面化したことで、アマゾンの狙いがよりはっきりしたといえるだろう。つまり、出版社との直接取引によって、四〇%のマージンを確保する。(再販制もあるわけなので)が、公取の反応をみつつ、いずれは様々な理由をつけて四〇%の範囲内で大小様々な値引を行い、日本の書籍販売業界内でのシェアの拡大にこれ努める、といったところではないだろうか。

再販制のもとであっても、出版社と書店が直接の取引をしてはならない、ということはないし、再販制に違反するというわけでもない。だから今後、アマゾンとのあいだで、この「e託販売」の契約を結ぶところがでてきてもおかしくはない。というよりもすでに一部の出版社とのあいだでは、この契約による取引がはじまっているらしい。

小社は再販制を堅持すべきだと考えているが、その場合の「再販制」というのは、法律の条文だけの問題ではなく、定価販売はもちろん、取次店制度、委託販売制、常備寄託等々といった戦後の数十年をかけて形成されてきた業界の制度・慣行の根幹部分の総体のことだと考えている(もちろん、この制度・慣行にもそれなりの問題は当然あり、それをただしてゆく努力は今後とも必要だが)。しかし今や、定価販売は各種のポイントカードに脅かされ、取次店制度はアマゾンによって「公然と」否定され、また、某取次店のトップは「新刊委託は制度疲労をおこしている」と発言している。公取による、「公式」の再販制見直しの危機は当面のところ去ったとはいえ、再販制がいわば「内側から」つきくずされつつあるように思うのは小生ひとりだけだろうか。

ところで、上記のような、アマゾンの「e託販売」の条件は、従来の取次店の条件に比して御世辞にもいいものとは言えない。だから、この契約が出版界にひろく普及するとはとても思えない。しかしかりに、アマゾンが(現状の六〇%ではなく)六五~七〇%程度の正味を打ち出してきた場合、いったいどうなるのだろうか。考えるだに恐ろしい。

●鈴木宏・出版流通対策協議会/経営委員会委員長水声社

出版ニュース』(2012年9月中旬号)より転載

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