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またまた、よそ様から抜いてきました。
面白いですね。
 
e)多彩な事業ポートフォリオ
伝統的に日本は長子相続制と家督主義があり、富は集中して長子が相続しそれ
によって家業が安定的に継承されることが社会的に極めて重要でした。一方中
国の伝統的な相続制度は均分相続制すなわち、遺産は子全員に均等に配分され
ます。これは血縁主義に根差すもので、血縁を絶やさぬための手段と言えまし
ょう。
 
事業を絶やさぬ為に長子相続制を執った日本と富と血縁の継続が大事であって
事業そのものではないという中国の対比が浮かび上がってきます。事業ポート
フォリオが多彩で脈絡がないという性向は多くの華人企業に見られる特徴と言
われますが、この富と血縁の継続を最優先とする中国人の伝統的価値観に基づ
けば関連性のない多彩な事業ポートフォリオを持つことで、産業構造の変化や
一族で経営能力の低い者が例えグループ内の1企業を破綻させても「残りの血
族=企業は強かに生き残る」という彼らにとっての合理性が担保されるのです。
 
f)短期投資回収
一般的に投資回収は3年、それで回収できないとビジネスではない、とよく華
人経営では言われることがあります。歴史的に不安定かつ弱者として置かれた
海外華僑の環境から長期的な事業継承が出来ないことを想定しサービス、軽工
業加工製造業を中心に身軽な投資をして短期間回収を常識にしている、という
研究論文があります。
 
この点について台湾統一企業集団総裁の高清愿はある雑誌インタビューに対し、
「欧米にも優れた企業があるが、統一グループが日本企業と組むケースが多い
のは経営に対する時間軸が似ているからだ。経営ノウハウがあっても新天地で
事業を軌道に乗せるのにはある程度の時間が必要。しかし、欧米企業は株主を
意識して短期間で成果を求めてくるし、経営者も短期間で代わってしまう事が
多いが日本はそれほどでもない。だから経営者同士の長年の信頼感から新しい
事業も生まれてくる。」 と語っており、一般的に言われている、「華人経営の
投資は短期間回収を常識としている。」からは一線を画していると言えるでし
ょう。
 
g)人間関係管理への傾注
日本、中国、台湾の企業で働く管理職の管理スキルの発揮パターンとビジネス・
プロセスとの関係について比較検討した研究論文があります。それによると、4
つのビジネス局面に対応したビジネススキルをサンプル調査にて因子分析し対
応させ(①問題発見と戦略決定プロセス→事業革新スキル、②問題解決へ向け
た人的資源の組織化・動員プロセス→集団効果性スキル、③問題解決局面の過
程から生ずる集団内葛藤や人間関係軋轢の調整(人間関係管理)プロセス→対
人管理スキル、④成果達成プロセス→成果形成スキル)、日本・中国・台湾の
管理職が日常業務においてそれぞれのスキルをどの程度の頻度で活用している
かを比較しました。
 
その結果、台湾・中国の管理職は対人管理スキルを多用する一方事業革新スキ
ルはあまり積極的に使っていな一方で日本の管理職は他のスキルに比べて事業
革新と集団効果性スキルをより頻繁に活用していることが判明しています。ま
た、特に台湾企業の管理職は組織化のスキル(チームワーク)を重視する、と
いう結果が出ました。日本人・華人の管理スキルが相互補完関係を示しており、
特に台湾人の管理職が中国のそれと比べチームワークを重視する点において日
本的職業価値との親和性が非常に高いと言えるでしょう。
 
統一企業集団総裁の高清愿自身も人間関係管理の重要性を説いており、「管理
職は部下がミスを犯した時はその部下と同じ心理状態と視点をイメージしミス
が発生した背景を把握した後、処分が必要な場合はその部下の尊厳を決して損
なってはならない。優秀なリーダーが行わねばならない事とは、ひとえに部下
との良質なコミュニケーションを通じ上司部下の相互が信頼しながら働ける環
境をつくる事である」と語っています。これは中国本土や香港の多くの経営者
とは一線を画した視点だと思います。