日本企業の技術競争力
 
日本企業と東南アジアの企業との技術競争力の差が、最近はどんどん減少してい
るとの言われておりますが、その理由を考える時、まず日本企業の強さと弱さを
歴史的な観点からみる必要があると思います。日本がGNPで世界第二位から第三
位になったとのことですが、国土・人口などを考えれば、戦後のゼロからスター
トし、僅かな期間の間にGNPで世界第二位になるなどと言うことは、今後の歴史
上にも二度と起こりえない奇跡と思われます。奇跡と言うことは、特殊な条件に
より本来の実力を超えた所に到達したと言うことであり、その特殊な条件が失わ
れる中で、日本は徐々に本来の場所に移動している状態にあると思われます。
 
奇跡の成長は、必ずや大きなメリットとデメリットを生んだはずであり、それを
検証しておく必要があるように思います。メリットとしては継続的に発生する巨
大な需要に応える為に、懸命に技術開発に取り組みましたので、その技術的な遺
産があり、また膨大な輸出による企業の体力的な蓄積があると思われます。ただ、
その遺産も最近は大分目減しているようです。
 
一方デメリットの方ですが、巨大な需要が長期にわたり継続する高度成長時代を
過ごしましたので、その間、企業はあえてリスクに挑戦しなくても、大きな需要
に応えるだけで仕事は潤沢にあり、営業的な努力(売るための努力や工夫)や、
経営的なセンスがシビア求められることもなく、ましてや海外に目を向ける必要
など皆無に近かった時間を長期に渡って過ごしました。その間、企業間の連携と
しては、仕事の融通的なものが主で、高度な技術開発の為の連携などは必要とさ
れなかったようです。
 
上記の結果として、状況が大きく変わった現在においても、日本の中小・ベンチ
ャー企業は従来の延長線上である自社による技術開発のみに集中しており、市場
開発への努力・経営的な力量が不足する中で、他社との協業も進めにくい状況に
あると思われます。そんな中小・ベンチャー企業が、不慣れな海外とのビジネス
を始めているわけですから、それが上手く無時に進むとしたら、それこそ奇跡と
思われます。
 
その?ような中小企業が技術競争力を得る為の方法は、下記のように思います。
a。売ること、売れることに着目した開発をすること(市場を認識した開発)
b。自社の技術を過信しないで、他社(海外を含む)の技術を謙虚に受け止め、
学ぶ姿勢をもつ
c。他社の良い技術と自社の強みを組み合わせて、技術競争力を拡大する
d。経営的な経験・センスが不足していることを自覚し、外部資源を活用する
 
上記を言葉で言うことは簡単ですが、体に染み込んだ成功体験を捨て、新たな取
り組みを進めることは想像以上にハードルが高く、そこに中小企業経営の苦悩の
原因があると思われますが、それを自力で乗り越えなければ未来は暗いでしょう。
 
ここで長年、国際的な技術移転、知財流通事業に携わっている知人からのコメ
ントを、ご参考意見をご紹介いたします。:
(私は、技術的価値を事業的価値に変換するプロセスを一層鍛えなくては、技術
から収益を絞り出すことは非常に難しいと思うのです。競争は相対的なものですか
ら、日本企業がいくら頑張っても、他の国の企業がもっと頑張れば、日本企業の
負けとなってしまうわけです。言語能力だけでなく、海外の人達のアグレッシブ
さ、しぶとさ、したたかさ、を見ていると、果たして日本は勝てるのだろうか、
と感じてしまいます。
 
技術開発は本来、最終的にビジネスに結び付け、そこから収益を得ることを目的
として行われるはずなのに、日本企業の多くは市場の存在、需要の内容を確認せ
ずに、技術開発を進めているのではないでしょうか。数ヶ月前に、途上国向けの
水浄化装置が全国紙に取り上げられておりました。おそらく政府援助のスキーム
の中でのことだと思いますが、アジアの途上国に何台かが売れたとのことでした。
インドでは同じようなものが現地では10分の1の値段で売られているとのことでした。
こんなことが起こっているのです。まさに、「井の中の蛙、大海を知らず」ですよね。
 
長いですが、興味深い内容でしたので
拝借して記載します