トヨタを脅かすヒュンダイの逆襲① | 中谷良子の落書き帳

中谷良子の落書き帳

核武装・スパイ防止法の実現を

★モノづくりや職人至上主義にとらわれず新しい業界標準をつくりつつある現代自動車がトヨタ、ホンダを猛烈に追い上げている★

サムスン電子ほど目立たないが、潜在的に日本の製造業の根幹を揺るがしかねない韓国企業がある。
韓国最大の財閥、現代(ヒュンダイ)自動車グループの現代自動車だ。

昨年の新車販売台数は660万台(傘下の起亜自動車を含む)で、米ゼネラル・モーターズ(GM)、独フォルクスワーゲン(VW)、トヨタ自動車、日産自動車・仏ルノーに次いで世界5強の一角を占めている。

一般の日本人の心の中では今も安かろう悪かろうのイメージのままだが、海外市場では優れた品質とコストパフォーマンスで日本勢のシェアを奪っている。

それだけではない。

日本が誇る生産システムでも、VWや日産ルノーと共に「トヨタ方式」に代わる世界標準への変化をリードしている。
その進化がピンとこないのには理由がある。

現代車は1985年のプラザ合意で急激な円高になった後の一時期は日本に輸入されたが、品質が悪くて売れずに撤退。

それ以降は日本に入っていないため、実際に最近の車を目にしたことがない。
だから海外でシェアを伸ばしたと聞いても、低価格やウォン安のせいとしか思わない。

大和証券キャピタル・マーケッツのあるアナリストも最近のリポートで、昨年実際に現代自動車を訪ねる前は

「技術的な面での蓄積や競争力に劣る」

「数量拡大志向が極めて強」く商品力向上が追い付くか疑問、などとマイナスの印象を持っていたが、認識を改めたと書いている。

もっとも、トヨタは数年前から危機感を募らせていた。
きっかけは、それまでトヨタの独壇場だったカナダの東部市場で現代が猛追してきたこと。

カナダ東部は北米の中でもやや特殊な市場だ。
厳寒での耐久性が求められるため、コストパフォーマンスが高いだけでは売れないと、多摩大学経営情報学部の金美徳(キム・ミドク)教授は言う。

この頃からトヨタやホンダは全世界の市場で、自社の車と現代車を徹底的に比較し始めた。
現代が先行し高いシェアを誇る中国などでは、品質を犠牲にせず安く作れる理由を知るためトヨタが現代車を分解したという。

だが、気付くのが少し遅過ぎたかもしれない。

現代・起亜のカナダでの昨年1~6月期の乗用車販売のシェアは18.2%で首位、SUVと小型トラックを合わせた自動車全体でもトヨタ、ホンダを抑えてビッグ3に続く4位になっている。

★自動車もモジュール化★

中国以外にもインド、ロシア、チリなどの新興国市場で急成長する現代が、先進国市場でも頭角を現し始めてきた証拠だ。

昨年は欧州でトヨタを抜いてアジアメーカーとしてトップになった。

アメリカでも、日本車メーカーが得意とする低燃費の中小型車でトヨタ、ホンダを激しく追い上げている。
昨年のシェアはトヨタの12.9%に対して8.9%で、ホンダの9.0%に肉薄。

今年の北米カー・オブ・ザ・イヤーは「シビック・キラー」の異名を取る「エラントラ」が受賞した。
東日本大震災やタイの洪水などが相次いだ昨年の業績で比較するのは、日本メーカーに酷と映るかもしれない。

だが、現代の快進撃は今に始まったことではない。
02~10年までの9年間、金融危機にも負けず右肩上がりの成長を続けたのは世界9大自動車グループの中でも現代だけだと、愛知大学経済学部の李泰王(イ・テワン)教授は言う。

現代の飛躍の原点は80年代後半の挫折にある。
プラザ合意後にウォン安を生かし低価格小型車「エクセル」「ポニー」の対米輸出を始めたが、故障の多さやアフターサービスの不備が露呈。

カナダに造った工場も閉鎖を余儀なくされた。
当時の反省から、鄭夢九(チョン・モング)グループ会長は「品質重視」「顧客第一」を生産現場から会社幹部まで徹底させる経営に切り替えた。

一見陳腐な理念だが、そこから生まれた経営は極めて斬新だった。
例えば現代は、自動車部品の「モジュール化」を進めている。

複数の部品を統合し、開発・組み立てを外注することで組み付け時間を短縮し、人件費を削減する。
モジュール化といえば、汎用部品を組み立てるだけになったパソコンなどで価格破壊を起こした設計・生産手法。

部品を開発段階からひとつひとつ「擦り合わせ」ることで初めて良いクルマができるという自動車業界の常識を覆す。

元祖はVWだが、現代がそれを全面的に導入した。

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