公正証書遺言とキッスと泌尿器科について☆ | 司法書士講師・三枝りょうのブログ

司法書士講師・三枝りょうのブログ

司法書士試験の受験情報を中心に、日々考えたことを書き連ねていきます。

皆さんこんにちは,司法書士講師の三枝りょうです。

 

令和2年度司法書士試験合格を目指して勉強している受験生さま,是非とも今年合格してしまいましょう。
来年合格を目指して勉強している人ならば来年きっちり行ってしまいましょう。
つまりできるだけ早く合格した方が断然によろしいという話です。

理由は簡単です。受験勉強で学ぶことは実務のほんの一部です。
『あんなに勉強してんのにー!?』 と思うかも知れませんが,本当です。

うんと簡単なところで申し上げましょうか。
たとえば 『公正証書遺言』 ですか。

(公正証書遺言)
第969条 公正証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。
一 証人二人以上の立会いがあること。
二 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。
三 公証人が、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させること。
四 遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を押すこと。ただし、遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができる。
五 公証人が、その証書は前各号に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名し、印を押すこと。

司法書士試験対策としては,上記規定を押さえておけば概ねOKです。
あとは,当該遺言書の検認の要否ですか。

969条2号の 『口授』 とは何でしょうか。キッスではありません。
遺言者(概ね老人)と公証人のキッスには,一度は立ち会いたいですけれども。

「遺言者自らが,自分の言葉で,公証人に対し,遺産者の財産を誰に対してどのように処分するのかを語ることを意味するのであり,用語,言葉遣いは別として,遺言者が上記の点に関し自ら発した言葉自体により,これを聞いた公証人のみならず,立ち会っている証人もが,いずれもその言葉で遺言者の遺言の趣旨を理解することができるものであることを要するのであって,遺言者が公証人に自分の言葉で遺言者の財産を誰に対してどのように処分するのかを語らずに,公証人の質問に対する肯定的な言辞,挙動をしても,これをもって,遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授したということはできないものと解するのが相当である。」

これが高等裁判所の見解です。
最高裁の判例ではないので司法書士試験対策としては重要度は低いです。

で。です。
公正証書遺言に関するトラブルにおいて,多くは「作成当時,遺言者に判断能力があったのか」が争点になります。

公証人としては自身が関与した遺言公正証書が(古巣である)裁判所に持ち込まれ,(ざっくり言って)後輩に 『これ無効だし!』 と宣言されるのは屈辱です。たぶん。
したがって,公証役場に公正証書遺言作成の依頼をすると「医師の診断書を持ってこいや。」と言われることがあります。
つまり後々に引っくり返されぬよう,「この人ダイジョーブ。」という専門家のお墨付きを持参すれば公正証書を作成しますよと。

不親切な公証役場の事務の人だと「かかりつけのお医者さまでいいんじゃないですかー。」的なことを言います。
が,しかし,本当かと。
「かかりつけ医なし老人」など日本にいないでしょうけれども,それはたいてい「内科」「整形外科」「泌尿器科」だったりする訳です。
そこで果たして 「マジ遺言能力ありますけど何か。」的な診断書がもらえるのかと。

 



親切な公証役場の事務の人だと「後見開始の審判用の診断書フォームを使ってください。家裁のホームページからダウンロードできますよー。」的なことを教えてくれます。
が,しかし,ここにもちょっとしたフックがあります。




公証役場リコメンドである「家庭裁判所の後見用フォーム」ですが,そもそもこちらは「事理弁識能力が衰えていること」が前提で,「どのくらい衰えてるか」を示すことに特化した体裁になっています。
公正証書遺言作成時にほしいものと完全なる逆ベクトルです。
遺言者が診察時に「診断書を書いてもらわなきゃいけなくなった理由」と「何を書き表してほしいか」を医師にきちんと告げられないと,医師もふわっとした診断書を作ってしまう可能性があります。
これヤバくないですか。969条に書いていないことばかりです。

話を戻しましょう。
かようにですね,試験合格後に待ち受ける 『司法書士の実務の世界』 は,あなたの知らない知識で埋め尽くされています。そしてそれらは非常に興味深いです。
一にも二にも早く合格して,この 『マジか!』 『ヤバくね?』 を体感していただくのがベストです。しかもそれが稼ぎになるという。
受験勉強でまごまごしている場合ではありません。

【PR】

人気講師の授業が圧倒的低価格
資格スクエア

 

【PR】
「今,覚えたい」を持ち運ぶ
プチまな