2014年10月8日(水)午後2時、10月11日(土)午後2時開演

リヒャルト・ワーグナー
舞台神聖祝祭劇 パルジファル

指揮 飯守泰次郎
演出 ハリー・クプファー
演出補 デレク・ギンベル
装置 ハンス シャヴェルノッホ
衣装 ヤン・タックス
照明 ユルゲン ホフマン
舞台監督 大仁田 雅彦

合唱指揮 三澤 洋史
合唱 新国立劇場合唱団
管弦楽 東京フィルハーモニー交響楽団

アムフォルタス エギルス シリンズ
テュトゥレル 長谷川 顕
グルネマンツ ジョン トムリンソン
パルジファル クリスティアン フランツ
クリングゾル ロバート ボーグ
クンドリー エヴェリン ヘルリツィウス
聖杯騎士 村上公太、北川辰彦
小姓 九嶋香奈枝、國光ともこ、鈴木准、小原啓楼
アルトソロ 池田香織

飯守監督が就任した今シーズンの新国立劇場、
オープニングは超強力キャストによるパルジファル。
ハリー・クプファーの新演出!!

最初にこの演目とは!
たしかに飯守最愛のトリスタンは既に採り上げたし、
ワーグナーの主要作ではこのパルジファルしか残っていなかったということもあるでしょう。
しかし、結果的には世界的に見ても極めて高水準の演奏・演出となり、
大いなる満足感を得ることができました。
(尚、8日が3階、11日は1階中央で聴きました。)

演出のクプファーと言えば、ベルリン国立歌劇場での光のパルジファルが
映像として残っていますが、これが歌手の充実と共に非常に感銘を受けた演出でした。

今回は映像を参照頂けると直ぐに分かりますが、
迷いの曲がりのある光の道を作り、これが上下することで動き、アクセントを与えます。
それにこの道の照明というか発光というか、様々な色に変化してこれが非常に効果的。
そしてロンギヌスの矢(聖矢)は持つものと同時に、巨大な舞台装置としても活躍。
これはベルリンと同じアイデアが継続使用されています。

そして演出はクンドリーの輪廻転生的な生き方、そして無償の愛という点で
仏教的な意味を見出し、僧侶が3名ポイントで登場することが特徴でした。
クンドリーについては、昔からアジア的というか、日本的な「穢れ」を象徴した存在で
キリスト教の中での位置付けはイマイチわからなかったのですが、
たしかにこのように解釈すれば、なるほどというか面白いと素直に鶴首しました。
そして光の演出は変わらず、これ私好きなんです。
3階席だと眩しい場面もありましたが、1階席だとこれが実に効果的でありました。
うん、この人は今でも面白い。
それにしても、新国も思い切って金を使いましたね~(笑)。

歌手はこれだけ一度に集められる歌劇場、ほとんどないでしょう。
これはいつもでなくても良いですが、オープニングとしては必須、
良く頑張った!!

グルネマンツのトムリンソン。
彼のグルネマンツはベルリン国立歌劇場の来日公演で演奏会形式で聴きました。
圧倒的な声量であの時がバイロイトなども席巻しており最盛期だったのでしょう。
あのNHKホールがビンビン響きまくっていました。
あの時に比べると声量は大分落ちたようですが、今でも存在感は圧倒的。
彼の歌唱は時に朗唱のようになる時もありますが、
見た目も含めて現在の方がグルネマンツらしいかも(笑)。
以前のグルネマンツは協力過ぎていました。

フランツは新国の常連、今回も響く声で頑張ってくれました。
高音部も含めて高水準で安定してり、これは得難いもの。
今回は表情付も自然で引き込まれるものがありました。
見た目がおっさんなので、せめて舞台衣装として鬘でもつけて
もう少しピリっとした服を着せれば良かったのに(笑)

ヘルリツィウスも過去に何度も聴いていますが、今回のクンドリーがベスト。
演技も迫真、第2幕での圧倒的な声量、表現力。
聴きどころの「でも笑ってしまった」での絶唱は感銘を受けました。
あまり高音部分が続くと叫びになってしまうのですが、
メゾの声域が多いクンドリーなどピッタリ嵌ったのでしょう。
アルト系のクンドリーは官能性が意外になくて面白くないのですが、
今回は本当に素晴らしかったと思います。

アムフォルタスのシリンズは初めてですが、各地でワーグナーを歌っているのですね。
正に乗っている人の響く声でアムフォルタスの嘆きの表現が秀逸。
ヴォータンも合うな、と思っていたら、
東京春の音楽祭でのラインの黄金でヴォータン歌っていたのですね。
来年4月のワルキューレでも同役で出演するそう。
数年ぶりに4月に聴きに行けそうなので、絶対行くこと決定!!
(しかもジークリンデはワルトラウト・マイヤーに決定)

そしてクリングゾルのロバート・ボークは超美声で迫力大。
クリングゾルはグラインドールやフォン・カンネンなど
いかにも系が多いのですが、こういうクリングゾルは
彼なりの苦しみ、悩み、こんなところへ陥ってしまったとの気持ちの表現が
直接的に伝わり想像以上に素晴らしいかったですね。
彼もヴォータンもいけそうですが、クルヴェナールなども良いでしょう。
ヴェルディの中期~後期作品も相性が良さそう。

ティトゥレルの長谷川はやや音程がぶれるところは昔からですが、
老王の嘆きは十分伝わってきました。

意外なのは、男声合唱団がイマイチ精度が低く聞こえたこと。
舞台奥の女性含めた合唱は正に天の声で痺れまくったのですが・・・・。

飯守の指揮は音を十分に鳴らせながら、腰が据わった素晴らしい演奏。
両日共に第2幕、第3幕が素晴らしい。
力感、ある種の抒情性、きばっての盛り上げも決まっていました。
一方、第1幕はあの転換の音楽などはやや辛目の演奏で、
小生が求める陶酔感は少し後退していたように感じました。

オケの東フィルは大健闘と言えるでしょう。
数年前の二期会のパルジファルの読響の方が厚みはありましたが、
弦のやる気がグイグイ伝わってくるのです。
3階席ではピット内が良く見えましたが、メンバーのやる気が見た目にも
伝わってきました。これ位の気合を通常の演奏でも何卒お願いします(笑)。

午後2時開演で午後7時45分に終演(休憩2階)。
長い、でも充実感のある公演で観に来て良かったです!!
飯守監督、良い形でのスタートとなりました。
(トリスタンの再演も宜しくお願いします。)

11日はそのまま近所の鮨亭へ。
入れ違いでしたが、先陣として国立劇場観劇後のY夫妻が来られていました。

では。