rx1206の音楽探訪
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沖津浪闇不知火

一、不知火検校(しらぬいけんぎょう)

松本幸四郎悪の華相勤め申し候

浜町河岸より横山町の往来まで

   
按摩富の市後に二代目検校 幸四郎
奥方浪江 魁 春
指物師房五郎 翫 雀
生首の次郎後に手引の幸吉 橋之助
湯島おはん 孝太郎
丹治弟玉太郎 亀 鶴
若旦那豊次郎 巳之助
娘おしづ 壱太郎
富之助 玉太郎
魚売富五郎 錦 吾
初代検校 桂 三
因果者師勘次 由次郎
夜鷹宿おつま 高麗蔵
鳥羽屋丹治 彌十郎
岩瀬藤十郎 友右衛門
母おもと 秀太郎
寺社奉行石坂喜内 左團次 ※

二、馬盗人(うまぬすびと)
   
ならず者悪太 翫 雀 ※
ならず者すね三 巳之助
百姓六兵衛 橋之助 


ガツンと大変見応えのある舞台でありました。
過去観た高麗屋では最高級のものでありました。

悪徳非道、正に悪の権化のような不知火検校、
なのになぜかこのキャラクターに惹かれる・・・不思議な物語であります。

昭和の歌舞伎でありますが、先ずはテンポ感が良い、
不知火検校だけでなく周囲のキャラクターの実に立っているであります。

それにしても幸四郎、会心の出来栄えではないでしょうか?
小生には勧進帳よりよっぽどこちらの方が面白い、ゾクゾクしました。
ニヒルで残忍なところが前面に出ますが、
細かいところでは人間味もあり・・・。
不気味さ、人間らしさ、金・女・権力に真っ直ぐ進んでいく
ある種の爽快さまで感じてしまいました(危ない危ない)。

次に孝太郎、こんなに良い役者だったとは!
昨日は舞踊でしたが、今日のおはん、台詞廻しが杉村春子のようでした。
これは上手い、美人役よりも少し町がかった役の方が合うのでしょうね。
身体は許しても、心は許さじ。
この女の性根も見えたものですが、それを気風の良さも交えて
流れるように演じてくれたのでした。

それから橋之助、今回の新橋では忙しいですね。
こちらも気風の良い、それでいて真っ直ぐな。
他のキャラクターは次第に検校を恐れていくのに
生首の次郎だけは最後までついて行くのです。
最初の出会いでぽんと百両渡され、私淑したということでしょうか?

また彌十郎は変わらず声・演技共に充実していますね。
現在の歌舞伎界にどうしても必要な人です。
玉太郎の亀鶴もビビリっぷりが良いですな。
そして高麗蔵も立ち役より女形の方がずっと良いですね。

舞台も見事、本当に充実した上演でありました。
当たり役としてまた数年後に上演してくれないかしらむ、と密かに期待。

機嫌よく帰途へ、いつもの鮨亭で遅い夕食を。
しっかり酔っぱらって帰宅しました。

<あらすじ>
不知火検校(しらぬいけんぎょう)
神をも畏れず、欲望のままに悪の道をひた走る
江戸末期、盲人の中での最上位の階級にいる不知火検校の元に弟子入りした富之助は、
父親の死をきっかけに、忠実な弟子を装いながら、隠れて悪行に手を染めていきます。
10年が経ち、富之助は富の市という按摩として一人前となりましたが、
悪行の勢いは留まらず、人殺し、盗み、騙し…など極悪非道の日々を送りながら、
ついには師匠を手にかけ、二代目不知火検校の座につきます。権力と大金を手に入れ、
すべてが思いのままになった富の市は、今度は意中の女を巡って、殺人を企みますが…。

不気味なほどに極悪な按摩を主人公に、宇野信夫が書き下ろした世話物。昭和35年に初演、その後映画化もされ、大きな反響を呼びました。そしてこの度、歌舞伎としては、昭和52年以来、実に36年ぶりの復活上演となります。型破りに生きる一人の男を、幸四郎が憎々しく、そして悪の持つ輝きを魅力的に演じます。どうぞご期待ください。