rx1206の音楽探訪
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つく、きえる

2013年6月22日(土)18時 新国立劇場 小劇場
作:ローラント・シンメルプフェニヒ
翻訳:大塚 直
演出:宮田慶子

美術:土岐研一
照明:佐藤 啓
音響:長野朋美
衣裳:高木阿友子
ヘアメイク:川端富生
演出助手:大澤 遊
舞台監督:澁谷壽久

芸術監督:宮田慶子
主催:新国立劇場

【出演】
中村 蒼  谷村美月  田中美里  大石継太
松尾 諭  津村知与支  枝元 萌  河合杏南


「昔の女」を観たことがあったので、シンメルプヒェニヒの
3.11をベースにした作品の初演を観に行きました。

ストーリーは別記の通りではありますが、2幕構成の中でも細かい設定が
時間とは関係なく配置されており、しかもアルファベットの名字を持つ
夫婦は、「頭をふたつ持った女」「石のような女」「口のない男」
「心臓をなくした男」(記憶ベースなので間違っているかも・・・)など
かなり観念的な設定となっており、台詞も相当複雑であります。

休憩なしで1時間40分、不倫という題材であるにも関わらず
エロティックなところや、笑いは一切なし。
生活色なども排除されています。

つく、きえる  オンオフという意味ですが、
実際の電気のオンオフ、ホテルが海底に沈む前と後など
現実と観念的な世界がこれを機に入れ替わったりします。

福島を題材にしていることは、それを意識すれば解る、
或いは北斎の富嶽百景に出てくるような海の絵が、
映像と共に大きな波(津波)としてクローズアップされて解る、
と、いう感じです。

事前にHPで出演者のインタビュー映像を観たのですが、
中村蒼がやや戸惑った表情で話していたのが
実際の舞台を観て得心した次第です。

小生は午後2時から4時まで自宅で昼寝(笑)をしていたおかげで、
1時間40分集中して観ることができました。

何かを考えさせる、という意味でこの演劇を上演する意義はあるのでしょう。
但し、一度だけみて理解する作品ではないかと、
理解するという行為自体が意味がないのかもしれませんが・・・。


【ストーリー】
沿岸の小さな町。港にある小さなホテルが、A氏と、その愛人Y(既婚)の密会の場所だ。
彼らは毎週月曜日の昼食をここで共にする。
彼らが知らないことがある。
Aの妻にもZ氏という愛人がいる、ということ。
彼らは毎週月曜日の午後をこの小さなホテルで過ごす、ということ。
そんな彼らが知らないことがある。
Z氏の妻はY氏(A氏の愛人の夫)と逢い引きを重ねていて、
毎週月曜日の夕方をこの小さなホテルで過ごす、ということ。

一人の若者がこのホテルを運営している。
彼は、彼の客たちのエロチックな、はらはらどきどきな冒険を知っている。
それが彼の仕事だからだ。
彼は、この港には決して降りてくることのない女の子と哀しい恋をしている。
湾岸警備のための時計台の上で仕事をしている女の子だ。
彼女は海を恐れている。なので、いつも勤務に就いているのだ。

ある月曜日、なぜだかホテルは海の底に。
しかし奇跡的な理由から、ホテルは大きなあぶくに包まれ、
その外を魚が泳ぐという、さながら水族館のようなことになっている。
あぶくの中に残った人々は大慌て。秘め事も露呈し、すぐに対立が生まれる。
大きなあぶくは電話もインターネットもテレビも通さない。
たまに古いラジオが動くだけ。時計台の頂上は、水の上に出ている。
彼女はまだそこにいて、もちろんホテルにいる彼に連絡を取ろうとしている。
二人とも、お互いに何が起こっているのかはわからない。

海底のあぶくの中に残された人々はちょっと変わった「社会」を築くようになる
……まるで自らを開発しすぎ、技術的知識を持ちすぎた現実社会を映す鏡のような社会を。