「ボタンのかけ違い⑩ー治癒・完治の実感」では触れられなかった「寛解」とその後の「経過観察」について書きたいと思います。

 

前回も引用させていただいたWikipediaの「寛解」の説明です。

 

医学的には寛解(かんかい、英: Remission)という語を用いる場合がある。これは続的であるか一時的であるかを問わず、病気による症状が好転または、ほぼ消失し、臨床的にコントロールされた状態を指す。すなわち、一般的な意味で完治せずとも、臨床的に「問題ない程度」にまで状態がよくなる、あるいはその状態が続けば寛解したと見なす。

 

がんの場合は、三大療法などの治療後、いろいろな検査によって「体内からがんが消えた」と判断された時に「寛解」と告げられます。治ったのではなくて、一次的にがんが消えている状態だから、それを保つように生活してくださいと言われます。寛解の状態を継続させて完治を目指す期間が「経過観察」です。

 

または、治療後に、自然治癒が可能だと思われるほどの小さながんが残った時「とりあえず経過観察をしてがんの変化を見ましょう」と告げられることもあります。このまま自然治癒すればラッキー、もしもがんが大きくなったらその時には対処療法を考えましょうという意味合いです。

 

いずれの場合も、経過観察期間とは、がんの転移や再発の危険性がある状態を自覚し、日常生活を自己管理することで完治へと向かうセルフ治療期間だとも言えます。

 

 

がんは生活習慣病だと、厚労省も認めています。

悪しき生活習慣の積み重ねによって、健康な状態ならば、免疫細胞によって処理される不良細胞が生き残り、増殖し、がんという塊になって現れたものです。

 

がんが消えて寛解になり、経過観察期間になった時に最も重要なことは「がんが生まれた悪しき生活習慣」へ逆戻りしない…ということです。

 

でも現実には、寛解になった途端に元の職場に現職で復帰した人、今までと同じリズムで家庭を守る主婦、中には、がんに負けたくないから転職してもっと働くことにした…という猛者もいます。がんになった悪しき生活習慣の中に戻っていけば、以前よりも体力も免疫力も落ちている病み上がりの心身では、結果は明らかでしょう。

 

最近では、治療をしながらの職場復帰を勧めるような兆候もありますが、がんになった職場に以前のままの条件で戻ることは、健康状態の悪化を促すことになりかねないと危惧しています。同じ会社に復帰するとしても、今までとは違う職種、違う働き方などにしてもらい、心身の疲れを軽減し、経過観察中の体調管理を優先できる条件にしてもらうことが大切だと感じています。

 

ただ、がんになるタイプは、責任感が強くて仕事熱心な方が多いようで、責任ある地位にいる方も少なくありません。寛解になって会社に復帰した時、今までの管理職を解かれ、本人にとっては閑職・左遷と感じてしまうような仕事を与えられると、それが会社側の「健康に戻るための配慮」だとしても、精神的に落ち込んで体調を崩すこともあるようです。

 

がんになったからといって、仕事や社会活動をあきらめる必要はありませんが、自分の体調の回復を十分に考慮し、早急な「現場復帰」をしないほうが、結果的に早く社会復帰できることも少なくありません。がんになった生活環境へ急いで戻ると、再発や転移という、最も望まない事態になることが多いからです。

 

 

経過観察期間は何年間と決まっているわけではないようですが、大体の目安として、5年間と言われています。がんになってから5年間のケースと、寛解になってから5年間と考えるケースがあるようです。がんの種類やステージだけではなく、経過観察中の心身の安定度、健康状態、生活状態などさまざまな要因を考慮して、もう大丈夫だろうと医師が判断した時に「寛解」が「完治」になるようです。そのために医師から「完治」を告げられるまでの期間は、個人差が大きいと聞いています。

 

問題は、この経過観察期間の暮らし方です。5年間やそれ以上の長期間にわたって、がんを転移・再発させない暮らし方を自己管理していくことが求められます。病院で処方された薬を飲むとか、最新の治療機器で治していくのとは違います。経過観察中は、日々の暮らし方そのもの、自分の考え方そのもの、自分の性格そのものを見直し、がんになりにくい新しい生活環境や生活習慣、自分の思考法や性格までも自己改革し、ストレスが少ない生き方を自分の意思で作り上げていく作業が続きます。

 

一人で暮らしている方もいらっしゃいますが、多くの場合は家族との暮らしになり、家族の考えや希望とのズレ、家族の生活リズムと自分がしたい暮らし方リズムの相違、健康情報の理解の違いなど、いろいろな家族間のストレスの中で行わなければならない自己改革でもあります。さらには、経済的な問題が絡み、自分の理想と現実の狭間で悩む方もたくさんいらっしゃいます。

 

同時に「変われない自分」や「変えられない生活環境」に失望し、自分をダメな人間と決めつけて、かえって治りにくい悪循環に陥る方さえいます。

「ダメな自分」そのものを受け止めて、ありのままの自分を受け入れることができれは、その瞬間に「新しい自分」が誕生して、いろいろのものが変化していきますから、劣等感や挫折感がある場合は「それも良し」と、全部を受け止めてみてください。変わりたい強い意欲があるから、変われない挫折感が生まれるので、がんになった状態からは何歩も前進している証拠です。

 

経過観察期間の一番の目的は、がんを生んだ悪しき生活習慣を排除し、がんになるストレスを溜め込んだ感情や思考法を見直し、不健康であった生活習慣の基本から立て直すことです。それが、次のがんを防ぎ、健康に心身になる唯一の方法だからです。

 

 

でも、経過観察の過ごし方を「何かをすればそれで良い」という考え方にすり替えた時、本当の意味での生活環境改善が曖昧になってしまいます。

 

・食生活で予防できるから、人参りんごジュースと糖質制限食にするから安心。

・酵素ががんに良いから、酵素ドリンクを飲み、発酵食品を食べているから安心。

・健康管理には運動が大切だから、スポーツジムへ週1で通うから安心。

・がん予防には体を温めることが大切だから、岩盤浴へ週2で通うから安心。

・がん予防には睡眠が大切だから7時間眠るようにしたから安心。

 

みんながん予防に良さそうですが、これだけは生活習慣の改善にはなりませんし、それどころか、この中には間違っていることも多いんです。

 

がん治療後は、体力も免疫力も落ちているので、まずはエネルギーを体に補給する食事が大切になります。何かを制限する食事は、栄養バランスが偏りがちで適切ではないと言われています。治療後の順調な経過の目安は、食事によって太ってくることだと友人の医師から聞きました。三大療法治療中は、食事を食べられなくなることが多く、ほぼ全員が痩せるそうです。痩せて体力・免疫力が落ちた体が太ってくると、体内環境が良くなってきたと判断できるようです。

 

運動や保温にしても、間違いではありませんが、毎日、常時行うことに意味があることです。毎日の散歩や、冷えとりの重ね着など、常に行なっているベースがあって、さらにスポーツジムや温熱施設を利用することで効果が出るのだと思います。

 

睡眠時間にしても、真夜中過ぎから昼近くまで寝ている7時間であったとしたら、睡眠効果は激減します。夜の10時には熟睡し、真夜中の2時までの体の修復期間を生かさなければ意味がありません。そのためには9時半頃には就寝しないといけないのですが、それを行うことが生活習慣の改善です。

 

 

これらの日常生活の改善以上に大切なことが、実は心の問題です。

 

仕事や対人関係や物事に対する考え方の変化させないと、がんの元凶のストレスを緩和することができません。極論すれば「自分らしい」と信じていた「頑張り屋」や「正義漢」や「我慢強さ」や「思いやり」などの、自分の長所であり美徳だと思っていたものを手放すことなんです。

 

「自己中心的」に「我慢をしない」で「自由に」生きることが求められ、他人の評価を気にしたり、良い子であろうとしない生き方の中に、ストレスから解放された「本当の自分らしさ」が見えてくると言われています。実際にその通りだと、私も感じています。「誰かのために生きる」のではなく「自分のために生きる」ことを楽しめるようになると、周りを見る目が変わってきます。

 

「寛解」を経て、経過観察を無事に終え、本当の健康体になって「完治」した時には、がんになる前とは違う自分と向き合っているはずです。より自由になり、より自然体になって、より楽しい人生を感じていることでしょう。「自分らしさを失う」と心配する必要はなく、教育で作られた仮面の下にいる「本当の自分」に出会うことを楽しむ気持ちになれれば、自然に全てが変化すると思います。

 

反対に、古い自分の価値観に縛られて、今までと同じように頑張ることが自分の生き甲斐だと信じ続けて固執すると、最も望まない結果になることがあるかもしれません。がんになった環境へ、自らがまた飛び込んでしまうことになりますから。

 

 

経過観察は、本当の意味で治るための分岐点だと感じています。病院での治療は、あくまでも対処療法で、がんという病魔の撤去には心強い味方でも、自分の体質や思考を改善する妙薬が病院にあるわけではありませんから。

 

がんは自分の細胞で、自分で作ってしまった病気です。自分で根本から治す意識がないと「がん体質=がんができやすい生活環境」を抱えたままで暮らすことになります。その違いをしっかりと自覚したいですね。