>ドイツやブラジルではすぐに自分たちの個人情報はいったいどこまで把握されているのかという独自の取材が始まったが、日本ではそのような追及は起こらなかった。<

>だが、それは決して他人事ではなかった。(中略)「テロリスト」を捕まえるはずだった監視システムは「ジャーナリスト」を妨害するために使われている

>彼(スノーデン)の発言のいくつかから、日本におけるNSA監視と報道の「不自由」の関係を考えたい。<

>発言1 「日本で近年成立した(特定)秘密保護法は、実はアメリカがデザインしたものです」

>NSAは日本の法律が政府による市民へのスパイ活動を認めていないことを理由に情報提供を拒み、逆に、米国と秘密を共有できるよう日本の法律の変更を促したというのだ。米側から繰り返された提案が、スノーデンの言う「秘密法のデザイン」に当たる。<

>発言2 「米政府が日本政府を盗聴していたというのは、ショックな話でした。日本は米国の言うことはほとんどなんでも聞いてくれる、信じられないほど協力的な国。今では平和主義の憲法を書き換えてまで、戦闘に加わろうとしているでしょう? そこまでしてくれる相手を、どうして入念にスパイするのか? まったくバカげています」<

>NSAの大規模盗聴事件「ターゲット・トーキョー」についてのスノーデンの感想だ。NSAが少なくとも第一次安倍内閣時から内閣府、経済産業省、財務省、日銀、同職員の自宅、三菱商事の天然ガス部門、三井物産の石油部門などの計35回線の電話を盗聴していたことを記す内部文書が公にされた。<

いずれもテロとはなんの関係もない。米国が表面上は「友好関係」を強調しながら、日本のなにを監視しているのかがわかる。<

>標的にされているのは、政府機関だけではない。「コレクト・イット・オール」はすべての人々の通信を対象にしている<

>発言3 「多くの場合、最大手の通信会社が最も密接に政府に協力しています。それがその企業が最大手に成長した理由であり、法的な規制を回避して許認可を得る手段でもあるわけです。つまり通信領域や事業を拡大したい企業側に経済的インセンティブがはたらく。企業がNSAの目的を知らないはずはありません」<

日本の報道関係者は(中略)日本人の世界を理解する力を深刻に低下させている。<

>このツケを払わされるのは、おそらくメディアではない。もちろん日本政府でもない。71年前の敗戦時、多くの日本人が政府と報道機関が実は何年も前から嘘ばかりついてきたことを初めて知った。世界を知らず、世界から孤立し、聞こえのよいニュースに期待をかけたまま、家族を、友人を、すべてを失った。が、政府も報道機関も生き延びた。<

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*2016年08月22日(月) 小笠原 みどり
スノーデンの警告「僕は日本のみなさんを本気で心配しています」なぜ私たちは米国の「監視」を許すのか

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/49507