春の夜の出来事(1955) | 日本映画ブログー日本映画と時代の大切な記憶のために

日本映画ブログー日本映画と時代の大切な記憶のために

日本映画をひとりの男が見続けます。映画はタイムマシンです。そういう観点も含め多様な映画を解説していきます。範疇は作られた日本映画全てです。

春の夜の出来事

1955年 日活

監督:西川克己 主演:若原雅夫、三島耕、芦川いづみ、伊藤雄之助


この映画、「春の夜の出来事」だが、季節は冬のスキー場。(それも舞台は年末)そして、公開は6月といういいかげんさ。まあ、最後のしめくくりは、恋が成就して、春ということで春らしい映画です。(たぶん、日活製作再開して、お客が入らず、プログラムに苦労しているときだろうから、いろいろあって季節感がなくなったとは思われます)


大内産業の社長(若原)は、キャラメルの箱で工作を作る懸賞で2位になり、赤倉高原スキー場に招待される。社長だということを隠して一人で楽しみたいという。家族は心配し、執事の伊藤を金持ちに化けさせ、遠くから監視するようにする。また、1位の三島は失業の身だったが、気晴らしにスキー場に。若原の家族は心配し、先回りしてホテルに若原がくることを告げる。ホテルでは金持ちが身分を隠してくるというので騒ぎに。しかし、三島が金持ちに間違えられ、若原は最低の部屋に入れられる。話はややこしくなるが、若原は楽しむ。伊藤は三島に就職を世話するといって近づく。余計に話がややこしくなる。そこに心配した若原の娘(芦川)がやってくる。二人は恋に落ちる。しかし、若原がホテルを追い出されたので三島に黙って帰郷することに。三島は帰ると就職の決定通知がきている。そして、若原の家に呼ばれ、二人は結ばれる。


「王子と乞食」いや、逆「シンデレラ」的な話である。それなりに楽しめるし、恋中になる三島と芦川はさわやかで良い。若原がホテルでひどいめにあうのを楽しむのもおかしい。貧乏に仮想するパーティーで「あなたは仮想していないから出場資格がない」といわれたりする。若原は、最初、汽車で何度もキップをなくしたりするところなど、なかなかユニークに演じているが、もう少しスキー場でいじめられてもよかったかなとは思えた。


若原の設定が、オウムが好きで、さんまの開きが好きということで、小道具としてやたら登場するのだが、あまりきいていない。このあたりが、この映画が今ひとつはずまないところだろう(作りはしっかりしているが、はずまない喜劇という感じ)


作曲家の黛敏郎が本人の偽物としてでてくる。結構、セリフもあり、最後に正体がばれトンズラする役である。もちろん、この映画の音楽も担当しているのだが、かなり貴重なお宝映像だ。(ちなみに髪の毛はあのちぢれ毛だが、色は真っ黒である。若気のいたりというところかな?)


芦川いづみが、ピーターパンになる。これはなかなかステキである。ちょうど、「青春怪談」で注目された直後の映画だと思う。スターになる予感がある。芦川はスキーもうまかったはずだ。その辺が映っていないのが残念!


キャラメルの懸賞が豪華だったり、若原の作品が空飛ぶ円盤だったりするのは、この時代の流行であろう、そういうのを駆使してる脚本は中平康がかんでいる。また、助監督は舛田利雄である。そう、日活が裕次郎で破裂する前夜の鼓動がする映画ではあるのだ。西河演出も無難にしっかりしている。(プラスαは感じられないが)


まあ、楽しめる作品ではある。そして、題名は結構あっているから不思議である。


Twitter http://twitter.com/runupgo