野口みずき“涙”に秘められた決意…充実感と諦めない心 | 走りながら、食べて、聞いて、考えて!

野口みずき“涙”に秘められた決意…充実感と諦めない心


1575日ぶりの激走に涙、そしてまだまだ諦めない涙でもあった。

 ロンドン五輪の女子マラソン最終選考レース、名古屋ウィメンズに出場したアテネ五輪金メダリストの野口みずき(33)=シスメックス=は、6位でゴール。「ゴールに帰ってこられてホッとしてしまって…」と、完走に大粒の涙をこぼした。

 「どれだけ転んでも立ち上がることができる。自分の人生とマラソンを重ねている」と、いずれ名言になりそうなコメントまで出たが、充実感いっぱいだったことをうかがわせた。

 スタートから好調に飛ばしたが、実は「17キロ地点で左ひざがガックとしてしまって…」と故障があったことを告白。150メートル以上の差がついて万事休すと思われた。それでも「沿道の声援に本当に力をいただきました」と、ありえない激走で27キロ付近では再びトップ集団に追いついてみせた。

 最終的には「ちょこちょこ動き過ぎちゃいました」とスタミナ切れで遅れたが、逆に十分な調整さえできれば、まだまだ野口が「世界と戦えるランナー」であることを証明した。

 ゴール直後、日本陸連の河野匡強化副委員長(51)から「次回は海外のレースを走るべきだ」とエールを送られると、「ありがたいです」と涙。「東北の方々にも応援をいただいた。3・11に完走できたこともそのおかげです」と、またまた涙。

 もちろん、注目は2時間24分14秒で日本人トップの2位でゴールした尾崎好美(30)=第一生命=なのだが、野口は「五輪代表に選ばれた人には4年に1度の舞台。思いっきり楽しんで欲しい」とエールも贈った。

 連覇確実といわれた北京五輪は、直前に故障で辞退。今年1月の大阪女子マラソンも大会前日にキャンセルしたことで、このレースに惨敗すれば「引退」必至の状況だったが、自らその危機を回避した。

 「ずうずうしいと思われるかもしれないが、諦めないで進んでいきたい。まだ辞めません」

 長期低落傾向に加え、スター不在の日本女子マラソン界。「野口みずき」は、まだ欠かすことのできない大看板であるようだ。