昨日の記事でカスターニョの「最後の晩餐」が絵画でのルネサンス的要素をたくさん含むことを紹介しました。
というのも、これって美術史でよく取り上げられる絵なんです。
遠近感がなく表情も乏しい中世絵画と
ルネサンス後期の発達した遠近法やさらに豊かな感情表現
との間に位置する作品だからです。
今日はこの作品を通して、哲学的なルネサンス要素についてお話ししたいと思います。




修道院の壁画として描かれる「最後の晩餐」ですが、もう一つ一緒に必ずと言っていいほど描かれるものがあります。
それが磔刑図。
キリストの磔の絵です。

(こちらもサンタポローニャ元修道院にある絵画)
実際カスターニョの「最後の晩餐」の上にも磔刑図が描かれています。
少し傷みが激しいのでわかりにくいですが、真ん中に十字架が見えます。
なぜ最後の晩餐と磔刑図が一緒に描かれたのでしょう?



答えは、
どちらもキリストによる人間の救済を表すからです。
「最後の晩餐」では救済の約束を
「磔刑図」では実際にキリストの死により罪があがなわれたことを
表します。

(こちらもサンタポローニャ元修道院より)



ここまでが修道院の食堂に描かれる「最後の晩餐」の伝統的なルールです。
カスターニョの作品にはそれに加えて「キリストの復活」が描かれています。
「最後の晩餐」の上の「磔刑図」の左端をよく見ると
旗を持ったキリストが復活しているシーンが描かれているのがわかります。

こちらはサンタポローニャ元修道院にある他の「復活」シーン。



中世の思想は神が中心でした。
従ってこの世はつらいところであり、死後に神の世界に行くための場所でした。
ルネサンスの特徴は「人間中心の世界」を復活(ルネサンス)させること。
この世は苦しみばかりでなく、人間としての喜びを再び肯定したのです。
キリストの磔刑だけでなく「復活」を描くことによって、人々に「希望」を与えたことを表すのがこの「最後の晩餐」の特徴です。
「復活」のシーンは壁の左側に描かれています。
右側の窓からの自然光がちょうど「復活」を光り照らすように描かれているのです。



とても小さい美術館ですが、ルネサンス要素いっぱい詰まったフィレンツェならではの絵画を肌で感じることができます。
フラ・アンジェリコでも有名なサン・マルコ寺院からもすぐ近くです。
観光客の少ない空間でぜひルネサンス絵画の真髄を心ゆくまで味わってください♪
サンタポローニャ元修道院
Via XXVII Aprile 1
8:15-13:50
休業日:
第2、4月曜日
第1、3、5日曜日
1/1, 5/1, 12/25
入場無料

にほんブログ村