津田 雅美
彼氏彼女の事情 20 (20)

「いろいろなことがあった 

 たくさんの人と出会った

 楽しかったこの日々が これからの私を支えるでしょう

 それぞれ 違う道を歩いても。」



書評強化月間です。本当は暇なだけです。

今日は漫画。「カレカノ」がついに最終巻が出ました。本当は21巻完結ですが、21は書影が出なかったので20巻を出してみましたー。


なんか最初は、他人に自分をよく見せたいがために完璧な自分を演じていた見栄王宮沢雪野が、自分より優れた有馬総一郎という人物に出会ってしまい、はじめは仲悪かったけど次第に恋仲に…というありがちといえばありがちなお話でしたが、雪野編から有馬編に移る9巻辺りから徐々に深い話になっていきました。


生命の連鎖によって生まれてしまった不幸、どうしたらその不幸の伝染を止めることができる?


このテーマね、すごいわかる。親が子どもを産んで育てるっていうのは、不幸を感染させることになってしまう場合があるんですよね。

言い方悪いかもしれないけれど、「呪い」みたいなものになってしまうときがある。

「親から愛情を受けなかった子は、親になっても自分の子どもを愛せない」って、実際ある話でしょう?

そこまで「不幸」だとか「愛」だとかいうレベルじゃなくても、祖父母から父母に受け継がれて自分にも受け継がれたものが、いいものだとは限らなくて、それで生きていくのが苦しくなってしまうことがある。

幼い子どもにとっては自分の親が絶対的なルールで、小さい頃に身についたことは、大きくなって捨てたいと思っても簡単にはいかないから。


「カレカノ」はそれを捨てて、連鎖を断ち切る苦しみと、人間が「関係する」ことの良さを描いた作品だって私は思います。

最初がラブコメっぽかったからか、とある掲示板で一時期「カレカノがこんなに重い話だと思っていなかった。期待を裏切られた。もう読みたくないです」というような意見が散乱してましたが、それを見たとき、何トンチンカンなこと言ってんだ!と思ってしまいました。いや、口悪くてごめんなさい。

だって、これは深くなるべき話だったでしょう、最初から。物語は生き物です。作者は別に「軽い」物語だったものを無理やり重く変更したわけではないでしょう。もともと深く重く成長すべき物語だったのに、それを見抜けなかった自分を棚に上げて人を批判すんな!と思っちゃったのです。こういうこと言う人は、自分に見抜く目がなかったことをよく理解して、次に「物語」に触れるときは用心すべきだよ。(偉そうに…という突っ込み覚悟で言ってみた)


あと、最後のほうは「おい!」っていうくらい「うまくいきすぎ」な展開で、多少リアリティーに欠けましたが、それまでがむしろ「どうしてこうなっちゃうんだろう?」って鬱になるくらい「うまくくいかなさすぎ」だったので、プラマイ0でよいと思います。


ちなみに個人的には、貴志さんと真秀さんの恋愛の形が理想です。

このあたりの話が載ってる10巻がお気に入りです。


色々大事なことが書いてある漫画だったし、細い線で描かれていて綺麗だったし、キャラクターが魅力的だったし、この作品に出会えてよかったと思います。

津田さんありがとう。お疲れ様でした。

次回作も楽しみです。