※少し記憶が曖昧なところがあります
「なにやってんの」
顔を上げるとそこにいたのはシロだった。
「ブロック崩し…」
「って、遅っ!
ブロック崩しってこんなんじゃ面白くねぇだろ!」
シロはそう言って笑っていた。
私は多分一瞬で顔が真っ赤になったと思う。
憧れの数学の先生にノートを覗かれて、
「なんだこんな簡単な問題もわからないのか?」
と爽やかに笑われたみたいな気持ちになってしまっていたのだ。
おかしな話だが、算数の時点で完全に挫折、脱落を味わってきた私にとって、
理系の人間というのは尊敬の対象であるのと同時に
強くコンプレックスを感じるものでもあった。
(山下先輩と付き合ったのも、自分にはない理系の頭の良さが、
少しだけカッコいいと感じたというのもあった)
勿論、ブロック崩しに理系も文系も関係ないのはわかっていたが。
「いいんですこれで!速いとすぐ終わっちゃうから!」
「じゃあさ…」
シロはそう言って、ブロック崩しの画面を閉じて、
何やら他のゲームの画面を開いた。
「これやってみる?」
xbombというよりは、マインスイーパといったほうが、
知名度が高いかもしれない。
数字をヒントに爆弾のある場所を予測し爆弾マークを置き、
爆弾がない、と判断した場所をクリックして開いていくゲームだ。
これは初めてお目にかかるものだったが、
時間制限はあるものの、じっくり考えてできるゲームで、
私はこれがいたく気に入った。
実はこのあたりは記憶が曖昧なのだ。
マインスイーパをすすめてくれたのがシロだったのかどうか、
正直なところ、はっきりとは覚えていない。
でも、その後結局ゲームに飽きて、
キャスター付きの椅子で滑って遊んでいた私を見て笑っていたシロのことや、
シロが英語の課題をしている時に、
ちょっと覗きにいったら、
「ちょっ…!見るな!」
って怒られたのは覚えている。
シロがその頃、かなり英語が苦手だったのは印象深い。
課題を終わらせたのか、途中で放棄したのかはさだかでないが、
山下先輩とシロ、彼の友達たちは、そのうち工口画像を検索し始めていた。
いつの時代も男のやることは大体同じだ。
私はそれを静かに見守り、
なんだか色々あったようで、特に何もなかったともいえる、よくわからない時間を過ごした。
大学から歩いて山下先輩のアパートに戻ってからも、私の頭の中はシロのことでいっぱいだった。
また会えるかな…
そんなことをぼーっと思った。