東京海上日動火災保険株式会社
藤田 桂子さん

経営企画部、上海駐在、営業部門、などを経て2012年6月までCSR室次長。2012年7月からはトキオマリンアジア・台北(新安東京海上)主席駐在員。
(本取材は2012年6月に行ったものです)


■アジア・パシフィック地域に、森と教育を

東京海上日動火災保険株式会社は、1999年からアジア地域を中心にマングローブの植林に取り組んでいる。マングローブの森は、今では世界9カ国、7,543ヘクタールに成長した。この森から広がる同社のCSR活動に2010年、ルーム・トゥ・リードの女子教育支援プログラムと図書室プログラムが加わった。マングローブの森が地域の人々に守られて育ち、環境にも地域経済にも良い効果をもたらしていくように「ただお金を届けて終わりではない、次世代につながる支援をしたいというのが私たちの願いです」と同社CSR室の藤田桂子さん。3年間にわたって毎年約10万ドルが贈られ、この寄付によってインドの少女330人とバングラデシュの少女227人が小学校や中学校に通えるようになった。2010年、2011年にはインドとバングラデシュにそれぞれ1ヶ所ずつ(計4室)図書室も設立した。今年も両国での女子教育と図書室設置を支援する予定だ。

2011年9月に創設者ジョン・ウッドが隅修三社長を表敬訪問。東京海上日動本社ビルにて

2011年9月に創設者ジョン・ウッドが隅修三社長を表敬訪問。東京海上日動本店にて

■草の根の活動に共感、ルーム・トゥ・リードと東京海上日動の共通点

10万ドル規模の寄付ならば、社名を掲げた学校や図書館をいくつも建てることだってできる。でも、同社が女子教育支援に大きくウェイトを置くのには、思いがある。

「特にアジアにおいては、少女を支援することが貧困を抜け出す大切なステップであるというルーム・トゥ・リードの考え方に共感しました。これから母親となる少女が、知識や生きる術を身につけて、子どもを守り生活の基盤を築いていくことが次世代につながっていくという考え方は素晴らしいと思います。」

今では9カ国、7,543ヘクタールに広がるマングローブの森。地域の人々と協働することで環境保全に役立つだけでなく、生活の糧を生み、地域社会を安定させるなど多くの相乗効果を生んでいる。

今では9カ国、7,543ヘクタールに広がるマングローブの森。地域の人々と協働することで環境保全に役立つだけでなく、生活の糧を生み、地域経済を安定させるなど多くの相乗効果を生んでいる。

「東京海上日動のマングローブ植林事業は地域の人々と協働で行い、保全活動も地域の人々が中心になって進めています。ルーム・トゥ・リードも、少女たちが学校に通えるように家族の理解を促し、地域ぐるみの協力を求める草の根の活動を大事にしていますよね。女子が教育を受けられないのは金銭面だけではなく、歴史的に形成された観念など複合的な理由が関わっている。そこに働きかけて、彼女たちが家族や地域の人達から支えられ、誇りを持って勉強に打ち込んでいく環境をつくっているところに共感します。」


■ 読書がひらいた海外への興味、そしてまた、読書を通して、日本への回帰

藤田さん自身、本を読むのが大好きな子どもだったそう。「生涯、いちばん多く読み返したのは「大草原の小さな家」シリーズです。小学生の頃、誕生日やクリスマスに一冊ずつ買ってもらって、それこそ何十回も繰り返し…。あんなに夢中になって読む本にはもう出会えないのではないでしょうか。小説でも漫画でも長編が好きで、「赤毛のアン」や「ベルばら(ベルサイユのばら)」、吉川英治さんの「三国志」などを読んで、そこから世界の歴史に興味を持ちました。」

そして「いつか中国に行ってみたい」という気持ちから中国語を学んだことが、東京海上日動に入社してからのキャリアにも大きく影響した。

「学生時代からつい数年前まで、長い休みで旅行するのは海外がほとんど。でも上海駐在から帰ってきてからというもの、日本への興味がどんどん高まってきたのです。そんな時期に読んだ武田恒泰さんの「日本人はなぜ世界でいちばん人気があるのか」は心に沁みました。日本の成り立ちや日本人のパーソナリティが他国とどう違うのか、客観的に比較されていて「やはり日本はすばらしいな」と再認識し、いかに自分が日本を知らないかにも気づかされました。」

毎週末、全国の拠点や代理店の社員が自発的に遠野に集まる。休暇で日本に戻った海外赴任メンバーの参加もあるという。

毎週末、全国の拠点や代理店の社員が自発的に遠野に集まる。休暇で日本に戻った海外赴任メンバーの参加もあるという。

東日本大震災の直後から、同社では数千人規模の社員が現地入りして、迅速な保険金支払いのための対応にあたった。5月からは瓦礫撤去などのボランティア活 動も開始。現在も、岩手県遠野市役所に届いた数十万冊の献本(津波で蔵書を失った図書館のために全国から贈られたもの)の仕分け活動を続けており、週末に は全国の拠点や代理店の社員が自発的に現地に集まる。「私が遠野に行ったのは10月でしたが、道中で見た黄金色の田んぼと広い空、遠い山々に「これが日本 の原風景か」と、ボランティアに行っているにもかかわらず、強く胸を打たれてしまいました。」


藤田桂子さん(右)と同じくCSR室の三觜英子さん(左)。いつも大変お世話になっております!

藤田桂子さん(右)とCSR室の三觜英子さん(左)。いつも大変お世話になっております!

読書好きの少女だった藤田さんが、今、ルーム・トゥ・リードを通じて少女の教育や図書室の支援に携わる。「全く意識していませんでしたが、どこかでつながっているのかもしれませんね。ルーム・トゥ・リードから年2回、詳細なレポートが届くのですが、支援する図書室や少女の近況だけではなく、カリキュラムや取り組みの内容も年々進化していることが書かれています。現地の状況が良く分かって有り難いです。」


マングローブの植樹を「地球の未来にかける保険」と位置づけ、100年続けることを目指して取り組む東京海上日動。継続して支援を行い、地域の人々とともに育てることの大切さを知る同社が、ルーム・トゥ・リードに寄せる期待は大きい。