AM 3:30


アラームの音で目覚める。

テントの中で寝袋に潜り込んだままアラームをリセット。

寝袋に首まですっぽりと入り込んでジッとしているのが気持ちいい。

少しも暑くはない。少し暖かいくらいでちょうどいい。

寝袋に入ったままでちょうどいい季節を迎えたのだなあ。

とアゴを寝袋にうずめる。

ウトウトしながらアラームセット。

セット時刻はAM4:30である。


アラームの音で目覚める。

寝袋から腕だけ出してアラームをリセット。

まったく寝袋の中から動けない。

眠るのに最適な温度と湿度。

家の布団じゃなくてテントの中の寝袋で毎日眠りたいくらい。

7年前にネパールのポカラで買ったフェザーの中古寝袋(ゴアテックス本物)今だ健在。

当時、僕としては大金の50ドルを払って手に入れておいてホントに良かった。

ウトウトしながらアラームセット。

セット時刻はAM5:30


アラームの音でいい加減に目が覚めた。

寝袋から這い出てバナナを食べていると、ボリュームのツマミをゆっくりと回していくようにダンスフロアの音が耳に入ってきた。

僕がグースカ寝ている間もゴアギルはブリブリでいい仕事をしていたようだ。

そろそろ行くぜ、とテントのジッパーを開けて外に出ると、??出入り口のところに人が寝ている。

今回一緒にやってきたTAKAデス君だ。

彼とは何度かキャンプをしているが、なぜか僕と同じテントで寝ようとしない。

たとえテント一張りでも!だ。

一人じゃないと眠れないのか、僕の事をゲイとでも思っているのか・・・。

まあいい。勝手にしやがれ!だ。


寝ぼけハイのままダンスフロアに突入して朝の体操よろしく腰を振って地面を踏みしめる。

夜明け直前という事もあってかフロアには三百人近い人達が集まって踊っていた。

朝の薄明かりの中でその効力を無くしかけているブラックライトの光がオボロゲにゴアギルの近くで揺らめいている。

ゴアギルはというと、ものすごくニヤニヤしながらDJブースからダンスフロアに向けてカメラのフラッシュ を光らせていた。


後からやってきたTAKAデス君から渡されたテキーラのキャップを開けて、そのキャップに酒を注いでキュっとあおる。スウィッグって奴だ。朝の酒はとても良く効く。

瓶を返す前にもう一杯。効く~。内臓が震えるようだ。暖かな明かりが腹に灯る。

調子に乗ってもう一杯あおってから踊りに行った。


カツンとくるよテキーラ!アミーゴ!サルー!猿猿!と毎度のことながら酒ノリブリブリの顔まっかっかで朝を迎えた。

昼近くなっても空は分厚い曇り空で少しも暑くない。これは踊るには最高のシチュエーションだった。

酒を飲みにアウトドアチェア-に戻り腰掛けると、目の前でドレッドの西成先輩がテキーラをグラスにジャブジャブ注いで「何だ?これ??」って顔しながらゴクゴク飲んでいた。

飲み倒しの僕と友人達。もう何も言う事はありません。

僕は厳かにテキーラをキャップで引っ掛けては何度もダンスフロアに戻って踊ったり、近くの森をウロウロして別の友人のテントを訪ねたりしながら楽しい時間をすごしつつエンディングを迎えました。


最後までゴアギルはゴリゴリした音を編み続け、極東の島のダンサー達をすっ飛ばしてくれたのでした。

ゴアギルさん、とても五十代とは思えませぬ。もちろん尊敬ですが、それ以上に驚きでした。

人に限界はないのか?きっとゴアギルに限界はないのだ。


電子音が止み、静けさを取り戻した会場では舞台が組替えられ、生歌や、バンドの準備が進んでいた。

僕は疲れ果てて地面に敷いた銀マットの上で丸まりウトウトしていた。

僕の隣には一緒にやってきた友人のMrシュガー。

どうやらシュガー氏は友人に会って話しこんでいるらしい。

二人は音楽の話、とりわけロックの話で盛り上がっている。

僕は夢うつつのままだが聞き耳だけはたっている。

どうやらシュガー氏の友人はこの後ステージで演奏するようだ。

ははーん。この人の演奏しているバンドがサヨコオトナラ なのだな。


このバンドの名は以前シュガー氏の口から何度か聞いている。

ロックな人生を歩んでいるシュガー氏のお気に入りとあればビッグ確定である。

僕は安心して銀マットの上で張り付くように眠りに落ちた。

なにせゴアギルの後なのだ。少し休憩が必要だったのだ。


ジンべの音で目が覚めた。

ステージの上で女性のボーカルがほとばしるように言葉を紡いでいる。

これか、この三人が「サヨコオトナラ」なのか。


その日、僕はゴアギルのべらぼうなトランスとサヨコオトナラの切れるような暖かさを知った。

なんて贅沢なイベントだったのだろう。

僕のレジャー運は螺旋をえがいて上がっているようだ。