根付「千万両」の件1。 | 根付・帯留 鹿角細工工房「鹿正洞」ブログ

根付「千万両」の件1。

根付の御注文を頂いた。

御題は「招き猫」。

 

「招き猫」ってのは、

言わずと知れた福招きの縁起物。

右手を上げているのは金運を、

左手を上げているのは人を招くとされる。

 

「招き猫」のルーツには

諸説有るようなのだけれども、

一般に豪徳寺起源とするものが有名。

 

江戸初期のこと。

彦根藩主・井伊直孝が

鷹狩りの帰路に

当時は荒廃していた豪徳寺の門前で

白猫に手招きされ、休憩する。

すると突然の豪雨となり、

一行は濡れずに済む。

直孝は恩に感じ、

多額の寄進で寺を再興。

井伊家の菩提寺とした。

住職は白猫の死後に招猫堂を建立して祀り、

後にこの猫の像が作られるようになった。

...というもの。

 

当然乍ら、依頼者さんは

財運廣進を御所望。

そこんとこを特盛りで、

こんなスケッチを描いてみた次第。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

命銘、根付「千万両」。

 

大判小判に首まで埋もれた三毛猫。

右手は招く仕草をしつつも、

左手共々お宝をがっしり抱えて離さぬ構え。

 

 

御存知の通り、

「招き猫」の意匠ってのは

基本的に定型化されているのだけれども。

僕は「既存の意匠を反復しない職人」。

世間が想像する、

あの「招き猫」まんまを

拵える訳には参らん。

 

つか僕、あの意匠ね。

あんまり納得行ってないのよ。

特に顔とか、

あんまり猫っぽくないでしょ。

滅茶滅茶「タレ目」だし。

外斜視気味に「虚空見てる感じ」だし。

どっちかと言うと、

あれ犬のパグとか狆系統の顔だよね。

 

猫ってのは、こうだべ。

 

 

目はどこかマジカルに。

ミステリアスに。

「呪具」なんだしさ。

 

口元ふんわり笑んでて。

顎から頬周り、

豊かに福々しく。

 

体系も二頭身にディフォルメして、

太っ腹な感じに。

 

「猫っぽさ」は大事にするんだけど。

この手のブツは、

無闇に写実的にすりゃ

良いってもんでもなくて。

適度に単純化/幾何学化/様式化

する必要が有り。

そこの匙加減が難しい。

 

 

これ今回、丸彫りなんではなくて。

まず首から下の大判小判土台部分を

黄牛角で拵えて、ゴールディに。

そこに鹿角製の白い頭部を

上から差し込む構造。

 

 

両手と尻尾も鹿角で拵えて、

土台に組み付けよう。

頭部下部には「紐孔」が開いてて、

ここに結んだ紐を土台背面の

「紐通し」から出す。

 

 

 

今回は象嵌を多用する予定で、

これの出来具合が大変肝要。

 

上から順に、

耳内側の赤い部分。

鳥嘴か貝殻を。

 

頭頂部の三毛模様。

黄牛角か鼈甲と水牛角の多重象嵌。

 

目玉も黄牛角か鼈甲と

水牛角の多重象嵌。

 

髭も何か色材を埋め込もう。

鼻にも何か入れるか検討中。

 

大判の「千万両」は黒水牛角を。

四角い一朱銀はグレーの牛角。

脇の寛永通宝と背面の天保通宝は

銅だもんで。

材の茶色んとこを配置出来れば

そのままで。

出来なきゃ茶の牛角を

組み付ける算段。

 

 

今回も花台を付けようと思う。

 

 

そんな意匠。

 

依頼者さんの「GO」を頂き次第、細工に入る。

 

続く。

 

 

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