ボルドー、ワインの歴史 その1
ボルドー、ワインの歴史 その1
ゲルマン人によりヨーロッパの多くの地が支配されていた4世紀後半、中央アジアから騎馬民族であるフン族が襲来します。
これに伴いゲルマン人の諸族が追い出される形で各地へ移動、侵略を開始します。歴史上ゲルマン民族の大移動と呼ばれるものです。
北ガリアにはフランク族、中部ガリア(現在のフランス)にはブルグント族、ブルタニア(現在のイングランド)にはアングロ・サクソン族といったゲルマンの諸族が領土を確保することとなります。
ガリアについては、西ローマ帝国の支配下にあった451年にフン族の長、アッティラに攻め込まれますが撃退に成功(カタラウヌムの戦い)します。その後もフン族の脅威は続くのですが、453年頃フン族の長、アッティラが死亡し、フン族は中央アジアに撤退し脅威は去ります。
その後、支配者であった西ローマ帝国は消滅し、新たに支配者となったのはゲルマン人の西ゴート族であり、西ゴート王国が出来上がります。
他方、現在のフランス、ベルギー国境辺りを領地としていたフランク族のクロヴィスは、かっての西ローマ帝国軍閥を破りガリア北部を手中に収め、中部ガリアを治めていたブルグント族の王女と結婚し、507年には西ゴート王国を打倒し、北海からピレネー山脈に至る一帯を支配します。
これにより、ボルドーを含むアキテーヌの地はメロヴィング朝フランク王国、クロヴィス1世の領地となり、以降300年間メロヴィング朝は続きます。
尤も、スペインのバスク人の侵入を受けたり、ヴァイキングの侵入を受けたり、イスラム勢力の侵入を受けるなど安定したものではなかったようです。
安定化を迎えるのは、カール大帝(仏語シャルルマーニュ、在位768年~814年)の御世のようです。
カール大帝は、広い領土を支配するために全国を州に分け、それぞれの州に「伯」(Comes)という長官を配置し、地元有力者を任命して軍事指揮権と行政権・司法権を与えます。
ボルドーを含むアキテーヌの地は土着貴族の勢力が強く、カール大帝は息子ルートヴィヒをアキテーヌの伝統に従って育て、アキテーヌの領主とした程であり、支配には苦慮したようです。
伯に関してはラテン語の廷臣が語源であり、公はラテン語の軍隊指導者が語源と説明するものもありますが、明確な区別は不明です。公について辺境警備の役割を担い公国と称していたようですので独立色が強かったのかもしれません。中心地には伯を置いたようです。
青色~カール大帝即位時の所領。
赤橙~カール大帝征服領。
黄橙~カール大帝勢力範囲
赤~ローマ教皇領
ローマ時代には葡萄栽培がボルドー周辺で行われ、ガリア北部(現在の北フランスやベルギー、ドイツなど)にワインが輸出されていたようです。
しかし、西ローマ帝国の撤退後の度重なる異民族の侵略を受け葡萄栽培も衰退し、記録が残されていないようです。
9世紀頃には、ボルドーはジロンド河・ガロンヌ河以南の領有権はガスコーニュ公国が有し、同以北はアキテーヌ公国が有していたようです。
当時ボルドー周辺で造られたワインは、主にアイルランドと、イングランド西部のケルト人達によって飲まれていたようです。イングランド東部は、フランス北部やライン河からもたらされたワインを飲んでいましたので、フランスワインの輸出に関しては非主流と言ったところでしょうか。
11世紀半ばにガスコーニュ公家が断絶し、ポアティエを首都とするアキテーヌ公国が、ガスコーニュ公国を併合します。
アキテーヌ公国は大いに繁栄し、フランス王よりも豪勢な暮らしをしていたとされます。宮廷では洗練された享楽的な貴族文化が花開き、カペー朝の粗野で厳格なスタイルとは異なっていたようです。
ちょっと確認
地理的名称が入り乱れておりますので、頭の整理を。
ガスコーニュ公国 アキテーヌ公国(ガスコーニュ併合後)
ギィエンヌ(Guyenne) ポワティエ伯領首都ポワティエ(ポワトー)
時代により、ポワトー、アキテーヌ、ガスコーニュの領域が異なり、同一時期の一帯を表示した地図は見つけられません。
概ね、ポワトー伯領、南側にアキテーヌ公領、さらにジロンド河・ガロンヌ河を挟んで南側がガスコーニュ公領と思われます。
11世紀半ばにアキテーヌ公国が、ガスコーニュ公国を併合します。
フランスのフィリップ2世とイングランドのジョン王が争い、ジョン王に残された南西フランスの領地がかっての広大なアキテーヌの一部、ギィエンヌ。
ギィエンヌは13世紀半ばからの呼称。つまり、ボルドーはガスコーニュ又はアキテーヌ及びギィエンヌに位置するとの表現が出てくることとなります。
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