シャトー買収
シャトー買収
近年、ボルドーのシャトーに五星紅旗がたなびいているようです。中国企業のシャトー買収が進み、下記のシャトーが中国企業に買収されたようです。
ボルドーワインの輸出量の約20%は中国に輸出され、シャトー・ムートン・ロートシルトに至っては、20%から25%は香港・中国向けとなっていると言われています。
シャトー・ラトゥール・ラギュン(ラガン)
Chateau Latour Laguens
AOC ボルドー・シュペリュール
畑 面 積 30ha(全敷地60ha)
年間生産量 16万本
作付割合 カベソー40% メルロー60%
発酵・マセレーション ステンレスタンク
樽 熟 成 10ケ月~12ケ月
荒廃シャトーを2008年、中国のロンハイ・インターナショナル・トレーディング社買収。
シャトー・リシュリー
Chateau Richelieu
AOC フロンサック
年間生産量 6.5万本
作付割合 カベルネ・ソーヴィニョン23% メルロー70%
マルベック 7%
平均樹齢 35年
植栽密度 6,000本/ha
発酵・マセレーション ステンレスタンク
新 樽 率 33%
樽 熟 成 12ケ月
2009年、ホンコン&インターナショナル社が、シャトー株式の過半数を取得。2005年、2006年ヴィンテージはパーカー・ポイント90点超えとか。
買収価格は1ha当たり3万ユーロ。1991年当時の半値に値下がりとか。
シャトー・シュニュ・ラフィット
Chateau Chenu Lafitte
AOC ボルドー・シュペリュール
Commune Bourg
オーナー 曲乃杰(チュー・ナイジエ)
2010年取得
畑 面 積 40ha
作付割合 カベルネ・ソーヴィニョン 5% メルロー75%
カベフラ20%
シャトー・ローラン・デュコス
Chateau Laulan Ducos
シャトー·ド·ラ·サール
Chateau de la Salle
Chateau de Viaud
AOC ラランド・ポムロール
畑 面 積 20ha
作付割合 カベルネ・フラン27% メルロー70%
カベルネ・ソーヴイニョン 6%
2001年 PP84~86、2005年 PP87、
2007年 PP87~88
2011年、 groupe COFCOが300万ユーロ(1ha15万ユーロ)で買収。
Chateau de Grand Moueys
カディヤック AOC コート・ド・ボルドー
旧 AOC Premieres Cotes de Bordeaux
畑 面 積 48ha、白は12ha(全敷地170ha)
年間生産量 5万本
オーナー 張金山(ジャン・ジンシャン) 2012年取得
作付割合 メルロー39% カベフラ26% カベソー35%
植栽密度 5,500本/ha~6,500本/ha
収 穫 機械摘み
発酵・マセレーション ステンレスタンク、20日~30日間
低温マセラシオン
新 樽 率 33%
樽 熟 成 8ケ月~12ケ月
2000年 PP87、2005年 PP88
Chateau du Grand Moueys 2011.12記
2,000円弱位
Wine Searcher 平均 1,567円 2013.05補記
シャトー・ド・グラン・バーネット
Chateau de Grand Branet
カディヤック AOC コート・ド・ボルドー
旧 AOC Premieres Cotes de Bordeaux
畑 面 積 2.7ha
年間生産量 1.3万本
オーナー 曲乃杰(チュー・ナイジエ)
2012年取得
作付割合 メルロー72% カベソー28%
発酵・マセレーション ステンレスタンク
新 樽 率 20%
熟 成 16ケ月。樽熟成は8ケ月
Chateau Branda
ピュイスガン・サン・テミリオン
AOC Puisseguin St-EMilion
畑 面 積 6.0ha
年間生産量 3万本
オーナー 曲乃杰(チュー・ナイジエ)
2012年取得
作付割合 メルロー60% カベフラ10% カベソー30%
飲み頃のづく期間/ 収穫後2年から8年
20010年 PP87、2003年 PP87~89、2005年 PP87
シャトー・ロレット
Chateau Laurette
AOC ボルドー・シュペリュール
オーナー 曲乃杰(チュー・ナイジエ)
2012年取得
シャトー・テボー
Chateau Thebot
AOC ボルドー
畑 面 積 12.5ha
オーナー 曲乃杰(チュー・ナイジエ)
作付割合 メルロー70% カベソー20% カベフラ10%
樽 熟 成 12ケ月~24ケ月
詳解はこちら
シャトー・レゾンガー
Chateau Lezongars
カディヤック AOC コート・ド・ボルドー
シャトー・モンロ
Chateau Monlot
AOC サンテミリオン
コミューン Saint Hyppolyte
畑 面 積 7ha
年間生産量 3.2万本、他にキュヴェ1.2万本
作付割合 メルロー70% カベフラ25% カベソー 5%
新 樽 率 33%、1年落ち33%、2年落ち33%
樽 熟 成 15ケ月
2011年、中国の4代人気女優の1人ヴィッキー・チャオ(趙薇)夫妻が400万ユーロ(約4億3500万円)で取得。
Chateau Monlot Capetの兄弟シャトー
● シャトー・モンロー・キュヴエ・プレステージ
Chateau Monlot Cuvee Prestige
畑 面積 7ha
平均樹齢 30年
新 樽 率 20%(全体の10%)
樽 熟 成 50%
シャトー・ラガロス
Chateau Lagarosse
カディヤック AOC コート・ド・ボルドー
シャトー・トゥール・サン・クリストフ
Chateau Tour Saint Saint Christophe
AOC サンテミリオン
シャトーの取得
フランスに於いて、外国人がシャトーを取得するのは難しいと言われています。と言うのはフランス政府が農地売買に関して一定の制限を行なっていることによるようです。
農業大国フランスにおいても自国の農家の保護を図らねばならず、1960年に農業方向付け法が制定され、農業者の自立と農業経営規模の拡大の推進を図ることとされ、SAFER (農村土地整備公社)が創設されます。
農地の売買にはSAFERが介在することとなり、畑が売りに出されたときに先買権を有するSAFERが先行取得することとなります。
先行取得された葡萄畑は、同一地域の所有者達に優先的に売却されることとなります。仮に購入希望者が現れない場合は、対象地域を広げていくこととなり、それでも希望者が現れない場合に初めて新規参入等を認めるといった方式を採っているようです。
結果的に、外国人が新たにシャトーを購入するというのは難しいようです。
このように農地の取得制限を行なった場合は、不動産としての換価価値が減少するため担保価値は著しく減少することとなり、おそらく日本の農地法と同様農業協同組合系金融機関(クレディ・アグリコル)以外からの融資を受けることは出来ないものと思われます。
結果、十分な資金を有しない既存のヴィニュロン達は、シャトーの購入が困難となるのではないでしょうか。
このSAFERの制度は反面、一度シャトーを購入した者にとっては外国人であろうとも、同一地域でのシャトーの取得が容易となるため、資金力に余裕のある者にとっては経営拡大のチャンスともなるわけで、更に中国のシャトー買収が進むのではないでしょうか。
詳しいデーターがないのではっきりしたことは言えないのですが、今のところボルドー右岸のラランド・ポムロール、フロンサック、アントル・ドゥ・メール、サン・テミリオン、AOCメドックのシャトーが買収されているようであり、やがてマルゴーやサン・ジュリアンといった地域でも買収されることになるのかも。
ところで、サントリーが取得したシャトー・ラグランジュ、シャトー・ベイシュヴェル、シャトー・ボーモンといったシャトーは、所有者である会社の株式の取得といった方式で経営権を手に入れているようです。これらのオーナーはフランスの保険会社が投資として取得したものであったため、投資効果ありとの判断で高額で取得できたものと思われます。
前述の中国企業の買収においても、畑の所有権を会社組織が有する場合は株式の取得により、個人経営の場合はSAFERを通じての取得と思われます。
もっとも、シャトー経営会社の株式の取得が自由とは考えにくいので、前述のSAFERが関与するものと思われます。
買収に当たっては畑の取得(商標権とセット)、醸造設備、建物、バック・ヴィンテージ等在庫ワイン、場合によっては特殊な葡萄樹、土着酵母等様々な買収対象を含む複雑な買収になるのでしょうね。
日本の東光ハウスが取得したシャトー・シトランは売却されしまったようで残念なところです。
新規シャトーの創設
前述のようにシャトーの買収が困難となれば、新たに農地の取得(前述のとおり困難ですが)をして葡萄樹の植樹といった方法も考えられるのですが、現状では植樹権制度(栽培制限を規定した制度)があるため(注 2016年1月以降制度変更の予定)、農地を取得し、葡萄樹を植え付けて新たにシャトー経営を行なうのは困難な状況のようです。
結果的にシャトー経営を行なうためには、既存シャトーを買収するか、既存シャトーの葡萄畑の一部を取得してシャトーを創設するしかないようです。
その他
フランスにおいては高級ワインを除き、所謂テーブル・ワインについては供給過剰であり、1976年から新しい植樹制限、抜根奨励金(抜根~葡萄樹の引き抜き~日本での減反政策に相当)制度が導入され、また、醸造したワインを工業用・飲料用アルコールに強制的に蒸留するなどの生産量抑制の政策を採ってきているところです。
しかしながら、ワイン消費量の50%を占めると言われるテーブル・ワインの生産量は、各種補助金制度の為、生産量の抑止効果が低く、大幅な減少が見込めず、抜根奨励金は、2010 年度に終了し、工業用アルコールに転用する措置に対する補助金は2012年度までに段階的に廃止され、栽培制限は2015年12月末日(場合により2018 年12 月末日まで延長の可能性も)をもって終了しそうです。これらはEU 共通農業政策(PAC)の転換によるものであり新たな施策が実施されつつあるようです。
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