葡萄の圧搾(醗酵後) 解説 | ろくでなしチャンのブログ

葡萄の圧搾(醗酵後) 解説

                  それとなく 12 醗酵後圧搾

 

 

 赤ワインの醗酵は、色や複雑な味を抽出するため葡萄の果皮や種子とともに醗酵タンクで行われます。主醗酵が終わると、醗酵槽下部には葡萄果皮や種子等の固形物が沈殿していますので分離する作業が必要となります。醗酵果汁は発酵タンクの底部からバルブを開いて引き抜きますがこの醗酵果汁は引抜酒(Vin de goutte~ヴァン・ド・グッド又はフリーラン、又はフリーランジュース又は自然流化液及び一番果汁)と呼ばれ、残った果皮等も圧搾して醗酵果汁が得られますが、これを圧搾(あっさく)酒(Vin de press~ヴァン・ド・プレス又はプレスワイン又は圧搾果汁及びプレスジュース)と呼んでいるようです。

 

 醗酵果汁の分類では、フリーランがあり、次に半日ほどタンクからジワジワと流れてくる醗酵果汁を「タンクドレイン」、次に圧搾機(プレス機)に「もろみ~後掲。」を入れてから蓋を閉めるまでに流れる醗酵果汁を「プレスフリーラン」と呼んで区別する場合もあるようです。
 

 醗酵果汁が引き抜かれた後には大量の果皮等が残る訳ですが、これは「もろみ」と呼ばれているようです。このもろみを醗酵タンクの底部から取り出すこととなるのですが、大概は醗酵タンクの下部に取出口が付いているようで、そこからシャベルで掻き出すこととなりますが大変な重労働のようです。

 また、醗酵タンク下部は醗酵により生じた二酸化炭素が充満していることもあり危険なこともあるようです。一部のシャトーでは醗酵タンクの下部をクレーンで釣り上げて逆さまにして掻き出しているといった手法もあるようですし、ポンプで汲み出す方式もありますが、ポンプを使うとし固形物に圧力が加わり収斂性の強い渋み(主に潰れた種子から)が抽出されるデメリットがあるようです。
 

 取り出されたもろみは醗酵果汁が含まれているため「搾る」ことになるのですが、この作業を圧搾と呼んでいるようです。圧搾場所まで、もろみを荷車で運ぶこともあるようですが、醗酵タンクごとフォークリフトで運んでいるシャトーもあるようです。

 

 昔は大きな桶のようなものに蓋をして、重りを乗せ、上から蓋を押し下げてヴァン・ド・プレスを得ていたようです。もちろん木質であり全体は楢の木が使われ、加圧するための回転棒は丈夫なサクランボの木を使い、桶部分はモミの木を使っていたようです。モミの木を使うとモミから出るタンニン分の染み出しが少ないらしくモミ以外の部材では嫌なタンニンが染み出してしまうのだそうです。

 

 ところで、アルザス地方では新人さん用に特殊な「圧搾金ばさみ」なる器具?があったそうです。

 話はこうです。圧搾作業に入ると古株が突然「あっ ! 大変だ、圧搾金バサミが無い。」周りの古株も「仕事にならないじゃないか ! 」そこで、かの古株氏は新人に「悪いけど隣の家に行って、大至急圧搾金バサミを借りて来てくれ。」頼まれた新人君は急いで隣の家へ圧搾金バサミなるものを借りに走ります。話を聞いた隣人は「そりゃー大変だ。早く持って行ってやりなさい。」といって物置から、なにやら大きな袋を取り出してきました。新人君はたいへん重い「圧搾金バサミ」をもって戻ります。なにせ急がされているので息をきらして作業場に御帰還です。それを見た古株達は大笑いをします。なんと袋の中身は石だらけなのです。これは新人に対する恒例行事だったようで辛い労働のささやかな楽しみだったようです。もっとも「圧搾金バサミ」が圧搾用の重りとして使われたかどうかは判りません。

 

 圧搾機の押し下げ装置はネジ式になっており人力で回していたようですが、これはこれで圧搾加減が調整できますので優れ物だと思いますが、なんでも機械化ですので今はシャトーの展示室にあることが多いようです。


 この圧搾機は縦方向から力を加えますので縦型、垂直式等呼称されるようです。圧搾機械はやがて水圧を利用したものも使われだしていきます。

 現在は横型が主流のようで、水平式とも呼ばれます。ブーハー型とバスラン型に分類されているようです。

 

1. ブーハー型 

 空気圧式膜圧搾機と呼ばれ、日焼けサロンに置いてある機械を大きくしたような形です。円筒形の機械が横たわっています。中にバルーンのように膨らむ装置があり、空気を膨らませることにより、もろみが穴のあいた側板に押し付けられプレスワインが染み出る仕組みのようです。単純に加圧し続けると効率が悪いので円筒が回転し、もろみが撹拌されるようです。フランスのウイルメス社の製品が有名なようです。

 

 加圧が優しくできるので種子や果皮にダメージを与えることが少ないので非常にクリアーなキメの細かい醗酵果汁を得ることが出来、特に白ワインに向いるている、とされていますが赤ワイン用にも使われています。

 空気圧を利用していますので、プヌマテイック方式圧搾機と呼ばれることもあるようです。

 プヌマテック(空気圧式)と言えばラブホテルの会計清算の際に筒に入って送られてくるのでお馴染みですよね。

 ついでに、プヌマテイック利用で有名なのは、気送管を設置して速達用郵便書留を送ったもので、1860年代に実験的に導入され、その後好評を得て1890年代にはパリ全域をカバーしていたらしく空色の紙を使っていたので「ブルー~この場合フランス語BLEU。英語はBLUE。」と呼ばれていたそうです。残念ながら1984年に廃止されたようです。話を本筋に戻しましょう。

 

2.バスラン(Vaslin)型

 フランスで古くから使われており、スクリュー式圧搾機とも呼ばれており、ゆっくり回転しながら徐々にドラム内の圧力を上昇させて(押し込んで行くものと思われます。)搾汁します。モーターの力で強い圧力がかけられ沢山のプレスワインが採れますが、種子は醗酵時に多くの水分にさらされていますので、以外に柔らかくなっており強い加圧により収斂性の強い渋みが抽出されるおそれが強いとも言われています。ちなみにバスランは会社名です。

 

プレスワイン

 プレスワインは一般的に、果皮や種子に含まれるうま味と、複雑なミネラル感が引き出されると言われており、濃厚でタニックさを求めるため、骨格を付けるため、凝縮感を与えるため、しっかりとしたストラクチャーと豊かな味わいを追求して、といった理由でフリーランと共にブレンドされる場合があるようで、フリーランだけで作られたワインが高品質であり、プレスワインを加えたから悪いワインとはならないと思います。

 有名シャトーでも、フリーランとプレスワインを各々別熟成を得て、最終段階でアッサンブラージュすることがあるようです。

 

 圧搾ですから、加圧にも区分があるようで、搾圧ごとに細かく分けて(フラクション)熟成させるようで、最大で5つに分類することもあるとか。分類するのは圧力ごとに風味が異なることによるのですが、一般的に圧力を強くかけるほどタンニンなどのフレーバーが増すのですが、同時に雑味も強くなるそうです。

 ブーハー型で最大約2気圧の加圧が可能のようで、0.15気圧という超低圧でプレスされたものが「ファーストスクイーズ」。0.15気圧から1気圧でプレスされたものが「プレス」。2気圧までのプレスが「プレス2」と呼ばれているようです。


 

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