CH ムートン・ロートシルト 1級昇格ー2
Chateau Mouton Rothschild
シャトー・ムートン・ロートシルト
1級 PP1級
1級昇格 PART-2
ムートンの畑は少なくとも1725年には、かのセギュール公の手を離れジョセフ・ド・ブラーヌ男爵の所有となっていました。男爵はこの地で本格的に葡萄栽培を始めました。男爵の後を継いだのはエクトール・ド・ブラーヌでした。エクトールはボルドーの地に初めてカベルネ・ソーヴィニョンを植栽したとされています。
それまでは、マルベック、プティ・ヴェルドーが主体だったとされています。エクトールは様々な改革を行ったようですが、他にもシャトーを保有していたためムートンに掛かりっきりとはいかなかったようです。
ちなみにエクトールは「ワインのナポレオン」と呼ばれていた様です。
時は流れ、1830年にはパリの銀行家イサク・トゥレに120万フランで売却されています。イサクも大したやる気もなかったようであり、その後1851年にはウドン粉病の発生による被害を受けるなどの事態となり1853年にナサニエル・ロスチャイルド男爵が取得します。
いずれにせよナサニエル男爵取得当時のムートンは品質的に他のグラン・ヴァンに匹敵するものではなかったと思われます。
しかし、1855年の格付けはナサニエル男爵にとっては面白くなかったに違いありません。それが、「われ1級たり得ず、されど・・・・」 の文句に繋がったようです。
第1級昇格運動に関しては118年、親子4代に渡り一国の国家予算あるいはそれ以上を費やして昇格を果たした等の記述をみますが信憑性は疑問です。
1855年にナサニエル男爵がムートンを取得した年に、男爵は落馬事故にあい身体障害者となり、その後、目を病み、ほとんど失明状態となり1870年には亡くなっています。
ですから1級昇格運動を積極的に行ったとは考えにくいのです。ナサニエル男爵死亡により、2人の息子、兄のジェームズ・エドゥアールと弟アーサーもシャトーには関心を示さなかったようであり、1872年に兄ジェームズの子供アンリ・ジェームズ・ナサニエル・シャルルが生まれました。
アンリもまた葡萄園には興味を示していなかったようです。アンリの子供であるフイリップ・ド・ロートシルトが僅か20歳でムートンを任せられるようになるのです。
つまり、取得したナサエルの曾孫にあたり4代目となるフィリップの登場となります。記述のような状態でしたから1級昇格運動を積極的に行ったとは考えられないのです。
1920年頃に若きフイリップが1級シャトー4者に働きかけ、苦労の揚句いわゆる「5者同盟」を成立させました。眼目はシャトー元詰めの徹底であり、定期的に集まり、意見交換を行い、商取引や技術分野における情報交換を行うというものでした。
またまた時は流れ、フイリップが52歳となった年に異常事態が発生します。シャトー・ラフィットの新しいオーナーである15歳年下のエリー・ド・ロスチャイルドが「5者同盟」の緊急総会を開きシャトー・ムートンをメンバーから外したとされたからです。理由は1級シャトーではないということでした。
烈火のごとく怒ったフイリップは、ならば1級になるしか道はないと確信し、1級昇格運動を本格的に働きかけたのです。実に1855年格付けから100年近い月日が流れた時のことです。
フイリップ男爵は、まず有名無実であったクリュ・クラッセ連盟(ボルドー格付けシャトー加盟)のオーナー(中には没落シャトーもあった)を説得し続け、1959年に僅か2票差でしたが格付け変更申請の支持を取り付けました。続いて諮問機関である全国原産地呼称管理機構(INAO)にへ格付け変更申請を行ったのですが、ここでも紛争が勃発し、ついには農業省が最高審議機関として調停に乗り出す有様でした。
しかし、問題は解決するどころか混迷を極めて行ったのです。ところが幸いなことに、かってフイリップ・ロスチャイルド家のトランスオーシャンという会社の社長であったジョルジュ・ポンピドーが大統領に就任したのです。
すると期を見るに敏な農業省の役人が急に格付け問題解決へ動き出したのです。結果的に1855年同様ボルドーの商業会議所に下駄は預けられたのですが、内輪もめがワイン販売に悪影響を与えることからマルゴー、ラトゥール、オー・ブリオン、ラフィットの4者が折れ、ムートンの格上げ申請に異議を述べない旨のアピールを受け、1973年6月21日の昇格承認署名へと続きます。
実に118年後の変更です。1973年ヴィンテージには、「今1級なり、過去2級なりき、されどムートンは変わらず」の文言が記されているとともに、1973年プレミエ・クリュ・クラッセと高らかに謳っています。
①Premier ne puis,second ne daigne,Mouton suis
②Premier je suis, second je fus,Mouton ne change
①と②が知られているところですが、エチケットに表記されているのは②のようです。
premier je suis second je fus mouton ne change
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