CH ラフィット詳解 その1
シャトー・ラフィット・ロートシルト その1
Chateau Lafite Rothschild
AOC Pauillac 1級 PP1級
~「ラフィット」はガスコーニュ語の「La Hite~ラ・イット~小高い所」 に由来し、村で一番高い丘に所在。
ロートシルトは人名に由来。
セカンド Carruades de Lafite カリュアード・ド・ラフィット
~葡萄畑の区画「カリュアドの丘」に由来。年間生産量28万本
サード Anseillan アンセイヤン
畑 面 積 112ha(全敷地は162ha) 大区画~3、小区画~100
~サンエステフの4.5haの畑は1855年格付け時から現在までラフィット・ロートシルト
のワインに使われており、現在でも例外的にAOC Pauillacを名乗れるとされます。
年間生産量 18万本から24万本
隣 接 畑 ムートン・ポンテ・カネ
オーナー ドメーヌ・バロン・ド・ロートシルト(DBR社)
作付割合 カベソー70% メルロー25% カベフラ 3% プティ・ヴェ2%
平均樹齢 40年
植栽密度 7,500本/ha~8,500本/ha
収 量 48hl/ha
土 質 等 表土は砂利質、下層は石灰質。
タ ン ク ステンレスタンク、木製タンク、コンクリートタンク(メルロー用)
収 穫 手 摘。
発酵・マセレーション 18日から24日間
新樽比率 100%
樽熟成 18ケ月から20ケ月(最長30ケ月)
コラージュ す る。
濾 過 しない。
有機栽培 2021年に全面的
アッサンブラージュ
基 準 カベソー 80%から95% メルロー 5%から20%
カベフラ&プティ・ヴェ 3%
1961年 カベソー100%
1971年 カベソー70% メルロー25% カべフラ3% プティ・ヴ2%
1994年 カベソー ほぼ100%
1995年 カベソー75% メルロー17% カベフラ 8% 全収量の33%
1996年 カベソー83% メルロー 7% カベフラ7% プティ・ヴ3% 全収量の38%
1998年 カベソー81% メルロー19% 全収量の34%
2000年 カベフラ55 メルロー40% カベフラ 5%
2001年 カベソー 86.5% メルロメー13.5%
2002年 カベソー87% メルロー9.5% カベフラ3.5%
2003年 カベソー86% メルロー 9% カベフラ 3% プティ・ヴ2%
2005年 カベソー89% メルロー11%未満 プティ・ヴェ 少々
2006年 カベソー82% メルロー16% プティ・ヴェ 2%
2007年 カベソー84% メルロー15% プティ・ヴェ 1%
2008年 カベソー83% メルロー13% カベフラ 4%
2009年 カベソー82.5% メルロー17% プティ・ヴェ 0.5%
2010年 カベソー87.2% メルロー12.8%
2011年 カベソー80% メルロー20%
2012年 カベソー91% メルロー8.5% プティ・ヴェ0.5%
2013年 カベソー98% メルロー 2%
2014年 カベソー87% メルロー10% カベフラ 3% 12.7%/ABV
2015年 カベソー91% メルロー 9% 12.8%/ABV
2016年 カベソー92% メルロー 8% 13.3%/Abv、pH3.65 IPT74 プレスワイン15%
2017年 カベソー97% メルロー2.5% プティ・ヴェ0.5% 12.8%/ABV
2018年 カベソー91% メルロー8.5% プティ・ヴェ0.5% 13.3%/Abv
2019年 カベソー94% メルロー 5% プティ・ヴェ 1% 13.4%/Abv
2020年 カベソー96% メルロー 3% プティ・ヴェ 1% 12.8%/ABV
2021年 カベソー92% メルロー 7% プティ・ヴェ 1% 12.6%/ABV
2022年 カベソー94% メルロー 5% プティ・ヴェ 1% 13.6%/ABV
特 徴 フィネスと力強さが融和したワイン
香 り 鉛筆、黒鉛、西洋杉、バニラ、カシス、 黒系果実、ミネラル、花、アスファルト、ハーブ、タバコ、
予想される飲み頃 収穫後10年から50年~ボルドー第4版
飲む時期、予想される成熟度、デカンティング時間
ラフィット・ロートシルトは早めに飲むワインではありません。少なくとも15年のセラーリングが求められます。勿論ヴィンテージによって多少異なります。
ラフィット・ロートシルトは、15年から60年間美味しくいただけます。若いヴィンテージは3時間から6時間ほどのデカンティングがお勧めです。これにより、ワインは香料を柔らかく開きます。
出典 The Wine Cellar Insider
マリアージュ
シャトー・ラフィット・ロートシルトは、子牛肉、豚肉、牛肉、子羊肉、鴨肉、狩猟肉、ローストチキン、ロースト、蒸し煮、グリル料理など、あらゆる種類の古典的な肉料理と組み合わせるのが最適です。
シャトー・ラフィット・ロートシルトは、アジア料理、マグロ、サーモン、マッシュルーム、パスタなどの豊富な魚のコースと組み合わせるとも効果的です。 出典 The Wine Cellar Insider
※ 樽はポイヤックに自社工房を有し、5人の職人が年間2千個の樽を作り、グループ内の需要を満たしているそうです。
ボルドーで最も有名なシャトーでありワインのラフィット・ロートシルトは、エレガントで小ぶりでシンプルなラベルとともに、その名は富や格式、歴史、敬意、そして特筆に値する長寿の代名詞となっている。
しかし、1975年以降は毎年最高級のラフィットを生み出しているものの、1961年から1974年までの成績は、一級シャトーとしては驚くほど凡庸だった。あの頃のラフィットをテイスティングしたワイン評論家たちがなぜもっと異を唱えなかったのか、いまだに謎である。シャトーの公式発表は決まって「当時は軽くてエレガントなスタイルだったため、ブラインド・テイスティングでは、もっと大柄でたくましいワインに負けたのだ」なのだが、そういう事情があったのは認めるにしても、である。ラフィットの凡庸さは1971年、1970年、1966年、1961年、1949年、1945年といった優良なヴィンテージにおいて際立っていた。驚くほど色がなく、適度にドライで、オークの樽香が過剰で、異常に酸が強かったのである。それどころか、1974年、1971年、1969年などは、まったくの失敗作であるのに、ラフィットの名をつけて高値で出荷された。
こうした事態が生じた理由をロートシルト家が明かすことはあるまいが、1975年以降は成功するようになったのだから、1960年代から1970年代前半にかけての問題は次のようなものだったのだろう。
第一は、オーナーの不在だ。当時オーナーはパリに住んでいたのでたまにしか監督にやって来なかったのだが、1975年以降は熱心でこだわりのあるエリック・ド・ロートシルトのおかげで確かにラフィットの運営陣は勤勉になった。
第二に、ラフィットのワインは樽熟成が長すぎた。昔は往々にして最低でも32~36ヶ月は熟成させていたのだが、現在では最長でも20~30ヶ月である。この変更のおかげでフルーティさや新鮮さが増したのは間違いない。
第三に、現在の醸造スタッフの方が、意識的に葡萄の収穫を遅らせ、より熟したブドウから、より酸の弱いワインをつくろうとしている。選別プロセスが以前よりも厳しくなったのは間違いない。1980年代後半の豊作年では毎回収穫の半分を除去していたし、1990年以降はなんと収穫の60%以上を除外することも珍しいことだはなくなった。除去したワインはバルク売りしたり、セカンド用に格下げしている。
最後に、ラフィット・ロートシルトは、瓶詰めにかける期間が短くなってきている。根拠のない報告ではあったものの、以前から言われてきたように「ラフィットは瓶詰めにだらだらと8~12ヶ月もかけることが多い」というのが本当なら、許容範囲を超えるほどのボトル・バリエーションが生じていたことだろう。今日では、すでてのワインが2~3週間で瓶詰めされている。
一昔前までの経緯はさておき、ラフィット・ロートシルトはいまや心動かされるワインを生み出している。品質の変化が明確になったのは1975年だが、シャルル・シュヴァリエが招集された1990年代半ばにはその変化がさらに顕著なものとなった。1981年以降のラフィット・ロートシルトは、2001年、2000年、1999年、1998年、1997年、1996年、1995年、1990年、1988年、1987年、1986年、1983年、1982年、1981年のような年に、メドックで最良のワインを産してきたと言ってもよいかもしれない。
~ボルドー第4版
一般的な評価
ラフィットのワインは1974年までは概して凡庸だったが、1975年から1990年代の初頭にかけて大幅に改善され、1994年以降は最上のボルドーの仲間入りをしている。事実、今日ではボルドーの最も偉大なワインの1つと考えられている。フィネスと力強さが見事に融和したワインなのである。私自身を含めて、評論家たちはこのポジティブな傾向を賞賛してきたわけだが、忘れてはならない。このシャトーは単にその神秘的な地位と、市場における価格に恥じない生き方をしていることだけのことである。ラフィット、それも特により最近のヴィンテージのものを買えば卓越したワインを手にできることは確実だし、与えられる限り最上の味わいを経験できるものと期待できるが、価格が価格だけにこのワインに手が届くのは最富裕層のみである。お値打ち品を探している人はほかのワインに関心を向けたほうがよいだろう。もっとも、このシャトーのセカンド・ワイン、カリュアード・ラフィットの、とりわけ1990年代半ば以降のものは関心を抱くだけの価値があると注記しておく。 ~ボルドー第4版
シャトー名のロートシルトはご存知ロートシルト家によるものです。所有者であるDBR社も日本語表記は「ロートシルト」としています。
とすると、「ラフィット」はフランス語読みで、「ロートシルト」はドイツ語読みとなります。フランス語読みだと「ロッチルド」、英語読みだと「ロスチャイルド」となります。
ロートシルト家(財閥)は初代がマイヤー・アムシェルといい、ドイツのフランクフルト出身ということもあり、同地に強い愛着を持っていたことでも知られ、ロートシルト名も、もともと意味は「赤い表札」であり、家名を創設(ロートシルト)した時に住んでいた家に赤い表札(赤い盾説がありますが、は否定。)が掛けられていたことによるとされています。そんな強い愛着から敢えてロートシルトを名乗っているのでしょう。
ジェームズは、なぜラフィットを購入したのかと聞かれ、「自分の住まいがラフィット通りにあるからさ。」とうそぶいたそうです。
さて、シャトー・ムートン・ロートシルトですが、初代マイヤー・アムシェルの3男であるイギリス分家ネイサン・マイヤー・ド・ロートシルトの3男であるナサニエル・ロスチャイルド(ラフィット購入のジェームズは父の弟、叔父に当たり、かつ義理の父にあたります。~ジェームズの娘シャルロットと結婚)が購入しましたが、義父を出し抜いたとされています。
ラフィットを買ったジェームズはワイン通でも知られた人物で、かねてからラフィットを狙っていたようです。そこで、ひそかに1853年にラフィットの隣のムートンを買ったナサニエルは、大いに喜んだとされています。
もっとも、イギリス人の彼がライバル視していたペレール兄弟がシャトー・パルメを購入したことも取得の一因と思われます。
このようなムートン取得の因縁(ろくでなしチャン曰く、対抗意識)が後に1級獲得への道に繋がっていったと考えます。
話は変わって、ラフィットは、かのポンパドールがルイ15世に薦め、ブルゴーニュワイン一辺倒だった宮廷の晩餐会に異変をもたらし、ボルドーワイン躍進の礎を築いたような記述があり、ラフィットが王室御用達ワインとなり「王のワイン」と呼ばれたとか。
別説は「若返りのワイン」説であり、ギュイエンヌ(ボルドーの旧州名)の総督を務めており、リシュリュー第3公爵と呼ばれていたルイ・フランソワ・アルマン・ド・ヴィニュロ・ド・プレシ がヴェルサイユ宮殿に戻ったところから物語は始まります。
年老いた筈のリシュリュー公爵(当時60歳を超えていた。)がなんとも若々しく見えたル15世が「25歳も若く見えるではないか」と言ったところ「若返りの水を見付けたもんね。味は素晴らしく、オリンポスの神々が愛した不老不死の薬みたいだよ。名前はね、シャトー・ラフィットちゃんと言うんだよ。」てな訳でたちまち宮廷中に広がり、当時の所有者ニコラ・アレキサンドル・ド・セギュール公も度々宮廷に招かれたとされており、「王のワイン」の名誉称号まで得たとされています。
リシュリュー公爵は84歳で3度目の結婚をして、92歳で亡くなられたされていますから若返り効果はあるのでしょう。女性に1級シャトーを大判振る舞いするときは、ぜひこちらの「若返り説」をお話しできるシャトー・ラフィットをお勧めします。但し、「私は十分若く、綺麗よ。」と反撃されても知りません。
まあー、とにかく、お酒は体に良いということでしょうか。かのバッテド・ウイスキーのオールド・パーのモデルとなったトーマス・パーなどは80歳で初婚、105歳で浮気をして一児をもうけ、122歳で再婚、152歳で亡くなったとされますから。
シャトー・ムートン・ロートシルトとは親戚になり、ラフィツトは初代マイヤーの5男であり、フランス分家のジェームズ・マイヤー・ド・ロスチャイルドが1868年に444万フランで購入(450万フランで競落説も有り)しています。因みに、シャトー名も自己の名を付して、シャトー・ラフィットからシャトー・ラフィット・ロートシルトに変更しています。
いつもながらハチャメチャな展開をしておりますが、シャトー・ラフィットは1985年からアート・コラボレーションをスタートさせ、シャトー関連の写真を有名写真家に撮らせ、ニュー・イヤー・カードを作成させています。エチケットを画家に書かせているのではありませんよ。
1988年にはチリのヴィーニャ・ロス・ヴァレスコスを買収しています。
間違ってもアルマ・ヴィーバではありませんよ。
1998年にはアルゼンチンのカテナ家と提携し、ボデガス・カロ・プロジェクトを立ち上げ2000年ヴィンテージから「カロ」「アマンカヤ」を発売。オーパス・ワンではありませんよ。
ほらほら、ラフィットとムートンの対抗意識が。
シャトー・ラフィット・ロートシルト詳解 その1 詳解はこちら
シャトー・ラフィット・ロートシルト詳解 1953年~1984年 その2 詳解はこちら
シャトー・ラフィット・ロートシルト詳解 1985年~1999年 その3 詳解はこちら
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