ワインの発酵 解説 その2 | ろくでなしチャンのブログ

ワインの発酵 解説 その2

              それとなく 4 ワインの発酵-2


 

 前回は、酵母によって第1次発酵が行われる事を紹介しました。その際、醸造家は特徴となる、なにがしかのスタイルを与えことしか出来ない。とのことでした。しかーし、なにがしかのスタイルを与えるどころではない(表現上の問題とは思いますが。)と考える方達もいらっしゃいます。


 

 ワインを造るには酵母と言う単細胞の真菌が不可欠であり、自然酵母を使うか培養酵母を使うかは重要なことである。と

 酵母は葡萄の糖分をアルコールに変えるだけでなく、最終的なワインの風味や香りを左右する。ワインに含まれる揮発性化合物はおよそ1000種類と言われ、少なくとも400種類が酵母によって生み出されている。破砕したばかりのブドウ果汁にはあまり香りが無い。しかし、発酵が済んだワインには豊かな香りと風味がある。  


 

自然酵母と培養酵母


 自然酵母の場合は、培養酵母に比して盛んな発酵が始まるまで時間がかかるため、マストに含まれるアントシアニン等のフェノール化合物が酸素と反応しやすくなると言われています。結果として色の安定とフェノール化合物の重合(複数の化合物質が結合すること。)を促す。という利点はあるものの酵母の活躍の前に酢酸菌などが定着してワインを駄目にしてしまうリスクが伴う。


 

 カリフォルニア州立大学教授のケン・フューゲルサングは「天然酵母の方が複雑なワインが出来る事が多く、口当たりとストラクチャー(構造)が違ってくる。葡萄そのものの香りでは無く、ワインの発酵熟成から生まれるブーケが生ずる。」と。

 酵母は、マストに含まれる前駆物質とやらを代謝して香気成分に変えてくれるらしい。


 

 品質を考えて自然酵母を選択する人々がいます。天然酵母で造ったワインの方が、ストラクチャーが豊かでまろやかだ。ゆっくりとした低温で発酵が進むため香気成分をあまり失わずにすむ。とする考えで

培養酵母の使用に反対する人々であり、ボルドーではこの考え方が多いようです。


 

 醸造家のニコラ・ジョリーは「天然酵母には、その土地の微妙な特徴が全て現れます。その酵母を殺すような愚かな真似をしたらその年の持つ何かを失ったと同じです。」葡萄畑に住み着いた天然酵母もテロワールだとの考えです。


 

 対して培養酵母の場合は、醸造家が発酵を調整することが出来、少なくとも好ましく無い酵母の活躍割合が減少する。

 ポルトガルの醸造家ルイ・レグインガは「個性は多少失われるかもしれないが、培養酵母を使った方がその潜在能力を引き出せるように思う。適切な発酵が適切な時期に始まり何の問題も無く終わる。天然酵母で発酵が上手くいくと個性をより強く表現できるでしょうが、悪玉の酵母菌がいたら1年の苦労を全て失う。

 

 ところで、培養酵母であっても、ワインの風味に僅かな違いが生じる様で、「パストゥール」という赤ワイン酵母を用いると、より複雑な風味を造り出すそうですが、果実味が高まることはことは無いそうです。

 他方、ドイツの「アスマンハウゼン」という赤ワイン酵母は果実味を生み出すと言われています。数種類の酵母を組み合わせてより複雑な味作りを目指す醸造家もいるそうです。しかし、酵母が働きかける相手である葡萄そのものの風味と比べると、とるに足らないものであるとか。 


 

 要するに、自然酵母はテロワールの一部だと考える人はにとっては、理念の問題で培養酵母は考えられないとなり、他方、リスクを犯して天然酵母に頼ることは合理性が無いとなるのでは。

 培養酵母に関しては、変種の選抜でより好ましい酵母をつくりだす手法と、遺伝子操作でより好ましい酵母を造ろうとする動きがあるようです。

 

 シャトー発表は、一応天然酵母です。と言っている方が多いようです。良心的なシャトーでは、場合により培養酵母も。となります。天然酵母使用とのプレス発表の方が受けが良い(いかにも伝統を堅持とか天然酵母もテロワールの一部だとか。)ことによる様です。

 


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出典、白水社ーワインがわかる。河出書房新社ーワインの科学。

 

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