60代男性。発作性頻拍症(突然頻脈発作が起きる)による

動悸、アトピー性皮膚炎、逆流性食道炎による吐氣や胸やけ

、睡眠時無呼吸症候群、両足首外則の少し痛みのあるタコ状

隆起、めまい等で来院されました。


早口の方で、両足首外則の胆経(身体の両外側を縦に走る

経絡)にタコが出来ており【写真1】、舌には黄色い厚めの苔

が中央から奥にかけて見られ、体内に湿熱(湿氣と熱)が

強いことが伺えます【写真2】。


湿氣を反映する舌の苔は、ふつうは薄い白色ですが、湿氣が

多いと厚くなり、熱を帯びると、黄色くなります。パンを焼くと

黄色くなるのと同じです。


タコと舌を見て、”あ、これは胆経の湿熱だ”と思いました。


生年月日を見ると、細かいことによく氣がついて何でもコツコツ

と真面目に仕事をされる方であることがわかりました。
診察室に入って着席されるまでの動き、挨拶のされ方や話し

ぶりがテキパキされていたのも成る程と合点がいきました。

 

一方、せっかちでイライラしやすい、早食いの傾向があることも

、問診の中で確認できました。


これらは何れも、胆経の働きが旺盛であると同時に、そのため

に胆経に問題が生じやすい性格であり体質であることを物語

っています。

 

両体側面を少しジグザグに縦に走る胆経の胆は肉月に旦ですが

、旦は元旦の旦で地上から日が上る象形です。これは初発・スタ

ートを意味しますが、これは胆経の働きでもあるのです。


この方は何でもよく氣が付かれてせっかちでもあるので、胆経が

何時も刺激を受け、そのために腎の相火(しょうか)が胆経に沿

って上に昇りやすいのです。


これが心臓に来ると心臓が興奮して発作性頻拍に、食道に来る

と逆流性食道炎に、頭部に来るとのぼせやめまいに、頭内部が

熱で膨張し氣道が狭くなって睡眠時無呼吸症候群になるという

ことなのです。

 

食べ物は、イライラしやすいのでそれを緩める為にケーキや饅頭

等の甘い物、相火が昇って頭部は熱いので、甘くて冷たいアイス

クリーム等が好きでよく食べるそうです。

 

また、イライラしやすい性格・性質と”同氣相求”の関係か、辛い物

や味の濃い物や脂っ濃い物が多い傾向で、しかも早食いです。


辛味への好みや皮膚が弱いのは、生年月日の命式の中に金氣

があるので理解できます。因みに、昔ビールを飲んで入浴して

心停止して以来、怖くてアルコールは飲まないそうです。


性格的に氣が頭に上りやすく、飲食では辛味や油味の熱分は氣

あるいは熱が上って”頭熱”に、甘い物や甘く冷たい物、

辛味や油味のうちのベタベタした部分は下って

”足寒湿(一部は化熱して熱もありますが)”になります。


この足の寒湿(一部熱)が胆経下部の足首の曲り角にジワジワと

溜まり続けてタコができたと考えられます。


何故この部にタコなのかは西洋医学ではわからないと

思いますが、東洋医学的には理解可能なのです。

 

アトピーについては、先ず先天的に皮膚が弱いことが、

生年月日からわかります。そして、アトピーの本体は湿熱です。

アトピーの発疹の赤さは体内の熱を外部へ発散している姿で

あり、発疹の盛り上がりは体内に溜まった湿氣が皮膚表面から

蒸発して発散していることを示しているのです。

アトピーの症状はアトピーの療法でもあるのです。


これらの病態に対して、食事指導と心の管理について

ご説明するとともに、封髄丹0.11g、柴胡桂枝乾姜湯と

当帰建中湯各5.0gで二週間様子を見ると、両足首のタコに

縮小が見られました【写真3】。


その後、封髄丹は以後ずっとそのままで、柴胡桂枝乾姜湯と

当帰建中湯を各2.5gに減量して三週間、次いで加味逍遥散と

当帰建中湯各1.25gで三週間、次いで柴胡加龍骨牡蠣湯・

四物湯・当帰湯各0.63g.で四週間、

柴胡桂枝乾姜湯・四物湯・当帰建中湯各0.63gで四週間、

計十六週間ほぼ四ヶ月足らずで、両足首のタコはかなり

縮小してあまり目立たなくなりました。また、めまいは消失、

その他の諸症状もほとんと感じなくなりました。

 

写真4は十二週間後の両足首のタコでさらなる縮小が見られ、

写真5はその時の舌の様子ですが、黄色の苔が淡く薄く

なっており、湿熱が軽減していることがわかります。

 

両足首のタコと舌に反映される体内の湿熱が

相関していることがはっきりわかると思います。

 

写真6は十六週間後の両足首のタコですが、

さらに縮小しています。


このように経過良好ですが、一般常識からすると薬の量が

かなり少ないと思います。生活習慣によってもたらされた病

なので、的確な生活習慣の改善こそが病状改善のうえで

大切だということです。


[写真1]

 

[写真2]

 

 

[写真3]

 

[写真4]

 

[写真5]

 

 

[写真6]