満足療法の観点から、

改めて重視すべきは肛門健康法です。

かつて、中村天風さんや塩谷信男さんたちが

提唱されていましたが、

現在ではあまり表には出なくなったようです。


 肛門の肛は肉月に工ですが、

この工は天と地つまり宇宙大自然と一体になる

という意味を持ちますが、

これを実践された天風さんも塩谷先生も

ともに超人的な方のようでした。

天人相応の生き方を実践されたのです。


 天風さんは明治9年生まれで92歳の長寿。

原敬、東郷平八郎、山本五十六、双葉山、

松下幸之助、稲盛和夫等々、

そうそうたる方々に多大な影響を与えた哲人でした。

塩谷先生は明治35年生まれで105歳の長寿。

内科医で正心調息法を提唱、

やはり多大な影響を多くの人々に及ぼしました。

お二人とも天賦の才能も当然おありであったとは思いますが、

共通して肛門を締めることの重要性を説いておられたのです。


 ではなぜ、肛門を締めることが大切なのでしょうか。

一言でいうと、肛門が身体の中心だからです。

「生命とは中心帰一の回転コマ運動(円通運動)をする円・球である」

というのが生命毉療における生命の定義ですが、

生命とは中心が定まって円通することが何よりも大切で、

それは円通を本質とする健康の条件でもあるのです。

そのために、肛門の筋力を維持・強化して、

しっかりと中心を定めておくことが大切なのです。


 そこで、図1天人相応太極円通図を観ていただきたいのですが、

黒い勾玉(まがたま)の下方の白い小球は

下丹田であり肛門につながります。

太極図が円滑に円通するには、

白い勾玉の上方の黒い小球である上丹田とともに

下丹田の安定が必須条件ですが、

身体レベルでは特に下丹田の充実が大切です。

最近の言葉でいうグランティングです。


 このように肛門を中心とする部分が

身体の中心であり要であるために

その辺りを腰(肉月の要)といい、

臓器的には腎と関係が深いので

五行的に母子関係(腎水が母で肝木が子)

にある肝とともに肝腎要という言葉があるのだと思います。

また、天と地をつなぐ神聖なところなので、

腰を背面から覆う骨を仙骨

(英語ではsacred bone=聖なる骨)というのだと思います。

ここが充実安定して活性化すれば仙人にもなれるのです。

昔から、海難事故などで意識不明の状態の人を観た時、

肛門が締まっていれば生、

締りがなければ死と判断されてきました。

心停止≒脳死≒肛門死でもあるのです。


 武道でも舞踊でもスポーツでも何でも、

何かに取り組む時はもちろん日常生活においても、

絶えず下丹田のある腰の充実安定を意識することが大切です。

そのために天風さんのクンバハカという方法や

塩谷先生の調息法があるのですが、

簡易法として肛門を締めたり緩めたりの運動を、

何時でも何処でも実践するだけでもかなりの効果が期待できます。

これが肛門健康法です。


 他に、最近、気付いたのですが、

相撲の背筋を伸ばして取る蹲踞(そんきょ)や仕

切りの姿勢も肛門を締める良い方法だと思います。

相撲は元来は神事なのですが、

蹲踞や仕切りを繰り返しながら

天と地(天神地祇)につながって、

陰陽の円通を図るところに

本当の意義があるのではないかと考えます。

また、野球のイチローさんがウォーミングアップの際に

両足を広げて両膝に両手を当て、

左右交互に屈伸するイチロー体操も

同じような意味と効果があるのではないかと思います。

その意味では、蹲踞や仕切りの姿勢、

イチロー体操もお勧めです。


 肛門運動は下肢内側の肝腎の経絡(氣の通り道)

そして関連の筋肉(内層筋)を覚醒する実感があります。

行うと足腰が暖かくなって、頭寒足熱をもたらします。

多くの生活習慣病は相火(しょうか)[註1]の過剰による

氣の上がりすぎで起きるのですが、

肛門運動はそれらを予防し治療してくれるはずです。


 図2,3のように、そもそも発生学上は

最初にできる器官が腸です。

初発の腸であり、あらゆる器官・臓器の源なので

原腸というのだと理解できますが、

それは肛門側から口側に向かってできてきます[註2]。

その原腸の源が肛門なのです。

身体のすべての源が原腸で、そのまた源が肛門なので、

肛門運動は腸の活性化につながり、

腸の活性化は全身の活性化につながるのです。


 何時でも何処でも誰にでも出来てコストフリー、

しかも肛門を締める運動を繰り返すわけですから

腎の固める効果を強め、万

病の予防と治療そして若返りに大いなる効果を発揮するのです。



図1 天人相応太極円通図


こちらのリンク先をご覧ください↓

http://homepage3.nifty.com/rokkaku-tanaka/entry20.html


註1 相火の相は首相(総理大臣)や外相(外務大臣)の相であり、

   君子に対する臣下の意味があります。

   漢方では心(しん)が君子であり腎が臣下なので、

   腎の中に臣の字があるのです。




図2 

胎生16日の原腸発生図

ラングマン人体発生学第8版」

p.62より



3

 胎生4~5週頃の胎児


「内臓が生みだす心」(西原克成著)

 p.107より



註2 図2:肛門の元である排泄腔膜から

   口の元である口咽頭膜に向って原腸ができる。

   図3原腸から諸臓器ができる。

   諸臓器の源は腸であり腸の源は肛門なのです。