『爪王』/戸川幸夫
(内容的には、『うさぎ以外の動物』のテーマの方・・・かな?)
動物を主人公にした物語を数多く書かれた戸川幸夫さんの代表作のひとつ、
『爪王』。
戸川幸夫さんは、
直木賞を受賞した作家ということでご存知の方も多いかと思います。
また、「瞼の母」、「一本刀土俵入」、「刺青奇偶」などで有名な
長谷川伸さんの門下生なので、そちらでご存知の方も多いのでしょうか。
(長谷川伸さんの門下生には他にも、山岡荘八、平岩弓枝、池波正太郎、
西村京太郎など、超~有名な方たちがいらっしゃるそうです。)
さらに、この『爪王』は
’60年代の光村図書の教科書に掲載されていたそうで、
50代の方は、国語の授業で学習した人が多い・・・らしいです。
しかし、私にとって戸川幸夫さんといえば、
イリオモテヤマネコの発見者
(Prionailurus bengalensis iriomotensis Imaizumi, 1967)
としての方が印象深いです。
哺乳類として、20世紀最大の発見!という人もいます。
(深海や未開の地で新生物を発見したというのとは訳が違うし、
微生物や無脊椎動物ではなくって、哺乳類の発見ですから~。)
その戸川幸夫さんの『爪王』が、何と
歌舞伎座さよなら公演
『二月大歌舞伎』
昼の部 の演目に登場です。
舞踊ということですが、
鷹と狐の、プライドを賭けた死闘をどのように表現するのか・・・、
興味津々です。
- 野性伝説 (5) (講談社漫画文庫―矢口高雄自然シリーズ)/戸川 幸夫
- 矢口高雄さんの描かれたマンガもあるようです!
物語の舞台は、山形県。
野生のクマタカの夫婦に1羽の子鷹が生まれる。
親鷹は子鷹に、狩りの仕方などの生きる術を教えていく。
数年後、独り立ちした子鷹はたくましい若鷹となっていた。
ある日、年老いた鷹匠がこの若鷹をひと目見て、
この鷹を最後の飼い鷹とすることを決断する。
鷹匠は、若鷹を生け捕りにして、
「食いつかせ」(餌を与えること)を試みる。
しかし、若鷹は鷹匠の与える餌を一切口にしようとしなかった。
数週間の後、鷹は鷹匠の手から肉片を喰らい、
とうとう鷹匠に服従することになる。
※ 野生の鷹を飼い鷹にすることはかなり困難なことです。
野生の動物が、ヒトの与える餌を口にするなど、
実際のところ、滅多にないことですから。
最近は、野生動物と人間との距離が近過ぎるようですけど。
「吹雪」と名付けられたメスの若鷹は、このときから
飼い鷹としての厳しい教育を受け、鷹匠との絆を深めていく。
ある日、鷹匠は近くの村の村長から、
村で悪さをする老獪な”赤狐”を退治してくれないか、
と頼まれる。
※二月大歌舞伎では、庄屋が登場するようですが、
物語では、村長となっています。
一度は、吹雪の若さゆえ赤狐に深傷を負わされるが、
吹雪は諦めなかった。
3年後、再び赤狐と対峙する。
今度は、戦いの術を十分に身に付けた吹雪が
赤狐との戦いに勝利するのであった・・・。
(まさに、死闘の末の勝利です。この戦いの場面は、
ハラハラ、ドキドキしながら読みました。)
そして、吹雪は名実共に
”真室川の王者”となったのである。
- 戸川さんの、動物描写はリアルです。
私には、伝えきれないので、
興味がある方は、是非一度お読み頂きたいと思います。
出来れば、直木賞受賞作の
『高安犬物語』
も併せて読んで欲しいところですが。
この『爪王』、吹雪が鷹匠に屈服し、
遂に飼い鷹となるまでの部分が実は一番観てみたいのですが、
舞踊となると・・・かなり難しいでしょうね。
私は、踊りのことはよくわかりませんが、
このメスのクマタカ「吹雪」を、
七之助さまがどのように演じるのか・・・、
すっご~~~く期待していますよ~
(猛禽類好きとしては、今から夢が脹らみます!)