「Florilege (フロリレージュ)」(☆☆☆)
http://www.aoyama-florilege.jp/index.html
「カンテサンス」でスーシェフを務めた川手寛康シェフが独立し構えた南青山住宅地内の隠れ家レストラン。
新しい食の提供なのに懐かしい記憶に残る味わい。
マネージャーにソムリエの近藤都志幸氏がつき、その接客も隙なく素晴らしい
ソフトドリンクまで充実しているところは「カンテサンス」以上の名店です。
住所:港区南青山4-9-9AOYAMA TMI 1F
電話:03-6440-0878
定休:水曜
営業:12時~14時/18時半~21時
歩いている裏通りからさらにコンクリートの緩やかな細めの階段を上がった場所にありました。
白い壁の建物で、側面に後ろから間接照明照らし出される銀色のバー。ピンク色の花びらのロゴも一緒に光っています。
玄関がどこにあるのかよくわからず、正面の扉を開けようとするもそこはスタッフ出入り口でした。帰り際にシェフが出てきてくださいます。横の通路を包み、壁のような所を開けて中に入ります。立派な隠れ家ですね(笑)。
中に入ると外観とは違って少し暗めの空間。右の壁に沿ってベンチソファの席が並び、左にはバーカウンター。
一番奥に個室があります。5人以上だと個室を使うようお願いされるそうで、個室は6人までしか入れません。
机の上には和の見せ皿。左にパンをのせるための黒い石のプレート。ここは「カンテサンス」譲りでしょう。
10年11月8日夜の来訪。
本日夜は家族で会食。両親と弟と妹とぼくが行く。
タクシーで伺いましたが、どうも運転手さんの住所入力が間違っていたらしい、降りた場所の奥にあると思われましたが、手前で降りて歩いて行ってみるとただの住宅。陸橋の下から店に電話すると、全然場所が違うが歩いてちょっととのこと、なので歩きました。iPhoneに案内させても、ちょっと迷う。なにしろ、タクシーが入るのも大変な住宅街の一角だったのです。
ソフトドリンクしか飲めない旨を伝えるとノンアルコールカクテルを用意してくれるとのお言葉。
いただいたのは大きなグラスに赤いカクテル。カベルネソーヴィニヨンの赤いブドウジュースがベース。後ろのあるボトルがそのジュースのボトルです。甘いジュースなのでここに苦みを加えるためにトニックウォーターを加え、上にアセロラのジュレを浮かべたそうです。ジュレの口当たりがとても面白い。酸味と甘みと苦みが美味しいノンアルコールカクテルでした。
小布施のワイナリーで作られている2009年のブドウジュースとリンゴジュース。
ソフトドリンク4杯目はウィルキンソンの辛いジンジャーエール。
違うノンアルコールカクテルも用意できるとのことなのでさらにいただく。
みかんジュースとハーブチィーのカクテルです。飲み口はミカンジュースなのに後口は爽やかにハーブの香り♪
SAINT-GERON
最後にプレミアムテーブルウォーターをいただく。シャテルドンクラスの価格。
天然の微発砲ミネラルウォーターです。辛目な感じの水。
DINNER COURSE 10500円
スナック、アミューズ、野菜の前菜、フォアグラの前菜、魚料理、肉料理(ContemporainとClassiqueの2皿構成)、デザート2皿(フルーツとチョコレート)、カフェの構成。
Les snack)スナック
大理石のブロックの上にスナックの提供。
サクサクの極薄パートフィロの間に玉子とエシャロットを混ぜ合わせたものを挟んでいます。わずかに生姜で香りづけしてある。上には高級なオシェトラキャビア。その塩気はたったこれだけの量でも際立ちますね~。不思議なことにもぐもぐ食べているとコンソメパンチを思い出す味に(笑)。この、前に味わった懐かしい味というのは、この後の料理でもいくつかありました。面白いことです。記憶を刺激しているのでしょうか?
Les amuse-bouches)四角いグリーンオリーブ
まずガラスの皿ありきという料理。
四角くへこんだガラスの丸い皿はもともとは和菓子のものだったらしいです。
この四角いへこみに四角い緑色のふんわりパンケーキ。焼き目が表面についています。
素材はグリーンオリーブだそうです。オリーブの強力な味はさほどでもなく、上に乗っている黒いフレークが凄いオリーブ味。オーブンで乾燥させたオリーブだそうです。
ここでパンの登場。
バターは向かって右に塩がしてあります。エシレバターでしょうか?とても上質。
最初のパンは鶏モモのような形。焼き立てで中はしっとり、外はカリッとした全粒粉(かな?)の力強いパン。
Les legumes)
中央が変形してでこぼこしている白く四角い皿に北海道のエゾアワビです。
これをフリットのように衣をつけて揚げ、ジューシーに仕上げたアワビのベニエ。ベニエの上の黒いものはアワビの肝のソースで酸味が効かせてありました。
これにアワビつながりで和歌山の黒アワビ茸。グリルしてあるのでしょうか。塩が結構きいていました。これに緑は茹でた青梗菜。
周辺のソースもアワビを摺り下ろしたとろみあるソース。そして肝の味が優しく感じるアワビの肝のフランです。
Le foie-gras)フォアグラの重さとメレンゲの軽さ
円盤状のコーヒー色したガラスの皿にドカンと大きなフレッシュフォアグラのソテー。シンプルな調理でくらくらするほど大きい。こんなに食べたのは初めてかも。これが皆に切り分けられています。
断面レアで美味い油が流れ落ちる。
3個あるのはヘーゼルナッツのメレンゲ。サクサクで甘いメレンゲはフォアグラと一緒に食べるとフォアグラの美味さが確かに増す。甘いものとあうとは言われますが、なるほど~。周辺の粉もヘーゼルナッツの粉です。ちなみに倒れているのはデザインだそうです。
手前にはアップルビネガーでマリネしたヘーゼルナッツ。
次のパンはレーズンとクルミが入る薄切りのパン。
Le poisson)漁師さんからの直送鮮魚
ゾロンと着られた切り身は真鯛です。皮をサーモンのようにカリカリに焼いているのに白身はとてもレア。これがそれだけでも白身と皮際が美味しい。
その下には豆苗や細切りのニンジンにきくらげ。
さらに周辺にスライスした香りよい秋トリュフ。
ここにプーアル茶の香りをつけたビーフコンソメを注いでくれます。
このスープと合わせて食べると鯛茶漬けのような感じに。
3枚目のパンはブラウンのパン。
肉料理はシャラン鴨です。シャラン産の鴨ではなく、シャラン鴨という場合は職人による伝統を守った手作りの餌(とうもろこしに小麦、マラカス麦、大豆、果肉、糖蜜)で飼育された希少性の高い鴨になるそうです。これとエトフェ(窒息)させる締め方で血液を肉の中に残したまま提供されるそう。BURGAUD(ビュルゴー)家の鴨だそうですが、日本には年間で300羽しか入ってこないとネットで書かれていました。
これをまず胸肉から。脂身のある皮目の方はカリッと焼かれ、厚い皮を食べやすくするように切れ目がいられていました。この切り方は「あら輝」の明石の鯛にも共通する感じ。
鴨の甘みの肉質はとてもレアで充実。う、美味すぎる!!
ソースはその肉汁を使ったクリーミーなソース。お肉たっぷりのクリームシチューみたいな味でした。
このソースを絡めつつ添えているのはモリーユ茸。アミガサ茸という襞の多いキノコで、生クリームが合うそうです。独特の食感に香りがするので苦手な方もいるみたい。特にフレッシュではなく、乾燥させて戻したものですから。
それにギンナン、小松菜も添えられ、結晶の塩も自分でつけられるように置いてあります。
4枚目のパンは黒パン? ぼくはもうおなかがふくれていたので弟だけ食べていました。
Le couscous)
先ほどとは対照的な白く丸い皿に。
もも肉の方です。表面はカリカリに、中の肉質はコンフィしたかのように柔らかで肌理細かい。くぁ~~!! お腹いっぱいなはずなのに入ってしまうほど美味しい!!
ソースは赤ワインのソース。
左のクリームみたいのは根セロリのピューレ。普通にいただく根セロリよりもセロリ味が濃い感じ。
食べられるクローバーが添えられていました。
Les fruits)極上の果物
最近高級レストランでよく見られる中空のガラスのリンゴ型の器に盛りつけています。
極薄に切った福島の梨です。ここにほどよい果実の甘さの梨のジェラート。軽やかに梨の甘さが広がります。その下にはふんわりしたバニラのババロア。
さらに底にそのジュレとアロエ、梨そのもののブロックが収まっています。
さっぱりとしていながら印象に残る素晴らしいデザートです。
これまた白い中央がくぼんだ不思議な形の皿に。
テーマは和栗。中央には栗の味が濃いガレット。周辺の泡立つミルキーな泡はヴァローナのホワイトチョコレート。昔懐かしい脱脂粉乳のような感じもします。
極薄の栗のチップスにその粉末。
Le cafe)カフェ
カプチーノをお願いしました。
こんもりとしたクリーミーなミルクフォームに苦みあるエスプレッソで美味しい。
小菓子はガラスのクッションのような皿に。
食用金柑ではねつきの羽根のよう。ジューシーで甘い柑橘系の味わいの食用金柑はただでさえ美味。
これをさらに酸味のある餡で包み、この底に砂糖をまぶしています。これが素材の美味さをさらに引き立てる素晴らしいものでした。
素晴らしいというしかない。
最先端を突き抜けて、さらに初体験の激旨な皿を味わった「カンテサンス」とはまた違う素晴らしい皿の連続。三ツ星以上にもなり得る店だと思います。