「l'art et la maniere(ラール・エ・ラ・マニエール)」(☆☆)
http://lart.co.jp/
横浜発 驢馬人の美食な日々-l'art et la maniere

 激戦区銀座にまた新世代フレンチの萌芽が生まれた。

 魅力的なプレゼンテーションと料理方法のコースに充実したソフトドリンク(笑)。

 大輪の薔薇へと育って欲しいぼく好みの一軒です。
 
住所:中央区銀座3-4-17オプティカB1F
電話:03-3562-7955
定休:日曜
営業:11時半~13時/18時~
 
 有楽町駅からだとプランタンの裏手2本目の通りにあるビルに。
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 1階にはなにやら行列。「HeartBreadANTIQUE」 というお店。
 その向かって右側に地下へと降りていく階段があります。蔓と葉の意匠の看板を掲げています。
 降りてみるとシンプルな扉。

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 中にはまたガラス扉です。狭いながらもエレベーターホールでした。
 入るとキャッシャーとバーカウンターのようなスペース。

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 待合のソファは黒いモダンなもの。左に回り込むようにダイニングに案内されました。右には個室があります。
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 中の空間は白で統一され、壁もテーブルクロスも白。薔薇にこだわりを感じる照明や奥の壁の装飾。
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 テーブルの上にはガラスの燭台に太い蝋燭。中空のガラスの器にちょいと水を入れ、深紅の薔薇がおかれています。

 

10年4月30日夜の来訪。

 この日から家内と娘は宇都宮へ。
 ぼくは一人になったので土金の親父と姐さんに声がけし、家鴨さんからお教えいただいたこちらを予約。
 しかし、連休の谷間であるためこの日の仕事は遅くにまでおよび、20時で予約していましたが、到着は20時半過ぎになってしまいました。
 先客は何かとうるさいカップルに、アナウンサーではないかと思うようなきれいで上品な女性陣と個室のお客です。評価の割に満席でないのはまだ認知されていないからかな? それとも連休の谷間だからだろうか。
 
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 最初にいただいた飲み物はワインに使われる白ブドウのジュース。これが夢見るような甘さでありながらすっきり。蜂蜜を溶かし込んでいるのではないかと思うほどです。

 
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 まずはアミューズ。水面に水滴を落とした波紋状のガラス皿に。右は黒オリーブとチョリソーのパンケーキ。その強い味わいがまとめられているのは良いですね。一方、左の白く小さなカップには温泉玉子の黄身を落とし、白玉ねぎとベーコンの泡立てたスープを注いでいます。
 この構成、提供の仕方は新世代フレンチとして期待感が確かに高まります。
 
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 そしてマットで白い色合いの模様皿に底が丸いカップでスープです。スープを飲むのに角がない方が飲みやすい。

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 スープは泡立ててある下仁田ネギのクリーミーなスープ。ここに福島の川俣軍鶏の砂肝のコンフィを溶かし込んであるようです。ネギらしい辛みを感じるスープに軍鶏の脂の香りが強い。 具として砂肝の姿がないのが不思議です。入っている粒はケッパーでオリーブオイルとともに。
 
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 ここで先にお肉料理のプレゼンテーションが。5時間かけて中までロゼになるように焼いたハーブ豚のです。塊が美味しそう!!
 
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 パンもここで。5種類あります。
 手前から表面がカリカリしたグリーンオリーブ入りのパン。姐さんが気に入っていました。
 次はつぶつぶコーンが入るパン。そのコーンの甘みが印象に残ります。
 真ん中左はクルミとレアな干しブドウが入るパン。
 右は焼き印がされている小さな食パン。
 そしてバゲットです。
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 バターも上質。しかし、パン自体が美味しいのでバターはあまり使いませんでした。
 
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 20種類はある春野菜です。蒸してあるものが多いかな。
 かわったところでは白い花びら茸、蒸されたらブツブツがわからなくなっているアイスプラント、ピンク色の信州蕎麦の新芽、苦みのある百薬草など。ラディッシュも丸いのと細長いのが両方。二十日大根に紅芯大根、おくら、からび、空豆、カリフラワーなどなど。
 中央にあって砂糖をまぶされているのはヨモギ、右上はさとうでコーティングしてある生姜かな?
 何種類もある野菜を蒸す難しさは前日に自分でやってよくわかっているので、感心しながら美味しい野菜をいただきました。
 かかっているのも野菜出汁のソースらしいです。

 
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 2杯目の飲み物は熊本の天草のタンカンを絞ったジュース。
 甘みと酸味がほどよく美味しい。こういうものを用意してくれているところはさすがです。
 
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 ガラスの皿に美しいサラダ。タコとサラダ茄子とズッキーニがメイン。タコは和歌山のもの。柔らかく煮込まれたこのタコを短冊状にスライスしてあり、中には同じサイズにスライスされて切られているサラダ茄子と生のズッキーニ。ヴィネグレットソースでマリネしてあり、ぼくにはやや酸味が強い。 周辺は熊本の塩トマト。甘さ控えめのバルサミコを回しかけ、ロースとした松の実と赤いベゴニアの花びらを散らしています。
 サラダ茄子ももちろん生なのですが、ふっかりした茄子らしい食感で臭みがないし、ズッキーニはややコリッとした食感が好ましい。塩トマトは干拓地のような塩分濃度の高い土壌で生産される糖度の高いフルーツトマトの元祖のよう。しっかりしていて甘いのがよい。
 
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 3杯目の飲み物はジンジャーエールを注文しました。これまた普通のものとは違います。
 白く濁っていて、生姜がしっかりきいたジンジャーエール。九州のものだと話されていたので調べましたが、友桝飲料 のn.e.oプレミアムジンジャーエールだと思います。モスコミュールなどを作るときに使うためバーテンダーの要請で作られたジンジャーエールです。
 
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 次も皿に盛る前に制作課程の状態で魅せてくれます。
 大ぶりのホワイトアスパラをレモングラスとともに調理用の紙で包み、根本の方から澄ましバターをすわせています。煮込むのではなく、素材自体の吸い上げる力を利用して調理してあるのは凄いですね。時間もかかっているようです。
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 実際の皿は黒い皿の上に白い食材でアートをしています。
 手前には先ほど見た澄ましバターを吸わせたホワイトアスパラ。レモングラスの香りがかなりついていて、澄ましバターは意外にそれほど吸い込んではいないかな? 下にはさっぱりした味わいの白い蕪のソース。
 奥にある立体的なのはソテーしてある北海道の糖度の高い山芋と帆立の貝柱の上に削いで笹の葉のようにしたゴボウをかりかりに揚げたもの。かかっている黒い粉末はリコリスのパウダーです。

 
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 魚の皿。これが賛否両論分かれそうなものです。
 四辺反り返った四角い皿で中央がくぼんでいるところに和歌山のキンキ、カリッと焼かれた豚肉のコンフィ、京都の白菜、姫タケノコ、白しめじなどが入り、ブルターニュの海草入りバターを落としています。
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 ここにキンキのアラなどでとった魚介のスープを注ぎ入れてくれます。これが塩気強く、液体スルメと呼びたくなる 旨みと臭み。次第にバターも溶けてさらに複雑な味にかわっていきます。
 土金の親父と姐さんは自分でよく作るスープが1日たって臭みが出て失敗したときのものみたいだと酷評していました。ぼくも臭いのは苦手なのでだいぶ微妙なところですが、これが前述の通り液体スルメみたいなものを狙っているのであればありかなと思いました。何しろ、他でこんな味を味わったことがありません。
 
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 最後の飲み物の注文は烏龍茶。これだけは残念に市販品レベル。
 これだけの店なのだから台湾の高山茶をアイスで入れてくれたらな~と思う。
 
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 肉の皿。さきほど切り分ける前の状態を見せてくださいましたハーブ豚です。しっとりしていてロゼの焼き加減はよいのですが、驚くほどの豚骨味です。キヌアの入る肉ベースのソースが豚骨なのかと思ったら、肉だけ食べてその味なのですから驚きの調理方法か。個人的には豚骨ラーメンを得手としていませんので好みではありません。しかし、これもまた面白いお皿です。とにかく普通じゃない。
 右には茹でてある千葉の赤葉玉葱。有機栽培なので、その根まで食べられるとのことですので、ちょっと食べましたが、好んで根は食べなくても良さそう。細くて固いもやしのようで、マグネシウムの苦みが強いと土金の親父が言っておりました。タマネギ本体から葉の付け根の部分は柔らかく煮込まれていて美味しかったです。
 左にはインカの目覚め。
 
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 口直しはキウィのジュース。つぶつぶも美味しいキウィに青リンゴを混ぜ、ピリッと山葵を効かせています。
 グラスがまた素敵ですね。

 
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 デザートもまた圧巻。できたてのミルフィーユがズンと。
 通常は焼いて押しつけて成形していくらしいのですが、これはそのままにしてあるので大きくなっているのだとか。
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 これを大きめに切り分けてくださるとのことでしたが小さめのサイズでお願いしました。お腹がすいた状態できたのですが、ここまででお腹いっぱいになっていて。
 提供されるときは木苺のソルベをつけ、苺も添えてくれます。
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 通常サイズとミニサイズの差は写真ではわかりにくいのですが、ソルベの大きさが同じとして考えると、やはり大きい。軽い仕上がりなので食べれてしまうと姐さんは完食していました。やや苦みあるサクサクのパイ生地にパティスリーで味わうような上質のカスタードは美味しい。
 
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 最後の飲み物はカプチーノでお願いしました。
 これも普通に美味しいものです。
 
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 お茶菓子で出されたのはまず細い器にちょこんとした量のクレームブリュレ。色合いは黄色くなく鈍い色。黒糖を使っているらしいそれはローズマリーの香りだと思ったのですが、ローリエを使っているとの返答。そういえば、ローリエってぼくの食生活状カレー以外ではあまりお目にかからないからなぁ。なんとなくベーコンのような肉っぽい香りもしたのが不思議です。
 
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 小菓子はガラスの器に。
 上には焼きたてのマドレーヌ。表面はサクッとして中はしっとりしながら軽い。やはりこういうものは焼きたてが美味しいと実感。
 下には手前に黒オリーブのサブレ、奥に黒い塩の結晶を乗せたバニラ風味の生キャラメルとねっちりしたくろい飴。
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 お手拭きはお湯を注ぐと伸びる「ロイズ」でも見たものを。
 
 ちなみにトイレも美しい。
 天井の照明は白い薔薇を形取ったもの。白い壁は変わらず、足下側はマーブルの大理石様。クリスタルのようなベンチがなぜか置かれていました。
 
 給仕は丁寧で説明もしてくれるし好感が持てますが、まだまだ若さ故の未熟さを感じてしまう。ワインリストに載っているワインが頼んでみるとなかったりするし、頼んだ飲み物が意外になかなかこなくて喉渇いたりと。
 しかし、普通ではない料理を試行し、プレゼンテーションから楽しませてくれるお店は貴重です。ぜひ人気が出て、さらなる成長をしていただきたい。月並みですが、今後に期待できるお店です。

 

ラール・エ・ラ・マニエール (フレンチ / 銀座、銀座一丁目、有楽町)
★★★★ 4.0