「フォリオリーナ・デッラ・ポルタ・フォルトゥーナ(Fogliolina della Porta Fortuna)」(☆☆)
Fogliolina
 テレビ番組「トリセツ」の最終回を飾った予約の取れないレストラン。

 幸せを司どる小さな葉という意味の店名。鬼才の作る一期一会の奇跡的料理を貸切でいただくのはまさに至上の喜び。

 お酒が楽しめて、お金に余裕のある方であれば、リピーターになることは間違い無しです。
 
住所:目黒区中目黒4-8-12 ディモーラ中目黒101
電話:03-3719-7755
定休:日曜・不定休
営業:12時~13時半/18時~21時
 
 緑色の壁の建物の1階にお店がありました。一方通行の道に面しています。
 車は近くの塩ラーメン屋さんの目の前にあるパーキングへ。電話して伺ったのですが、お店に駐車場はありません。テクテク歩いてこのお店に来ます。
 ウッドデッキ調のエントランスが敷き詰められた大きな石の上に作られ、ダークウッドの板張りの扉へと続いています。ダイニングに面した場所はブロックの壁で上からはガラス越しに中が見えます。扉の板張りの横も透明で、中にも同じように石が敷かれているので、ちょっと不思議な感じ。外とそのまま通じているかのような錯覚に陥る作りです。扉横には小さく店名と飾りが。
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 中に入ると小林幸司シェフが奥様とともに出てきてくださいました。ウッドデッキのようなエントランスはそのまま続く部屋の仕切りとしてのブロック壁沿いにぐるりと回りこみ、ウッドの壁と白い天井からのダウンライトで照らされたダイニングへ。そのスペースは確かに小さい! テーブルふたつを使って4人が座るセッティングがされ、元々あった他の2卓は椅子と共に傍らに押し寄られています。

 ランチ1組、ディナー一組でしか予約を受け付けないのですから、まさに貸切です。

 

07年6月6日ランチの来訪。

 両親を連れてぼくの運転でランチに出かけました。

 電話してもつながらないし予約がまったく取れないので長年の課題となったままでしたが、reicetta-casualeさんが行った際にぼくらの予約をもしてくださるという幸運に恵まれ実現となった。感謝しても仕切れない。このお返しは必ずしなければ。

 
 メニューは手書きです。左がお酒、右が料理。帰りに封筒に入れて持ち帰らせてくださいます。
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 テーブルの上はシンプルにふんわりと折りたたまれたナプキンに白い小皿。椅子は藤で編んだ席です。

 
ラーナのストゥファート
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 ストゥファートとは煮込みのことらしい。調べるとラーナはイタリアのトレンティーノ=アルト・アディジェ州ボルツァーノ自治県のコムーネ(自治都市)。
 白いカップで供されたのはほんのちょっとの煮込み。カエルの腿肉をコリントレーズンに松の実と共に煮込んでいます。味付けは水牛のミルクで作られたバター。カエル肉は淡白なささみのようでありながら白身魚のように裂ける煮込み方。それでいて中はほんのりレアのようにしっとりしています。旨味を凝縮しているような感じ。小さいので希少性がそう感じさせるのかも(笑)。甘いレーズンとバターの味わいに油脂分の多い松の実が加わり素晴らしい。
 
イベリコ豚のリングアとフィノッキオのマリナート
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 フィノッキオとはフェンネルのこと。日本名はウイキョウ。煮込んだウイキョウの付け根の太い場所をウイキョウの種と共に香りよくマリネしています。シャクシャクしており、これがセロリみたいな食感に味わい。香りはまったくフェンネルのそれですが。
 これにあわせているのがイベリコ豚の舌を網焼きにして表面の硬い皮を剥いたお肉。弾力がありレアのような仕上がりでトロンとした口当たりがいつまでも楽しめる。噛んでいるうちにイベリコ豚の良い旨味が口に広がる。こうやって記録している間にもつばがこみ上げてくる一皿。ギャーー、美味い!と叫びたくなる。
 
クロスターチェイのグァツェット
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 グァツェットはスープ仕立ての料理のことみたいです。クロスターチェイは甲殻類。オマール海老のスープに小海老のスープを合わせ、白アスパラガスを混ぜ合わせたというスープは物凄い出汁が出ています。やや塩気をきつめにしてあり美味しく感じる。
 中央にはカサゴを皮まで混ぜてピュレにし、ふんわりと仕立てた淡白でありながら奥深いものが。その上にはホロホロ鳥の卵白・卵黄を目玉焼きのように焼いたものが乗っています。仕上げにオリーブオイルをちょいと垂らしていますね。もっと量がほしい~。
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 これにあわせて出されたパンは小さな球形の物で、とうもろこし粉で作られているためかややざっくりした感じのあるもの。中にはグレープフルーツがはいっているそうですが、それほどよくわからないくらい。

 
オレッキエッテ ラグーディルマーケ
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 親指の凹みをつけた小さなパスタであるオレキエッテ。イタリア産の強力粉で作った自家製でプリッとした食感が美味。とろんとしたぼく好みのソースには種入りの黒オリーブ、ケッパー、そして塩気が効いたバターでいためているようなエスカルゴが。エスカルゴの弾力は他には無い魅力です。
 
コニーリオの背肉のソテー
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 うさぎの背肉のソテーです。ピンク色の美しい色合いで焼いた面なんかありません。これがほぼ脂身がなく、淡白なささみの味わい。うさぎらしい香りはややします。皮際なのかささみとは違ったコリコリと弾力のある部位も入っていて楽しめます。
 その下にしいてあるのはファロ麦。味噌のように香りが強い味つけがなされていました。振りかけた塩のみで味付けしてあるうさぎにあわせて食べると実にあいます。
 あわせて乗っていたのはスフォルマートでしょうか。珍しく説明がありませんでしたが、型に入れてオーブンで焼いた茶碗蒸しのような感じでした。具はニンニク。
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 一緒に出たパンはこれも球形で、マーブル模様にチョコレートを練りこんであります。
 
モッツァレッラ ディ ブーファラ
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 イタリアのガラスコップに入った水牛のモッツァレラチーズ。その乳清とトマトのジュレを混ぜ合わせたオレンジ色のソースであえてあります。ブーファラは淡白ながらコクがあり、トマトのソースと素晴らしくあいます。
 
アーモンドとアマレーナのスープ
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 アマレーナは調べるとワイルドチェリーとありますが、説明では黒イチジクのリキュールとアーモンドのスープとのことでした。これがガンガンにアルコールらしい味わい。中には羊のチーズであるチネリーノをピュレにしてからムースにし、凍らせたものが入っています。ソースが強いのでチネリーノはそれほど印象に残りませんでした。
 
チョコラティーニ
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 スプーンの上に四角いチョコレート。シチリア産の生のピスタチオを錬り込んだチョコレート。ややもっつりした食感の柔らかなチョコレートでしたね。

 

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 食後はコーヒー。エスプレッソではないのか、上にクレーマはなし。苦味が利いてどろりとざらつきのある液体で独特に思えました。

 
 トイレウォッチャーなので当然トイレに。壁を構成するウッドそのままで多角形の面白い形のスペース。床はコンクリそのまま。やや広めに感じます。手洗いは下から白く光るもの。プリザーブドフラワーが置かれていました。そういえば、ダイニングにも松笠とともに数点飾ってあったのを思い出します。

 
 さて、ここまで書いて大満足であったかというとそういうわけでもありません。
 TOMITさん が究極の子連れレストランだと書かれていましたし、気持ちよくいただこうと思っていたのですが、当日は朝から娘が風邪をひいて熱を出し、家内も機嫌が悪くなり、連れて行った親父は料理のスピードと量に満足せず酔っ払っているしで文句を言い始める…と一緒に行ったメンバーが失敗でした。
 最後に会計したぼくはもっとショックを受けていましたが(笑)。一人がお酒を飲んで4人で110000円です。一人25000円のコース。それでいて食べ終わってもお腹は空いたままという状態(笑) まじめに風邪をひいている娘がいなければ駐車場前の塩ラーメン屋さんで食べて帰るところでした。
 このためか総評は☆☆(二つ星)どまりです。
 鬼才の料理は確かに素晴らしいが、いかんせんその価格が高すぎる。量も少ないし、すぐに食べ終わって、お腹も空いてしまう。それでも、3時間かかるところを2時間ちょっとでやってくれたのだから良しとせねばならないのでしょう。最後まで見送ってくださるご夫婦の姿勢は好ましい。
 このスタイルを築き上げたシェフのステージにぼくらが合わせられるときっと素晴らしい時間が過ごせるのだろうと思います。