『第5回 車いすランナー・小島将平選手インタビュー!』 | M高史の Road to かすみがうら

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『第5回 車いすランナー・小島将平選手インタビュー!』

M高史(以下 M): 本日は元箱根ランナーで病気、手術を経て車いすアスリートとして新たな挑戦をされている小島将平さんにお話をうかがいたいと思います。
よろしくお願いいたします!

小島(以下 小): よろしくお願いします!

小島將平選手・紹介


プロフィール
小島将平(こじま しょうへい)
1985年大阪府出身

高校から陸上を始め、3年時にインターハイにて3000mSC6位入賞。
大学では、2年時に箱根駅伝(8区)出場。
大学卒業後は一般企業に就職。
2010年 骨肉腫発症。
2011年 左足を切断、車いす生活になる。
約1年半の闘病生活を経て、職場復帰と同時に車いす陸上に出会い、2020年東京パラリンピックに向けて中・長距離を中心に競技活動を行う。


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箱根路に挑んだ学生時代
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M: 陸上を始めたのはいつ頃ですか?

小: 高校からです。1500mから5000mがメインで、3000mSCを始めたのが高校2年からです。
3000mSCが1500mや5000mに比べてインターハイに行きやすい種目ということもあって、顧問の先生から勧められました。

小島將平・インターハイ



M: 高校時代は3000mSCでインターハイに出場され、大学へは推薦で入学されたんですか?

小: 最初、自己推薦を受けたのですが、落ちてしまって。センター試験と陸上の実績が加味される方式で受験しました。

M: では勉強もかなりされていたんですね!

小: そうですね。自己推薦落ちてからセンター試験に向けてはかなりやりましたね。

M: すごい集中力をお持ちなんですね!早稲田大学を目指されたきっかけを教えてください。

小: 陸上だけですと、もしも故障で走れなくなってしまったときに大変だと思ったので、勉強もできる大学を目指しました。

小島將平選手・箱根


M: 箱根を走ったのは?

小: 2年生のときに8区を走りました。

M: ぼくはちょうどその年、駒澤大学のマネージャーで運営管理車に乗っていましたよ!すごいご縁ですね(笑)

児島将平選手・Mさん


M: 箱根駅伝はどんな印象でしたか?

小: 他の大会とは声援のレベルが違いましたね!耳が痛くなるくらいと先輩から聞いていましたので(笑)
20km以上途切れることなく、たくさん応援していただきました。

M: 8区を走った印象はどうでしたか?

小: 初めてだったので、1つでも順位を上げようというのと、襷を途切れさせないようにという想いで走っていました。
遊行寺の坂も15km以上走ってきてからあの坂ですので、きつくて終わってからマメができました。
後半は本当に気力で走っていましたね。

M: 遊行寺の坂は8区のポイントですよね!
学生時代を振り返るとどんな学生生活でしたか?

小: 寮に入って、朝練があって授業があって練習があって体のケアして寝て、夏とか合宿があって、振り返ると本当にあっという間の4年間でした!


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手術、車いす陸上への道
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M: 卒業後のお話を伺いたいと思います。

小: 大学4年間で競技は一区切りつけようと思っていたので、一般企業に就職しました。
入社してから2年半くらいたってから病気がわかって入院したのですが、それまでは月に1~2回くらいしか走っていなくて、そろそろ体を動かさないとまずいなと会社の人たちとランニングをすることになりました。
そのときに左足に力が入らなくて、最初は坐骨神経痛かヘルニアかなと思って、治療院で診てもらっても良くならず、よくよく調べていったら骨のガン・骨肉腫でした。そこから入院して、手術して、1年半くらい入退院を繰り返しました。
その後、手術をして車いすになるとわかったときに、早稲田の1年後輩の竹澤健介(北京五輪・男子10000m代表)がお見舞いに来てくれました。
「車いす陸上でパラリンピック目指しましょう!」と言ってくれまして、退院する直前に車いすアスリートに声をかけて紹介してくれたんです。
退院してすぐ車いす陸上の世界に飛び込みました。(2012年2月)

M: 竹澤選手も小島さんが熱くて真っ直ぐな性格なので、きっと声をかけてくれたんですね!


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車いすレースの魅力
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M: 初めて競技用の車いす(レーサー)に乗ったときの印象はいかがでしたか?

小: 初めて乗ったときは、自分が学生時代に走っていたときよりもスピードが出なくて(笑)
花岡さん(花岡伸和選手)にご指導をいただいて、だんだん1km3分より速くなっていきました。
「現役時代の自分よりも速く走る」というのが最初の目標でした。

M: 普通の車いすとはどんな違いがありますか?

小: 競技用ですと、スピードが上がると手で押さえていられないので自分で作ったブロープにゴムをつけてグリップさせています。
実際に見ていただくとわかりやすいのですが、競技用車いすについているハンドリウムというのですが、アルミではなくてゴムを巻いて、ゴム同士をしっかりグリップできるようになっています。グリップさせることでキャッチーをして最終的に力を入れるという風になっています。

M: 実際に見てみたいですね!
競技用の車いすは何台かお持ちなんですか?

小: 基本的には1人1台ですね。トラック種目のトップレベルですと、トラックのとき軽いタイヤをつけたり、ロードを走るときは丈夫なタイヤに代えたりします。
タイヤ交換や手入れを含めて、チェックやメンテナンスしています。

M: 知れば知るほど奥が深いですね。形もかっこいいですよね!

小: そうですね、三輪になっています。

児島将平選手・レース



M: 初レースはいつでしたか?

小: 2012年の秋、大阪マラソンです。抽選であたってしまいまして(笑)
そのときは関門を越えること、完走することが目標でした。最後の関門さえ越せば大丈夫と(笑)

M: タイムはどれくらいでしたか?

小: 2時間20分くらいです。走る感覚でいうと速いタイムですが。車いすのトップの選手は1時間30分で走ってしまいますので。

M: フルマラソンで1時間30分って想像がつかないスピードです(笑)
その後はトラック競技にも挑戦されていますね?

小: 車いす陸上のトップの選手に話を聞くと、やはり走るのと一緒で最終的にスプリントがないと勝てないということで、トラックでスピードを磨いてからやっていこうということで、いまはトラックを中心にやりつつ、冬季はマラソンにも挑戦しています。
やっぱりスピードがないと最終的には負けてしまうので。

M: マラソンというと、やはり上半身や腕の筋力が必要ですよね?

小: そうですね、腕だけですとすぐに疲れてしまいますが、広背筋や腹斜筋などを使っています。

M: 見ていると腕の筋肉がすごいのかと思っていましたが、バランスよく使っているのですね。
ところで、車いすマラソンの魅力ってどんな風に感じていますか?車いすマラソンのここを見てほしい!という所はありますか?

小: 同じ陸上であってもスピード感が全然違うので。短距離の選手が100mを走るようなスピードでマラソンを走るので、そういうスピード感を楽しんでいただきたいです。
下り坂は時速50kmくらい出ます(笑)

M: 時速50km!?ボルト選手より速いですね(笑)

小: 逆に上り坂ですと、普通のランナーと同じくらい、または遅くなるので、上り坂は大変ですね。
もしも箱根駅伝を車いす選手が競走したら、1区から4区までは車いす選手の方が速いと思いますが、5区山上りで抜かれると思います。
というか、箱根の山は車いすのトップ選手でも上りきれないと思います。
逆に6区は下りが急すぎてたぶん途中のヘアピンカーブで曲がりきれず谷に突っ込んでしまいますね(笑)
 
M: 運営管理車も追いつけないですね(笑)
それだけ速いと普段のトレーニングも大変ですね!普段はどんな場所でトレーニングされていますか?

小: 皇居とか街中ではトレーニングできないので、陸上競技場の個人利用日があったら使ったり、千葉県の富津岬は車も少なくて走りやすいです。
あとは車通りの少ないところを探してトレーニングしています。

M: トレーニング場所を探すだけでも大変ですね!

小: 今までの陸上のように靴を履いてどこへでも走りにいけるのとは違い、場所や準備が必要なので、大変な部分もありますね。


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かすみがうらマラソンへ向けて
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M: 今年4月のかすみがうらマラソンに初出場されるということで、どんな目標でレースに挑戦されますか?

小: (病気の)治療もあってフルマラソンに出場するのが久しぶりなので、まずはしっかり完走することが目標です。
起伏もあるみたいなので、しっかり走りたいと思います。

M: 大会のコース紹介がYou Tubeで公開されていますので、ぜひ参考にしてみてください。
https://www.kasumigaura-marathon.jp/course/

小: 今まで出場した東京マラソンや大阪マラソンのように、前半平坦で後半に起伏があるコースは経験がありますが、前半起伏があって後半平坦なコースは初めてです。

M: かすみがうらマラソンでは車いすマラソンが最初にスタートします。
ちょうど自分もスタート付近の台から手を振っていますので、スタート前に応援させていただきますね!
かすみがうらマラソンでは大会のオフィシャルエイドの他に地元の方が私設エイドを用意してくださったりしますが、車いすレースって給水はどうされているんですか?

小: 車いすに登山用のチューブのついたボトルを用意して装備しています。途中では取れないですね。
せっかくご用意していただいても、あのスピードでは全部吹っ飛んじゃいますね(笑)

M: なるほど(笑)

児島将平選手・Mさん



M: かすみがうらマラソン初出場に向けて地元の皆様へメッセージをお願いします。

小: 車いすマラソンは一番最初にスタートするので、時間的に少し早いかもしれませんが、車いすマラソンのスピード感を間近で体感していただけたらと思います。
上り坂であればゆっくりご覧いただけます。下り坂であれば一瞬で過ぎ去ってしまいますが(笑)



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今後の目標
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M: 車いすマラソンに挑戦されて、醍醐味やご自身のやりがいについてお話を聞かせてください。

小: 高校、大学と陸上をやってきて、卒業して一度離れましたが、また同じ陸上を別の形できているので、少しでも速く、自分の限界に挑戦できるので、生きがいですしやりがいがあります。

M: 常に挑戦されていて、きっと早稲田の後輩の竹澤選手も小島さんだから「パラリンピック目指しましょう」と言ってくれたんですね。
最後に小島さんの今後の目標を教えてください。

小: 転移とかもあったりしたのでまずは(病気の)治療をして、今まで通り練習に集中できる環境を取り戻すのが優先的にやらなきゃいけない課題です。
リオにはちょっと間に合わないと思うので、2020年の東京に向けてどこまでくらいついていけるかですね。
やっぱり一番大きな目標はパラリンピックでしっかり結果を出すことなので、トラックでしっかりスピードをつけてマラソンでも勝負できるようにしたいと思います。

M: ありがとうございます。車いすマラソンを通じて発信していきたいことはありますか?

小: まだまだ車いすマラソンも言葉では聞いたことがあっても実際に見たり触れたりする機会が少ないので、パラリンピックをより楽しんだり親しんだりしていただくために、自分自身に何かできることがあれば発信していきたいと思います。


※ここで、インタビューに同席されていた奥様にもお話をうかがってみました。

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奥様より一言
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M: ご結婚されてどのくらいになりますか?

奥様(以下 奥): もうすぐ2年になります。(お付き合いは5年前から)

M: 車いすマラソンに挑戦され頑張っているご主人の姿、奥様はどういう風に感じていらっしゃいますか?

奥: 私も一緒に練習をやるので(笑)
仕事から帰ってきて「一緒にジム行こう」とか、一緒にロード走ろう」と私は自転車で車が来ないかコースを確認しながら走ったりしています。
「よくやるなぁ」と思っていました。手術して完全に退院する前から、義足のアスリートのグループに通ったりしていましたね。
普通だったら手術したらしばらくは引きこもったりする人もいるのに、外に外にどんどん向かって行って、後輩の竹澤くんと約束した目標に向かって頑張っている根性がすごいなと思いましたし、前向きな気持ちの強い人だなと思いました。
私はできるだけのサポートをしていけたらなと思います。
本当に、「よくやるなぁ」と思います(笑)

M: そんな奥様のサポート、小島さんはどう感じていますか?

小: 本当にありがたく思っています。これからも力を合わせて二人三脚で頑張っていきたいと思います。

M: ぜひ目標に向かって夫婦二人三脚で頑張ってください!本日はありがとうございました!

小島夫妻: ありがとうございました!



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インタビュー後記
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元箱根ランナーで病気と手術を経た、車いすアスリートの小島将平選手にお話を伺いました。

小島選手が早稲田大学2年生のときに出場されている箱根駅伝、私は駒澤大学の主務として運営管理車に乗車していて、「すごい偶然ですね」という話になりましたが、他にもお世話になった治療院の先生が一緒だったり、共通の陸上仲間がいたり、何かとご縁があります。
※ちなみに、かすみがうらマラソン大学ランニングゼミ講師の石橋早希江さんは、小島選手の早稲田大学の1年後輩になります。

今回のインタビューの中で、小島選手がご縁を大切にしているのが伝わってきました。
真面目で努力家でどんな状況でも前を向いて挑戦する小島選手の性格、そしてご縁を大切にする小島選手の人柄があってこそ、周囲の方も応援してくださるのだと思います。

奥様がお仕事の合間を縫って心身ともに全面的にサポートしていることも、小島選手にとって前進するための大きな原動力となっているのでしょう。

夫婦二人三脚で『どんな状況、どんな困難にぶつかっても最善を尽くして乗り越えていく!』という前向きな姿勢や挑戦する心を感じるインタビューでした。

さて、小島選手が目標にされている2020年東京。今から約4年半後に東京オリンピック・パラリンピックを迎えます。
パラリンピックに向けて障がい者スポーツもマスコミで取り上げられる機会が少しずつではありますが増えてきました。しかし、一般の方が実際に試合を観戦したり、イベントに参加したりという機会は非常に少ないです。

新国立競技場の設計案やエンブレムのデザインなど何かと騒がれましたね。もちろん課題や改善点は修正していかなければいけないですが、選手がトレーニングに集中できるような環境作りや資金面でのサポート、そして多くの方が応援できるきっかけ作りにもスポットを当てていく必要があると思います。

特に選手の話が直接聞けるようなトークイベントや体験イベントなどがあれば、アスリートをより身近に感じて応援したくなるでしょう。
テレビでなんとなく見たことあるだけの選手よりも、実際に会ったり握手をしたり記念撮影をした選手の方がグーッと親近感がわいて応援したくなりますよね。

イベント以外でもSNSやYou Tubeなどを利用して拡散したりPRしていくのも効果的ですね。
実際にパラトライアスロンを目指すアスリートでSNSも活用し、クラウドファンディングによって競技用の自転車を作った選手もいます。

アスリートが自ら発信したり、周囲の人がサポート・PRしたり、大会がまるごと応援・サポート・発信したり、Facebookで「いいね!」やtwitterでリツイートするだけでもいいのです。
1人1人がほんの少し意識するだけで、やがて大きな変化につながっていくと思います。

かすみがうらマラソンもスタートから四半世紀を迎え「One Sky. ~おなじ光、風、思い。~」を大会コンセプトとし「ゆたかな自然環境のもとで、同じ舞台に立つことを通して、ひとつになっていく参加者全員の気持ち」を表現しています。

1人1人の力は小さいかもしれません。けれど、2万人以上が出場するかすみがうらマラソンの参加者の方1人1人が心を込めるだけで2万倍のパワーになりますし、日本中あるいは世界中に広がっていけば、可能性は無限に広がります。

「千里の道も一歩から」「ローマは1日にしてならず」

思い立ったその日から、その瞬間から、まずは一歩踏み出して行動に移していきたいですね!

昨日という日は、二度と戻ってきません。
二度とは戻ってこないたった1度だけの今日という日を大切に、小島選手のように困難な壁にぶつかっても乗り越えていくことの大切さを心に刻んで生きていきたいですね。

日々自分自身と真っ直ぐ向き合って真剣に生きる。その延長が2020年につながっていったり、素晴らしい未来を創っていくのだと、小島選手のインタビューを通じて実感しました。