ブ―ロさんの「ベトナム 御馳走バンバン」が完結しました
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前回までのお話は→ コチラ 二朗さんは気分の悪いまま、駅のホームで一人眠り込みました。
数十分眠り込んだようです。二朗さんは気配を感じてふと目が覚めました。ゆっくりと頭を上げると、隣に白人の若い男が同じようにお尻をついて座っています。
「Are you dead?」
「は?」
死んだか?と訊かれた……何なんだ、この男、と思って聞こえなかった振りをしようとする二朗さんに、さらに男は話しかけてきました。
「マチュピチュまでトレッキングで行ったのか? だから疲れているのだろう」
ARE YOU DEAD? = 疲れたのか?
という意味だったようです。そんな言い方があるのか、もしくは二朗さんの聞き間違いかははっきりしませんが、その男はおもむろに立ち上がりました。すると……
「デカイ!!」
この男、2メートルはあるだろう、大きな欧米人だからオランダ人に違いない
と二朗さんは勝手に決め付けて彼を見上げました。すると、そこへ身長130センチくらいのボリビア人の男3人組が通りかかりました。ボリビア人たちは3人ともカラフルな民族衣装を身にまとい(と言っても彼らにとってはこれが普段の服装ですが)、2メートルのオランダ人を目の前にして立ち止まったのです。
巨人と小人が目の前に
そんなことを考えていると、ボリビア人たちは二朗さんに話しかけてきました。しかし、もちろん二朗さんには何を言っているのか分かりません。それよりも、人相の悪いこの3人、間違いなく泥棒だ、と思った二朗さんは、自分のリュックをぎゅっと抱いて、アイ・ドン・アンダースタンド・ユーと、あからさまに嫌な顔をして答えました。
そうこうしている間に、列車がやってきました。
2メートルのオランダ人に、乗らないのか、と促されたのですが、まだ胃痛を抱えて気分の優れない二朗さんはのろのろと行動し、また、あの泥棒ボリビア人とだけは近くに乗りたくないと思い、オランダ人とは別れて時間差で乗車しました。
ところが、この時間差がいけませんでした。二朗さんが車両を覗きこむと、もうすでに立ち客も出ていて、到底座れそうにありません。どうせ行きもデッキに座ってきたのだから、と思い、潔くデッキに陣取って、もうここから動かずに寝て帰ろうと、またもや足を抱えて眠りに入りました。
次に目が覚めたときには、1時間ほどが経過していました。しかし胃痛は相変わらずで、倦怠感に体がずっしりとするのを感じました。見上げると、もうすっかり外は暗くなっています。何気なく列車のゴトトン、ゴトトンという音に耳を傾けていると、近くでボソボソ声で話す男女の声が聞こえてきました。寝ぼけた目をそちらへ向けると……
「うわ! 泥棒小人のボリビア人3人組だ!」
二朗さんは何か盗まれたものはないかリュックの中やポケットを確認しましたが、とりあえず何も被害はないようです。
それにしても、せっかくボリビア人を避けたつもりだったのに、このデッキには自分と泥棒小人のボリビア人3人と……あれ?
そういえば、そこには泥棒小人のボリビア人だけではなく、女性が一人混じっています。何を話しているのかは言葉が分からないので不明ですが、女性は30代くらいでしょうか、泥棒の真ん中に座り込んで厳しい顔をし、そして時々あはは、と笑っています。その様子は……
彼女は女王様なのだな
つまりこの小人のような泥棒小人のボリビア人にとっては、彼女は白雪姫のようなものなのだ、と思い、さらに警戒心を深めました。なぜ自分の近くに居るのだろうか、自分は狙われているのだろうか、とぞっとしたからです。
彼らを避けるように、二朗さんは身を外側に向け、もうすっかり暮れてしまった外の景色を見ようとしました。しかし、外は森が続くのみ。景色らしい景色も見えません。すると……
何だ、この綺麗な歌声は……?
どこからともなく女性の美しいソプラノが響いていることに気が付きました。何とも言えない、安らかな歌声です。耳をすませ、二朗さんは聴き入っていましたが、どうやらそれは列車の外から聞こえてくるようです。つまり、この歌声は山の女神の歌なのでしょうか。二朗さんはしばしその歌声に心を奪われ、ぼんやりとしていました。
ぼんやりしている内に…… またもや不思議なことが起こりました。さっきまで何を話しているのかさっぱり分からなかった女王様と泥棒小人のボリビア人たちの会話が、何となく理解出来てしまったのです。
それはそれはおかしくて、思わず吹き出してしまいました。それに気が付いた彼らは、嬉しそうに二朗さんの方を見て、また何か話しています。それがまた何だかおかしくて、二朗さんは笑ってしまいます。そんなことを繰り返している内に、何だ、この小人のボリビア人たちは泥棒ではなくコメディアンだったのか、と勝手に納得してしまった二朗さんでした。ちなみに、女王様だと思っていた女性は調教師なのです。
泥棒ではないと分かると何となく安心して、二朗さんはオリャンタイタンボまでをゆったりとデッキで過ごし、列車を降りました。そして重い体でタクシーを探し、どうにかこうにかホテルへと帰って来た二朗さん。
しかし、帰って来た時の二朗さんの顔は真っ青だったのでしょう。人の良いホテルの女主人クラウディアは心配になり、私ローランの部屋へと手助けを求めて来たのでした。
「つまりこういうことですよね。そのヤンとケースというオランダ人の言う空を飛べるサボテンを食べたら気持ちが悪くなって、その為の胃痛が今も続いていると。しかし、下痢もしていないし、少しずつ回復しているのならば、やはりまず過ぎただけかもしれませんね」
今夜はぐっすり眠って、明日まで様子を見てみようということになりました。
「それはそうと、何でしょうか、その2メートルのオランダ人とか、130センチの泥棒小人のボリビア人とか、女王様とか、山の女神の歌とかって。後は魔法が出てくれば完璧にファンタジーの世界なのですが」
「うーん、よく分からないのですが、不思議な体験でした。本当にまるでファンタジーの世界に飛び込んだような」
そこへ、このホテルに長期滞在していて、私とも仲の良いイスラエル人の友人が、私たちの姿を見かけて入ってきました。
「どうしたの」
かくかくしかじかと二朗さんがサボテンを吐いたところまで説明すると、イスラエル人は叫びました。
「何と! あのサボテンを試したのか! どうだったんだ?」
どうやら、「飛ぶ」ことが好きな欧米人にはまあまあ有名なのでしょうか、その怪しいサボテン。思わぬところでその実体が解明されました。イスラエル人に感謝して、マチュピチュで「飛んでしまった」二朗さんにはその晩ゆっくり休んでもらいました。
このお話は書こうか書くまいか迷ったのですが、リアルな友人でブログの先輩であるYさんに相談したら、いいんじゃないの、合法だから、というアドバイスを頂き、勇気を出して書いてみました。こういう話題が好きでない方、お気を悪くされた方がおられたらお詫びします。
つまり、このサボテンは南米では知る人ぞ知るものだったようです。「何とかマッシュルーム」と同じようなものだと思われます。
幸いなことに、二朗さんは翌日にはすっかり元気になりました。マチュピチュの観光は適当になったものの、一生に一度と思われる貴重な体験をしたということで、これはこれでよし!と元気におっしゃっていました。前向きですね。
そんな超プラスオーラ満載の二朗さんに免じて
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