SNSをぶっとばせ | …

i am so disapointed.

仕事場ではできればカッコいい音楽ばかり流したい。しかし、近頃はその余裕もなく、泣きながら有線放送を垂れ流しているというテイタラクである。

先日、真昼に徹夜明けで働いていると、スピーカーから「恋したらベイベー」というのが流れ出し、急速にテンションが上がった。Shiggy Jr.というバンドの新曲である。最近の日本のポピュラー音楽にはすこぶる疎い私がなぜ知っていたかというと、このバンドがNegiccoの「1000%の片想い」にかかわっていたことから、興味を持ったのであった。

Negiccoの曲はどれも大好きだが、真夜中の仕事場で聴いていて、初めて文字通り泣きそうになったのは、この曲であった。特に感動的なバラードというわけでもなく、おそらく女子大生の片想いを題材としたモータウン調のポップな曲なのだが、なぜだか琴線にふれてしまった。

特に、「曖昧な言葉でかわさないでよ このまんまじゃ ハート蹴飛ばすぞ」という部分、アルバム「Rice&Snow」収録のヴァージョンでは、Shiggy Jr.の池田智子によるコーラスがひじょうに効果的である。

そのまま仕事を続けていると、Negiccoの「SNSをぶっとばせ」がかかった。選択しているのは日本のヒット曲が続けて流れるようなタイプのチャンネルであるはずである。なぜシングル曲ですらない「SNSをぶっとばせ」がかかるのだろうか。もちろんイントロですぐにそれと分かり、大興奮したのであった。

確認したところ、いつも流しているA-5チャンネルの「週間J-POPチャート」ではなく、何かの手違いでA-3チャンネルの「最新J-POP」が選ばれていたのであった。

それにしても、有線放送で数々のヒット曲に混じってNegiccoがかかるのは、なかなか痛快であった。

「SNSをぶっとばせ」はOKAMOTO'Sの編曲によるモータウン風味のバンド・サウンドなのだが、じつは最近の日本のヒット曲にはこのようなタイプの曲は意外と少ないようであった。ギターを主体とした楽曲はもちろんあるのだが、歌謡ロックのような感じになっていて、洋楽のロックンロール直系のようなパターンはじつはあまり無いのであった。

本当に最近の日本のポピュラー音楽にはすこぶる弱い私は、じつのところOKAMOTO'Sすらよく知らないのである。ダウンタウンの浜田雅功とHAMA OKAMOTOとの親子対談は好きで、何度か聴いたことがあった。バンド名は岡本太郎とラモーンズからインスパイアされているということも、何となく知っていた。

ここ最近のいわゆるJ-POPヒットの流れではいかにも違和感がありそうなサウンドなのだが、じつは意外とハマっていた。歌詞もおもしろいし、じつはちゃんとビデオもつくってシングルでリリースしたら、わりと幅広い層にウケるのではないかと思ってしまった。

1989年の春から2年間ぐらい、ローソン調布柴崎店といういまはもう無いコンビニエンスストアで深夜のアルバイトをしていた頃に一時期流れていた、THE PRIVATES「気まぐれロメオ」、MOJO CLUB「ブギ・ナイト」などの雰囲気も思い出した。ヒット曲の流れの中でのギター・サウンドという意味でである。

ローソン調布柴崎店で私がアルバイトをはじめた頃、NegiccoのNao☆ちゃんはもう生れていたはずである。ぽんちゃことMeguはその年の6月3日に生れたことになる。私にとってのレジェンドアイドルである元モーニング娘。の道重さゆみはその年の7月13日に生れるが、この日、私は大学の帰りに渋谷ロフトにあったウェイヴで岡村靖幸「靖幸」のCDを買った。現時点において、私がいままでに聴いてきた古今東西のアルバムの中で最も好きな1枚である。

当時、ローソンでは店内BGMとして本部から送られてきた8トラック・テープのようなものをかけなければならず、それにはいくつかの曲とローソンの商品CMが収録されていた。30分間で1回転するようになっていたような気がする。レモンエンジェルの「夏のMAJO」はかなり聴き飽きた。商品CMでは、おにぎりを紹介する際に魚沼産コシヒカリを使っていることが強調されていた。まさかこれから四半世紀以上先に、私が新潟でこの魚沼産コシヒカリでつくられた爆弾おにぎりなるものを買おうか買うまいか迷うことになろうとは、思ってもいなかった。

なお、ローソンと同じくダイエーコンビニエンスシステムズであったサンチェーンというのがあり、人不足の時などにたまにヘルプに行っていた。そこでは本部から送られてきたテープをかけるというしきたりが無く、わりと自由に有線放送のチャンネルを選んでかけていた。たまに、「あかるいね あったかいね サンチェーン」というジングル的なものが流れた。

「SNSをぶっとばせ」には、そのようなコンビニの店内放送で流れているタイプの一般性があるなと、仕事場の有線放送で何回か聴いていて、思ったのである。

この曲のパフォーマンスを、私は初披露の「古町どんどん」とタワーレコード錦糸町店のリリースイベントで観たが、振り付けにモンキーダンスやツイストといった往年のポップ・カルチャーからの引用が見られ、また、1960年代のガール・グループのような雰囲気もある。

「ティー・フォー・スリー」は高評価を獲得してはいるが、それほど売れすぎているわけではなく、まだまだ未開拓の市場はじゅうぶんありそうである。

ここで、このキャッチーな「SNSをぶっとばせ」をしっかりとプロモートしてみるのはどうだろうか。歌詞の世界を映像化したようなストリー仕立てで、かつグラフィティー感溢れるミュージックビデオがつくられたならば、たとえばスペースシャワーTVやMTVジャパンあたりでヘヴィー・ローテーションされそうである。

テレビ神奈川「saku saku」でオンエアされた「矛盾、はじめまして。」のミュージックビデオに対しても、わりとファン以外からの反応があったようなので、これはイケるのではないかと思うのだが、どうだろうか。

「SNSでぶっとばせ」で興味を持った方が「ティー・フォー・スリー」を聴くと、期待以上のクオリティーの高さに衝撃を受けると思うのである。また、音楽雑誌やメディアで「ティー・フォー・スリー」の評判を聞いたり、何となくNegiccoおもしろそうと思っていても、いまひとつアルバムを手に取るきっかけがつかめないという方にとっても、この曲は入口としてなかなか良いのではないかと思うのだ。

それはそうとして、「SNSをぶっとばせ」では、やはりNao☆ちゃんが「ふたつ前の恋人」と歌うところの声がすごく可愛い。アニメが好きで声優などの仕事がしたかったというNao☆ちゃんならば、こういうのがまだまだいろいろできるのではないかと思う。先日のインスタグラムでの「じゃがりこいかがですか」というおばあちゃんのようなキャラクターも、その1つなのだろうか。

ところで、今日は仕事場を久しぶりにボスが視察にくるということで、かなりの緊張が走っていた。わりと忙しかったため、じゅうぶんな準備もままならず、せめて気分だけでも盛り上げようと、やはり途中から「ティー・フォー・スリー」を流していた。改めて、本当に良いアルバムである。

いよいよ来そうだという連絡が入った時に、ちょうど「おやすみ」あたりで、もちろんこれはこれですごく好きなのだが、気分を高めようと「マジックみたいなミュージック」まで戻した。「恋のシャナナナ」の時がピークだったのだが、いくつか課題は出されたものの、概ねは好意的な評価をいただけたようであった。よかった。



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